kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

おすすめの本 〜 西山太吉「沖縄密約」(岩波新書)

今後、山田洋行事件の捜査が進展すると思うが、防衛利権でクローズアップされるに違いないのが「沖縄利権」だ。普天間飛行場の移転などに絡む、巨額の利権があるといわれている。
この「沖縄利権」を生んだのは、1972年の沖縄返還の交渉過程で日米間に交わされた「密約」である。毎日新聞西山太吉記者(当時)は、この密約の一部を暴いたが、国家公務員法違反に問われて逮捕された。当時、毎日新聞は国民の「知る権利」を唱えて西山記者逮捕に抗議する大キャンペーンを張ったが、権力によって下半身スキャンダルにすり替えられてしまい、問題は矮小化された末毎日新聞の部数減と経営危機を招いただけで、真相は何も解明されずに終わってしまった。
最近、アメリカで公開された資料や、密約にかかわった元外務官僚・吉野文六らの証言によって、「沖縄密約」の全貌が明らかになりつつある。西山元記者がこれをまとめたのが、岩波新書から刊行された「沖縄密約」である。

沖縄密約―「情報犯罪」と日米同盟 (岩波新書)

沖縄密約―「情報犯罪」と日米同盟 (岩波新書)

この本を読めば、密約を伴った沖縄返還交渉によって、日米安保が変質し、日本がアメリカの安全保障戦略に一体となって組み込まれていった今日までの流れが決定づけられたことがわかる。そして、なぜ沖縄利権が大問題となり得るのかもおぼろげに想像がつくのである。もし、防衛利権の闇が本格的に暴かれるなら、日本の戦後史の大きなターニング・ポイントになり得ると思えるほどだ。この本には、時の人になっている守屋武昌・前防衛事務次官の名前も出てくる。

それにしても呆れるのは、吉野の証言によって「密約」の存在が否定できなくなった今になっても、日本政府がシラを切り続けている現状である。見え透いたウソを平然とつくのが日本の政府なのだ。世界でも稀に見る恥ずべき政府と言うしかない。

とにかく、これは是非一読をおすすめしたい本だ。