10月に入った。
21世紀の第1四半世紀の最後の四半期(3か月)になる。
思えば2001年の第2四半期に小泉純一郎が総理大臣になって悪逆非道な新自由主義政治をやった。小泉は国会の答弁で「格差の拡大は確認されていない」と繰り返していたが、政権最後の年の2006年に、ついに「格差が出るのは悪いこととは思っていない」と言い放った。
そんな災厄の21世紀日本で、第1四半世紀の最後に小泉進次郎が総理大臣になるかもしれないのはさらなる災厄の前触れなのか。
少し前から私は現代日本の二大病根は新自由主義と権威主義の2つだと思うようになっているが、昨日公開の記事に宮武嶺弁護士が呼応してくださったので、思わずグリーンスターを進呈した。
ウクライナに侵略しているロシアがポーランドやルーマニアまでドローンを飛ばして領空侵犯したので、NATOが警戒を呼び掛け対策を協議しています。
そんな中、NATOの獅子身中の虫で親露派筆頭の独裁者であるハンガリーのオルバン首相がハンガリーのドローンがウクライナの領空を侵犯したことについて、ウクライナは主権国家ではないと、プーチン大統領顔負けのことを言い出しました。
ヨーロッパでも名だたる右翼の一人であるオルバン首相は2025年9月29日に右派ポッドキャスト番組で
「ウクライナはハンガリーと戦争しているのではなく、ロシアと戦争している。東の国境に飛んでくるドローンを心配すべきだ」
「私は閣僚を信じているが、仮に数メートルでも侵犯したとしても、それがどうした。ウクライナは独立国ではない。ウクライナは主権国家ではない。ウクライナは私たち西側諸国から資金と武器を提供されている」
と訴えたんですね。
西側諸国から援助を受けているんだから、ウクライナの戦争はアメリカの代理戦争だとか、我々の言うことを聞けとかいうのは、日本の親露派陰謀論者の常套文句。
ですが、ウクライナは西側の援助を受けているから独立国ではない、主権国家ではないとオルバン首相が言い切ったのには驚きました
URL: https://raymiyatake09.hatenablog.com/entry/2025/09/30/110125
オルバン(オルバーン)は悪名高い民族主義右翼で、典型的な権威主義指導者ですからね。私が好きなハンガリー出身のピアニスト、アンドラーシュ・シフ(1953-)は、2001年にイギリスの市民権を取得した人ですが、オルバーンが政権に復帰した翌年の2011年に「今後ハンガリーでは演奏しない」と宣言しました。不幸なことに、オルバーンは2010年から今に至るまで権威主義政権を続けてすっかり独裁国になってしまいました。シフはトランプの政権復帰に抗議して、今年、アメリカでは演奏しないと宣言しましたが、そもそも来年活動を停止するとのことです(2026年12月で73歳)。もっとも日本のクラシック音楽ファンには骨の髄まで権威主義に侵された人が多いですが。
ところで昨日、橋本健二の『新しい階級格差』(講談社現代新書2025)を読了した。この本については著者自身による下記記事がある。
正直言って第7章までは読み飛ばした。新たな発見はあまりないなあと思ったのだった。しかし第8章「格差をめぐる対立の構図と日本の未来」に紹介された、著者らによる「2022年三大都市圏調査データ」は興味深かった。「三大都市圏」だから東京、大阪、名古屋を中心とした都市部に調査対象が限られてはいるけれど。
特に第2節の「格差に対する態度と政党支持の関係」が興味深かったとともに、調査から3年で日本の有権者の政党支持の傾向が激変したことにも驚かされた。
2022年は安倍晋三が銃撃死した年だが、同時に日本維新の会の党勢が2014年以降に限ってはピークに達していた時期でもある。そのせいか、調査では支持政党は「自民」「公明」「維新」「野党」(!)に分けられており、「野党」には立民、共産、民民、社民、新選組が一緒くたにされている。2022年当時はまだ民民はそのように括られる政党だったということだ。
当時は自民党支持が強かったが、当時の自民党支持層は維新支持層と比較してもはるかに新自由主義色と極右色が強かった。
第4節「政治意識からみた現代日本人の五類型」では、日本人の政治意識は下記5つの類型に分類されるとしている。
- リベラル(26.4%) 所得再分配志向及び改憲反対が強い。排外主義的傾向は中間
- 伝統保守(21.0%) 所得再分配志向はやや強いが改憲志向。排外主義的傾向は強い
- 平和主義者(20.9%) 所得再分配志向はかなり弱く戦争反対に特化。排外主義的傾向は低い
- 無関心層(18.4%) 文字通りどんな政治的課題に対しても関心が低いが、排外主義的傾向も極めて低い
- 新自由主義右翼(13.2%) いわゆる「岩盤保守」。所得再分配志向が極めて低く、改憲志向が強い。また排外主義的傾向が極めて高い
第5節「新自由主義右翼の正体」では、彼ら「新自由主義右翼」の典型を「高学歴かつ高収入」「主に男性」「自民党支持率が高い」などとしている。
そして「新自由主義右翼」(いわゆるネトウヨ。弊ブログのコメント欄を汚染し続けた「まさ」に代表されるような人たち)に支えられた自民党の右傾化には、本来支持層の傾向としては「リベラル」にかなり近いはずの公明党が連立政権のパートナーになっていることから生じた部分があるという境家史郎の分析に言及している。この四半世紀あまりの公明党の罪はあまりにも重いということだ。そしてそれを招いたのは1999年の自自連立であり、そのもっとも重い責任者は小沢一郎だった。小沢と公明党の罪は万死に値するとしか言いようがない。
この「新自由主義右翼」は数の上では「伝統保守」の3分の2弱しかいない。しかし長く総理大臣を右翼(極右)色の強い安倍晋三が務めてきたために、「新自由主義右翼」が不当に優遇される政治が続いたというわけである。
それが崩れ始めたのが2022年の安倍晋三射殺であろう。自公政権は岸田文雄内閣の頃はまだ「新自由主義右翼」に媚びへつらっていたが、昨年の総裁選で極右の高市早苗を阻むために石破茂が当選して以来、岸田政権の頃から既に始まっていた「新自由主義右翼」の自民党離れ、石破政権離れが劇的に進み、それが参院選での自民党の惨敗につながったのであろう。
第7節「政党システムが変われば日本は変わる」で著者は、「新自由主義右翼」には自民党以外の受け皿(参政党及び日本保守党)ができたのだから、「リベラル」を主要な支持基盤とした政党対「伝統保守」を支持基盤とした政党(自民党)の対立構造が確立すれば、戦後日本で長く続いてきた「保守―革新」の対立が単純な形で復活すると言っている。しかしそのようなすっきりとした姿に移行できるとは私にはあまり思えない。野党の間でも、国民民主党(民民)は立民よりもずっと参政党や日本保守党に性格が近い政党になってしまっているし、立民にしても新自由主義になびこうとする傾向が相当に強いからだ。
そういう懸念もあるが、下記の文章には溜飲を下げた。以下引用する。
「新自由主義右翼」は、もともと少数派であるにもかかわらず自民党から、野党時代には政権奪回のため、政権を奪還したあとは政権維持のため、身の丈以上の厚遇を受けてきたといってよい。自民党が民主党から政権を奪回してから岸田文雄政権までの間、自民党が少数派に過ぎない「新自由主義右翼」の言いなりになり、連立与党の公明党がこrをみて見ぬふりをし、日本の政治を主導するという異常事態が続いてきたのである。
これらの人々の要求に応えすぎてきた自民党が、その本来の支持基盤であるはずの「伝統保守」へとスタンスを移すなら、格差の問題で自民党と野党が鋭く対立することがなくなる。このとき日本の政党システムは、日本人の政治意識の構図との対応関係を回復する。最大多数である「リベラル」、これに次ぐ規模の「伝統保守」、少数派の「新自由主義右翼」という、日本人の政治意識の構図に対応して、野党と自民党という二大勢力に、右派の少数政党が絡むという構図である。
そんなにうまくいくのか、楽観的見通しにすぎるんじゃないかとの懸念は相変わらず否めないが、このような観点から3日後に迫った自民党総裁選を見てみたい。