昨日President Onlineに公開された尾中香尚里氏の下記記事には、大いに首肯できる点と、やや物足りない点の両方がある。
記事についているブコメの大半は全く評価できないものだ。いくつかのブコメは評価できる部分もあるが物足りなさも残す。
記事でもっとも首肯できるのは、以下に示す最初の3つの段落だ。
蓮舫3位で「立憲惨敗」をあおる人たちが大量に現れた
東京都知事選(7日投開票)で小池百合子知事が3選を果たす一方、立憲民主党の参院議員だった蓮舫氏が3位に沈み、立憲の選挙戦略に対して批判の嵐が吹き荒れている。
筆者はこの流れにはすごく既視感がある。3年前、2021年秋の衆院選だ。公示前議席を割り込んだ立憲に、外野が「惨敗」ムードをあおり、敗因として「共産党との『共闘』が悪い」「批判ばかりの姿勢が悪い」と、たいした検証もないまま延々騒ぎ続けたあの現象が、都知事選で再現されているのだ。ここ半年ほどの立憲上昇ムードで見えにくくなっていたこれらの声が、都知事選で一気に発散された。
つくづくばかばかしい。立憲はこうした外野の声にまともに耳を傾けすぎて、22年の参院選で本当に惨敗してしまった愚を繰り返さないよう注意すべきだ。
2021年衆院選で立民は間違った総括をしてしまった。もう何度目の指摘になるかわからない区以来繰り返し書いてきた通り、国政選挙で党勢の最大の指標となるのは比例ブロック(衆院選)ないし比例区(参院選)の得票率である。21年衆院選で立民の比例ブロックの得票率は20.0%だった。これが与党を倒すには及ばない数字だったから立民は公示時点の議席を減らした。
しかし、立民が間違った総括をしたために誕生した泉健太執行部が「提案型野党」路線をとったことが立民票の実に3分の1以上を流出させ、22年参院選では立民の比例区得票率は12.7%と、実に7.3ポイント、率にして36.5%も減らしてしまったのだ。これを尾中氏は「22年の参院選で本当に惨敗してしまった」と表現している。泉執行部にはこのような「負の実績」もあるのだから、秋の代表選で代表が選び直されるべきであることは当然である。その結果、泉健太が再選されたら立民は再び党勢が下降すると私は予想しているが、それは立民の党員や支持者が決めることだから外野からはどうしようもない。
記事のここまでは全面的に首肯できる。少し前に尾中氏は衆院15区補選を2017年衆院選になぞらえていたが、同補選から今回の都知事選までの間の経緯は、期待されて上潮ムードにあった旧立民がそれを活かし切れなかった2017〜21年の立民を短い期間に再現したとみることができる。
記事はこのあとに少しいただけない部分がある。以下引用する。
都知事選の敗因は「決定的な準備不足」に尽きる。立憲民主党単独の問題ではない。いわゆる民主党勢力がこの四半世紀、都知事選を「投げてきた」ツケが回ってきたということだ。
ただ、蓮舫氏がそれを覚悟で、リスクを取って出馬したことは、筆者は高く評価している。これでやっと、野党第1党が「都知事選を主体的に戦う」スタートラインに立ったと思うからだ。
上記引用文のうち、青字ボールドにした部分には強く共感できる。蓮舫はいつか誰かがやらなければならない挑戦をしたことだけで十分評価されるべきだ。一方で立民代表時代に都ファと小池百合子をここまで肥え太らせてしまった一因をなしたという負の側面もあることも指摘しておかなければならないけれども。
気になったのは「決定的な準備不足」で敗因を片づけてしまってよいのかということだ。
私はかねがね、日本という国は現在非常に大きな危機に瀕していて、間違いなくその大きな原因をなした自民党の政治に、人々が非常に多くの不満を抱いていることだ。そのことが一連の裏金問題への怒りとなって爆発しつつある。
特に私が住む東京都江東区では、昨年12月の出直し区長選でも自民党による買収が行われていたことが発覚し、自民党区議が1人辞意を表明した。前区長の木村弥生の場合と違って現区長の大久保朋果が軽々しく区長を辞任するとは全く考えられないが、自民党の腐敗はさしもの保守的な江東区民からも匙を投げられており、都知事選と同日に実施された都議補選では都ファ系区長の応援も受けた自民党の世襲政治家が、都ファの分派である上田令子一派が元みんなの党の渡辺喜美と組んだ右派反都ファ系政治団体の新人候補(元区議)に弊ブログの予想通り完敗した。
2021年衆院選の頃には、既に反自民のマグマが溜まり始めていたと思われる。しかし枝野立民はその受け皿にはなり切れなかった。その結果、思いもよらなかった維新の大躍進を許してしまった。
私は下記三春充希氏のXに貼られたグラフを見て愕然とした。
これが2020年の都知事選のときの政党支持率の推移です。わずかに下げているように見えるものの、選挙の前にあるピークは通常国会の会期末にあたります。 pic.twitter.com/Jv0cZxeSrN
— 三春充希(はる)⭐第50回衆院選情報部 (@miraisyakai) 2024年7月16日
三春氏の論点は本記事の論点とは別のところにあるのだが、私が目を剥いたのは21年衆院選での維新の突然の支持率上昇だ。
都知事選でもそれと同じことが起きたのだと思う。それが石丸伸二の躍進だ。マグマの溜まり方は3年前の比ではないし、何より東京という大都市を抱えた自治体での選挙なので、21年衆院選よりさらに極端な結果になった。
以上から、立民がなすべきは21年衆院選後の間違った総括を繰り返すことではないことはあまりに明らかだ。最近はこたつぬこ(木下ちがや)氏のような、過去には左派の論客だった人が誤った総括へと導こうとしているので特に要注意だ。
もっとも、だからといって立民が21年衆院選での維新や今回の石丸のやり方を模倣すべきではないこともいうまでもない。現に維新は早くも賞味期限切れがはっきりした。都知事選で維新は、石丸を推すことも自前の候補も立てることもできず、立民に先駆けて党勢が大きく低下しつつある。
時間が来たので尻切れトンボだがここまで。