kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

東電福島第一原発事故からの処理水放出に関する3つの問題点

 私は、2013年に習近平中国共産党主席の座に就いて以降、それまで日本の自民党政権と比較するとまだ科学技術重視の姿勢を保っていた中国が、科学技術をイデオロギーに従属させる姿勢に転換したとみなしている。そんな中国ががなり立てる東電福島第一原発の処理水問題に関する宣伝が科学的だとは全く思わない。

 しかし、この問題に関して日本の岸田文雄政権政府や東電に理があるとも思えない。

 特によろしくない点が3点ある。まず第一は、原発事故の処理水には事故を起こした原子炉から漏れ出た重金属等を含んだ放射性物質が含まれており、それが事故を起こしていない原発からの排水とは全く異なることが明らかなのに、トリチウムのことばかり言っている態度がまずダメだ。そもそもALPSには三重水素であるトリチウムを減らす効果は全くないことに、下記宮武嶺氏のブログ記事の冒頭に貼られた東電自身が作成した表を見て気づいた。気づいてみれば当たり前のことではある。

 

blog.goo.ne.jp

 

 政府や東電などは、トリチウム以外の核種についても問題ないんですよと言っているようだが、原発事故の処理水と通常の原発の排水との最大の違いが「トリチウム以外の核種」にある以上、トリチウムトリチウムとばかり言い募ること自体が怪しいと思われても仕方ない。これは説明する側が説明責任を放棄している態度に他ならない。

 もう1点は、最近Xと距離を置いているというまことん氏も数少ないXであろう下記ポストで指摘している通り、政府が漁民たちの理解を得るための話し合いを十分してこなかったことだ。

 

 

 そもそも今回の岸田文雄政権の処理水放出の決定は、一昨年に前首相の菅義偉が話し合いのプロセスをすっ飛ばして「2年後の海洋放出」を決定し、それを岸田が「既成事実を固める」保守政権の手口を忠実に実行したものだとされている。政府や東電には最初から「漁民等に真摯に向かい合う」つもりなど到底なかったというしかない。

 最後に、海洋放出を決めた最大の理由は、もっともコストが安く上がるからだと強く推測されることだ。だからこそ町山智浩氏とネトウヨとの間に下記のXのやり取りが生じた。

 

 

 

 ネトウヨは町山氏に、お前らコストのことなんか考えてないだろと言っている。このネトウヨは海洋放出が安全だと言っておらず、言っているのはコストのことだけだ。

 

 

 前記ネトウヨのXに対して、町山氏は1979年にアメリカが起こしたスリーマイル等原発事故では(反原発派も入れた話し合いを13年も続けた結果)蒸発法を採用し、それを中国も推薦したことを指摘している*1しかし岸田政権はコストの安い海洋投棄を選んだと言っている。

 そのような経緯なのだから、これらいくつかの方法に関してコストと効果を比較対象して国民に広く示すくらいのことは政府や東電はやらなければならない。いややっているという人もいるかもしれないが、すくなくともそのデータを元に議論を行う姿勢が必要不可欠だ。しかし政府も東電も「IAEAのお墨付き」を振りかざすだけでその努力をいっこうに行わない。少なくともそのようにしか見えない。

 そんな状況で「食べて応援」のアピールをしただけの野党第一党の党首が例によってひどく叩かれ、それに対して当該政治家の「信者」たちがいきり立っているようだが、これは叩かれても仕方ないようにしか私には思われない。

*1:今朝のサンデーモーニングでは、政府(事故発生当時は民主党政権)は当初コンクリートで固める方法を模索したがコスト面から断念したと指摘されていた。