kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

西山太吉氏夫人・啓子(ひろこ)さんの訃報を遅ればせながら知る/佐藤栄作を英雄視する孫崎享の犯罪的悪行への怒りを新たにする

昨日、週刊誌(『週刊現代』だったかと思う)を立ち読みしていて初めて知ったのだが、西山太吉・元毎日新聞記者夫人の啓子(ひろこ)さんが今年2月に亡くなっていたとのこと。孫崎享が「自主独立派の政治家」として英雄視している佐藤栄作に陥れられた西山元記者を啓子さんが支え続けたことは、昨年1〜3月に放送されたTBSテレビのドラマ『運命の人』で初めて知った。ドラマの放送期間中、当ダイアリーではこのドラマに関連する歴史的事実を毎週取り上げ、関連図書の紹介などを行ったこともあって、ドラマ放送中の毎週日曜日夜になると当ダイアリーのアクセス数がはね上がったものだ。その中で啓子さんを記事のタイトルにしたのが下記。


それなのに、啓子さんの訃報を今まで知らなかったうかつさを悔やんだ。ネット検索をかけても啓子さん死去に関して書かれた記事は少ないが、筆頭に表示されたのが下記の記事だった。


http://warabij.ti-da.net/e4434011.html(2013年2月27日)

「沖縄密約」事件の西山太吉さんの妻西山啓子(ひろこ)さん訃報の新聞記事(沖縄タイムス2月24日)をみて、あらためて「沖縄密約」について検証したいと思います。


以下は「呑ん兵衛備忘録」からの一部引用

いつもなら声を荒らげ、睨みつけるように反論してくる夫が黙っている。啓子は身を縮めるような思いで待った。

「あのね」

か細い声が聞こえた。拝むような表情の夫が続ける。
「ギャンブルしているときだけは、すべてを忘れられるんだ」

啓子は何も言えなかった。さよならと一言、口に出してしまえば終わるのに――。

「結局、決断できないのは私自身だったのね。私が放りだしたら、ひとりでは生きていけないだろう。私さえ我慢すれば、まわりに迷惑をかけずにすむ。そう思っていたけど、言い訳だったのかもしれない。だから、どんなにわがまま言っても大丈夫だろうって、主人から見透かされてしまうのね。ただ、心の底のどこかに、これではあまりにもかわいそうすぎるという気持ちがあったことも確かでした。このまま終わってほしくない、と」

                中 略      

電話を切ると、夫は玄関へ向かった。

「ちょっと新聞買ってくる」

飛び出すように出て行ったきり、なかなか帰ってこない。戻ってきたとき、手にした新聞はくしゃくしゃになっていた。

朝日新聞琉球大の我部(がべ)政明教授は、沖縄返還(一九七二年五月)に至る日米両国政府の交渉の実態と最終結果を詳しく記録した米公文書のつづりを入手した。それによると、返還土地の原状回復補償費四百万ドルを日本政府が肩代わりする▽日本政府が物品・役務で負担する基地施設改善移転費六千五百万ドルなどの「秘密枠」をつくる――がいずれも極秘扱いの密約だったことが明らかになった〉

原状回復補償費四百万ドルをめぐる密約とは、かつて夫が問い、そのことによって罪を着せられた密約そのものだった。それを一面だけでなく、二、三面も見開きで報じていた。破格の扱いだった。

台所のテーブルに新聞を置くと、夫はつぶやくように言った。

「あんたの言ったとおりだったな」

口にしたのはそれだけだったが、啓子にはその意味がわかった。

「パパねえ、アメリカってでたらめなところのある国だけど、きっと公文書とかが出てくるわよ。密約があったことは、きっと証明されるから」

事件が起きた直後から、啓子はしきりにこう繰り返していたのだ。

                                 引用終わり


「情報は誰のものか」−岩波ブックレットNO.596

 
筑紫−この問題の根本にあるのは、報道機関というものは権力を監視する「ウォッチドッグ(番犬)だという一番基本にかかわるテ−マに、尽きると思います」
 「沖縄密約から30年経って、現在何が問題かと言えば、いまだ隠すことをやめない私たちの政府機関、権力者たちの存在でありましょう。そういう意味ではこれは30年前の事件ではなくて、現在の事件です。つまり、嘘をつき通すということを、依然として政府や私たちが選んだ権力者はやり続けて、それが可能な国だという、これは非常に明白に照らし出しています」

西山−「週刊金曜日」によるジェンキンスさんとその家族へのインタビュ−は、当然、北朝鮮政府がアレンジしたものですから、そこには権力の意思が働きます。その会見でわれわれは宣伝を鵜呑みにするのではなく、判断にあたっての貴重な資料としてとらえればよいのです。官制の会見は、程度の差こそあれ、みな色はついています。

 それを見抜くのは、取材する側、あるいは読者の側の能力の問題です。基礎資料というのは、その人と会ってその人がしゃべらなければ始まらないのです。だから非常に簡単なことであって、そのインタビュ−自体を否定するということは自らの首を絞めるようなもので、マスメディアの自殺行為です。「報道の自由」の否定につながります。これは「イロハ」のイです。

 これはおそろしいファッショですよ。はっきり言えば、権力の集中が始まってくると、受け皿のほうでも権力に迎合する、いわゆるファシズム的な動きを受容し、それを促進する陣営ができてくる。学者もそうでしょうけれども、ジャ−ナリズムの中にも受け皿が出てくるのです。 


沖縄密約事件を封印した「戦後史の正体」

 孫崎享氏の「戦後史の正体」は、西山事件の「沖縄密約」を、意図的に封印しています。
 「そういう意味ではこれは30年前の事件ではなくて、現在の事件です。つまり、嘘をつき通すということを、依然として政府や私たちが選んだ権力者はやり続けて、それが可能な国だという、これは非常に明白に照らし出しています」。

 「外務省のもっとも恥ずべき部分」(天木直人)を「戦後史の正体」は隠ぺいし封印しています。ある意味で情報犯罪だと考えています。

 孫崎享氏は「戦後史の正体」のあとがきで「私自身、40年近く外交官としてすごしましたが、本当の外交をしようと思ったら、必ず歴史を勉強する必要が出てきます。相手国とのあいだに横たわる問題を共同で解決し、友好関係を維持する。または敵対関係のなかでなんとか妥協点を見いだし、最悪の事態を回避する。どちらの場合も、本当に必要なものは情報です。そのなかでいちばん基礎となる本質的な情報をあたえてくれるのが、歴史の研究なのです。」

 本当に必要な情報を封印した「戦後史の正体」。これまで繰り返し述べてきましたが、「戦後史の正体」が国にとって本当に都合が悪ければ西山事件の「沖縄密約」と同様、徹底的に弾圧し、国家機密法違反で逮捕されることでしょう。
 そうならないのは、なぜなのか皆さんに考えてもらいたいと考えています。

 72年沖縄返還時にシステムとして確立された「公印偽造による裏金づくり」を、暴露したため、沖縄市役所から市民オンブズマンを抹殺するために「罠」を仕掛けられ、それを見破ると、終いには不当な契約解除。
 来る3月9日で4年目。国家権力の恐るべき犯罪行為である「色のついた放射能」をご覧ください。

(『わらびジャーナル』 2013年2月27日付記事「沖縄密約事件孫崎享」)


そういえば孫崎享は、アメリカと「糸と縄の取引」を行い、沖縄返還に絡んでアメリカと密約を交わした佐藤栄作を「自主独立派の政治家」として持ち上げている。現在では密約が「あった」ことは広く世に認められているにもかかわらず、日本政府は密約の存在を未だに認めていない。

そして、一部の「リベラル・左派」が佐藤栄作岸信介を賛美する孫崎のご高説をありがたく承り、もののみごとに洗脳される醜態を晒しているさなかに、啓子さんはこの世を去ってしまった。なんたる痛恨事!

遅ればせながら、故西山啓子さんのご冥福をお祈り申し上げる。