kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

安倍政権の「成長戦略」とやらの柱は「原発再稼働」(呆)

今朝(5/31)の朝日新聞1面トップ記事。


http://www.asahi.com/politics/update/0531/TKY201305300592.html

成長戦略に「原発の活用」 政権素案、再稼働の推進明記


 【藤田知也】安倍政権が6月にまとめる成長戦略の素案に「原発の活用」を盛り込み、原発再稼働に向けて「政府一丸となって最大限取り組む」と約束することがわかった。東京電力福島第一原発事故を受けて脱原発を求める声は根強いが、安倍政権の経済政策「アベノミクス」で目指す経済成長には原発が欠かせないという姿勢を鮮明にする。

 素案は、成長戦略をまとめる産業競争力会議で5日に示され、12日までに正式に決めたうえで、14日にも政府方針として閣議決定する。成長戦略に「原発の活用」が入れば、中長期にわたって原発に頼る経済・社会を続けることになる。

 朝日新聞は「成長戦略(素案)」を入手した。エネルギー政策では、成長を担う企業が活動しやすくするため、原発事故後の電力不足を解消したり、火力発電につかう燃料費がかさんで値上がりする電気料金を抑えたりする必要があると指摘している。

 そのために必要な政策として「電力システム改革の断行」「高効率の火力発電の導入」などとともに「原子力発電の活用」を盛り込んだ。具体的には、原子力規制委員会が安全と判断した原発は「判断を尊重し、再稼働を進める」としたうえで、地元の理解や協力を得るために「政府一丸となって取り組む」と明記し、原発再稼働を積極的に進める方針を打ち出す。

朝日新聞デジタル 2013年5月31日5時52分)


引用文のあと、私が嫌いな「続きを読む」という「朝日新聞デジタル」の契約への誘導が出てくるが、大略下記のようなことが書いてある。

 安倍晋三民主党政権の「2030年代原発ゼロを目指す」方針を「ゼロベースで見直す」とする一方、「原発依存度をできる限り低減させる」とも言ってきたが、電力業界や産業界から原発再稼働を求める声が強まったのを受けて、原発活用に前のめりになった。自民党内にも早期の原発再稼働を求める議連ができた。産業競争力会議でも東レ会長の榊原定征原発再稼働を求めた。同会議の議員である竹中平蔵ら一部から原発再稼働の慎重論が出たが、安倍政権は成長戦略に原発活用を組み込んだ。

朝日新聞 2013年5月31日付1面トップ記事後半部分の要旨)


安倍政権の「三本目の矢」である「成長戦略」とやらの柱に「原発再稼働」があることは5月26日付の共同通信も報じていた。


http://www.47news.jp/CN/201305/CN2013052501001879.html

成長戦略に原発再稼働を明記へ 安倍政権、経済界や自治体に配慮


 安倍政権が成長戦略に盛り込むエネルギー政策の原案が25日判明した。原子力規制委員会が安全と認めた原発は「再稼働を進める」と明記し、立地自治体などの理解を得るため「政府一丸となって最大限取り組む」との姿勢を強調した。早期再稼働を求める経済界や立地自治体などに配慮したとみられる。

 政府は6月14日までに成長戦略をまとめ、閣議決定する方針。自民党参院選の公約に原発再稼働方針を盛り込む見通しで、政府、与党が足並みをそろえて原発を活用する姿勢を明確にする形となる。

 安倍首相はこれまで国会答弁などで、規制委が安全性を確認した原発を再稼働する考えを示してきた。

共同通信 2013/05/26 02:00)


安倍晋三自民党や「産業界」とやらの動きから私が思い出したのは、東電原発事故の直後に極右思想を持つことでも知られるエコノミストの藤沢数希が発信した下記のつぶやきだ。


https://twitter.com/kazu_fujisawa/status/51237901870182400

Kazuki Fujisawa
@kazu_fujisawa


ソーラーなんて女子供のエネルギー。男は黙って原子力

2011年3月25日 - 4:04


このつぶやきに代表される時代錯誤で感情的なマッチョイズムを、安倍政権やら自民党やら経団連に感じるのである。

安倍政権の経済戦略は、金融緩和と財政出動と成長戦略であるとのことだが、不況時の政策が金融緩和と財政政策の組み合わせでなされるところまでは普通の政策であって、ここまでは良いだろう*1。しかし、その先が間違っていると考える。

まず財政政策は庶民の懐を暖める、富の再分配の効果を持つものでなければ、冷え切った内需は喚起されないと考えているが、土建事業に著しく偏った財政政策は、地元の建設業にも一部は潤すが、東京に本社を持つ大手建設業が潤う割合の方が多いだろう。そして生活保護水準切り下げなどの社会保障の切り詰めが、デフレを呼び込む政策であることは明らかだ。

その上「成長戦略」の柱の一つとして「原発再稼働」を持ってくるなど愚の骨頂である。

そもそも「成長戦略」なるものの思想がサプライサイドに立っていること自体誤りであって、需要の拡大を重視しなければならないと私は考えているが、そのサプライサイドの政策としても「重厚長大産業」の偏重は疑問だ。

現在、パナソニックやその系列下の三洋電機、あるいはソニーなどの不振に象徴されるように、弱電メーカーは「アベノミクス」とやらの恩恵にあずかれない状態で、今も景気回復どころかリストラの嵐が吹き荒れている。たとえば三洋電機は日本のリチウムイオン電池の雄だが、東日本大震災・東電原発事故以降、日本の多くのメーカーが研究開発に力を入れてきたのは、脱原発と関連する非原発のエネルギー関連技術であった。原発関連技術の分野では、そもそも日本は世界をリードするどころか国際的に見ても立ち後れているのではないかという偏見を私は持っている。そんなものを後押しするくらいなら、脱原発関連の環境・エネルギー関連技術を「成長戦略」の柱に据える方がよほど現実的だろうと私は思うのだが、この国のエスタブリッシュメントたちはそうは考えないらしい。東電原発事故から何一つ学ぼうとせず、ひたすら惰性に身を委ねるこの国の指導層の人々の怠惰さと愚かさには驚き呆れる。

ネットで調べてみると、昨年あたりからどうも「日本の未来を支えるのは『重厚長大産業』だ」なる意見がしばしば発信されているようだが*2、私には「ほんまかいな」としか思えないのである。上記の安倍晋三自民党経団連や藤沢数希と同じ「根拠のないマッチョイズム」の生み出した妄論なのではないか。


話は飛ぶが、先日来「高転びに転んだ」橋下徹も、その橋下と「日本維新の怪」共同代表を務める石原慎太郎も、ともにそのウリはマッチョイズムだった。「マッチョイズムが日本を滅ぼす」という標語をたった今思いついた。

*1:金融緩和自体を否定する意見には、私は与しない。

*2:これらの意見は、軍需の拡大を見込んでいるらしい節もある。