kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

蓄電技術でも自動車製造業でも、日本の「大いなる凋落」は目に見えている

 昨日、東海地方以西の梅雨明けが発表された。関東はまだだが、週末にも梅雨明け発表とのことだ。しかし梅雨明けを待たずして、今週の月曜日頃から関東地方に猛烈な熱波が襲来した。体感的にはここ数年間ではもっともひどい暑さだったように思う。今朝は朝方の気温が久しぶりに25度程度にまで下がったようだが、それも束の間で梅雨明けから1か月ほどは非常に暑くなるらしい。

 まだオザシン(小沢信者)がネットでそれなりにはびこっていた頃、彼らは「『地球温暖化』論は嘘だ、原発を推進したい勢力が宣伝しているだけだと言い募るのが常だった。その熱意は、やはり彼らが信奉していた「9.11はヤラセだった」とする「9.11陰謀論」には及ばなかったが、それに次ぐくらい熱心だった。同じ頃に「地球温暖化陰謀論」に一時与していたのが池田信夫(ノビー)だったが、ノビーが言わなくなってからもオザシンは地球温暖化陰謀論を言っていた。アメリカではこの種の主張に熱心なのは一部の狂信的な共和党支持者たちであることは周知であり、オザシンはアメリカの極右の同類だった。「極右と極左のハイブリッド」というのがオザシン最大の特徴であり、この傾向はかつてオザシンの一人だったと目される山本太郎に受け継がれている。地球温暖化陰謀論ではないが、「人工地震」と書いただけの山本のツイートは、今も削除されずに残っている。

 

 

 とはいえオザシンは一部の狂信者にすぎない。

 問題は、日本国民の平均で見ても、地球温暖化(気候変動)への関心が低下していることだ。これを先週だったかのサンデーモーニングでは世界全体で危機感が高まっていないなどと言っていたが、それでも画面に表示された一覧表を見ると、日本以外の国では2015年と直近の調査とを比較すると危機意識を持つ人たちの比率は2015年より増えていた。それなのに日本だけが減っていたのだ。

 2015年といえば7年9か月続いた第2〜4次安倍内閣の3年目で、それからこの政権は5年も続いた。そのあとに政権を担った菅義偉も安倍と同類の首相だった。

 この2015〜21年の間に、自民党政権を支持する日本国民たちは未来のことを考えなくなり、過去の栄光の幻にいつまでも浸っていたい空気が醸成されたと思われる。それは安倍晋三菅義偉の政権が意図的に誘導したものだった。

 現在の岸田文雄政権も含めて、自民党政権のエネルギー政策は原発再稼働と化石燃料を中心とした旧来の姿勢を墨守するばかりで、再生可能エネルギーには不熱心そのものだったから、再生可能エネルギーによる発電の比率を伸ばす際には必須である蓄電技術に対する自民党政権の関心はいたって低かった。

 その結果、何が起こったかというと、少し前まで他国の追随を許さなかった蓄電技術の分野での日本の地位が劇的に低下したことだ。

 この件を書こうと思ったのは、宮武嶺さんのエブリワンブログの下記記事についたコメントでのやりとりだ。

 

blog.goo.ne.jp

 

 コメント欄で2人の論者が議論しているが、蓄電技術に関しては両者の意見はほぼ一致している。以下引用する。

 

なお、考えるべきは再生可能エネルギーの拡大である。その鍵となるのが蓄電技術だろう。例えば太陽光発電の余剰電力で水を電気分解し水素で貯蔵、太陽光エネルギーが途絶えた時点で燃料電池による発電など。

 ただし、こうした技術開発に伴う投資が、将来の電気代にかかるかもしれない。その負担を軽減すべく国が補助すべきだが、どこまで脱炭素に真摯に取り組むのかが問われているのである。(「秋風亭遊穂」氏)

 

“蓄電技術の整備”には大賛成です。

 

電力は『必要な時に必要なだけ電力を供給できること』がコスト面からも(それが環境保護にもつながる)大切であったのに、『“不要な夜間にも発電し続けなければならない”原発を激押し』するために『蓄電技術を意図して普及させなかった』日本政府と各電力会社の“怠慢”は非常に問題があったと判断しています。

 

※“再生エネルギー”は『非常に効率のいい蓄電システム』と併用しなければ、『“無駄が多すぎ”ちっともエコでない』ことはもっと周知してしかるべきです。風力発電やメガソーラーを推進する前に『“効率的な”蓄電技術の大規模な普及』を先に行うべきです。(「ロハスの人」氏)

 

 秋風亭遊歩氏が書く「燃料電池」も太陽光発電と同様に蓄電技術ではなく発電技術だが、それらの電力を蓄えておく「(大容量)蓄電技術」は、1970〜80年代に開発されたリチウムイオン電池の分野で長年世界をリードしてきた日本に、本来なら大きなアドバンテージがあったはずだ。

 それが現状は下記記事に書かれている通り。

 

response.jp

 

 自動車用電池も大容量蓄電技術に属する。電力用の場合はさらに容量が大きくなるだけだ。以下に上記記事から引用する。

 

車載用リチウムイオン電池(LIB)の産業領域は今や産業としてだけではなく、経済安全保障となる政治的課題にまで発展している。このまま日韓中の電池業界のつばぜりあいが続けば、スピード感と投資力に長けた韓中勢が車載用電池でも電池立国を確立し、日本の電池産業の衰退の一途を辿る危険がある。

絶大な補助金制度により展開されている中国の電池産業やスピード感と規模感で存在感を示す韓国大手財閥の電池産業、EUをあげた政府主導の加速的電池産業の興隆、経済安全保障と明言した米国バイデン政権下の電池産業。これらの動きに対して、規模感や投資力に見劣りする日本の電池産業に対し、日本政府の直接的な支援が必要な時期が迫っている。 

2021年9月、経済産業省からの意見交換の依頼を受け経済産業省へ出向いた。先方の相談事項は「日本の電池産業をどのようにしたら復活させることができるか?」という論点であった。そもそも国としての電池産業に対するメッセージがないに等しいのである(図1*1

 

筆者が「このまま国が何もしなければ半導体産業のようになってしまいますよ。それでいいのですか?」と尋ねると、経済産業省の担当者は「それは絶対に駄目」と話す。「それならそれに見合った国の支援が必要ですよ。中国、韓国、EU、米国とも国をあげて莫大な投資を進めています。日本だけができていない現状では電池業界だけの力では限界があります。ここで私がパルスオキシメータを使って電池産業の酸素飽和度を測れば93%です。なので今手当をすれば助かります」と説明すると「経産省側が測れば89%ですね」と驚くべき発言が返ってきた。「それでは今日か明日に死んでもおかしくない数値、ならばすぐにでも手を打たないと助かりません」と応酬。このやりとりが功を奏したかどうかはともかく、21年11月4日に「電池業界の投資に対して政府が支援する」というニュースが流れたのは日本の大きな前進となった。

 

URL: https://response.jp/article/2022/09/01/361294.html

 

 なんと、経産省自身が「日本の電池産業は瀕死」だと認めているわけだ。

 なお、大容量電池技術で日本が立ち遅れたのは、自動車メーカーがEV(電気自動車)にいたって消極的だったことも大きな要因だ。

 

jbpress.ismedia.jp

 

 時間がないので、記事の引用は省略して記事についたブコメをリンクするにとどめる。

 

EVに乗り遅れ、凋落する日本車メーカー、雇用維持が仇に かつてのビッグ3の二の舞に、中国メーカーの伸長必至 | JBpress (ジェイビープレス)

世界はEVに向けて舵を切ってるので、やらない理由を探して日本のEVシフトとメーカーのEV開発を遅らせると、世界での売り上げを失い続けるだけ。もうすでに手遅れかな/スマホ、PC…あの光景をまた見てると思うと胸熱

2023/06/05 17:27

b.hatena.ne.jp

 

 現状の延長だと、蓄電技術でも自動車でも日本は世界の水準から早晩大きく立ち遅れることになることは必至だ。

 政治と同様、経済や科学技術の世界でも、過去に栄光にすがりつこうとするとろくなことはない。自民党立憲民主党日本共産党などと同様、自己防衛的なあり方は「持続可能」では全くなく、待ち構えているのは大いなる凋落なのだ。

*1:図の引用は省略した=引用者註