財政再建至上主義で暴走するマスコミ〜黒幕は財務省でも米国でもない〜 - Munchener Brucke より。
日経新聞は「日本は置き去り」と見出しを付け、ロイター通信の言葉を借りて「ほかの先進国に比べて『質の悪い』日本の財政状況を浮き彫りにした」と伝えた。
これは明らかに世論誘導のための曲解であり、事実は国債の95%を国内で調達している日本の相対的リスクの低さを評価した上での例外扱いだ。
その通りだと思う。よく「お国の借金」などという言い方がされるが、政府は誰から借金をしているのか。神野直彦の解答は明快である。
政府は、国民から借金しているのです。
(『財政のしくみがわかる本』 132頁)
- 作者: 神野直彦
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2007/06/22
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もっと言うと、主に日本国内の富裕層から借金をしている。
以前、TBSの『サンデーモーニング』で、関口宏が「この借金は誰が返すの?」と聞いて、女性アナウンサーが苦笑いしながら「私たち」と答えた映像を見て、私は激怒した。
めちゃくちゃな事実誤認であり、これがマスコミのプロパガンダなのである。
財政赤字の原因の一つとして、所得税・法人税といった直接税を下げすぎたことがある。それと、これまであまり書かなかったがバブル経済の影響がある。バブルの頃に、大企業勤務のサラリーマンあたりでも、ローンを組んで高いマンションを買ったあと、バブル崩壊でローン返済に追われ、早期リタイアもままならず苦しんでいる話はよく聞くが、逆に、当時の地価暴騰によって大儲けした人たちも多数いるはずだ。そして、彼らの儲けは死蔵されて金は回らない。資産課税強化の必要性を感じる。また、バブルの頃に税収が急増したことに調子に乗って所得税の累進性を弱めたことも、バブル崩壊後税収が急落する一因となった。
本論に戻って、財政再建論のどこが一番間違っているかというと、富裕層が政府に金を貸しすぎている現状を是正するためには、資産課税や所得税・法人税増税などによって富裕層に応分の負担をしてもらうことが本来の解であるにもかかわらず、それを逆進性の強い消費税で賄おうとしていることである。要するに、本来富裕層が払うべき税を貧乏人から搾り取ろうという発想だ。だが、そんなことをしたら消費を冷やし、景気は後退し、税収はさらに低下する。結局金持ちのエゴイズムが日本経済の足を引っ張るのである。だからこそ問題なのだ。
富裕層が応分の負担をして初めて、消費税にも再分配の効果が生じる。だが、富裕層が応分の負担をする前に消費税を増税すると、それが財政再建や法人税増税の穴埋めに充てられてしまうので、逆再分配になってしまう。だから、増税の順序が大事であって、消費税増税は税制改革のプロセスにおいては、あとの方で行わなければならないのである。それだけのことだ。
ナベツネや田原総一朗などは文句なしの「大富豪」だろうが、産経日経のチンピラ記者は単に金持ちに媚びへつらっているだけの人間だろうと思う。彼らは、深く考えずに「財政再建真理教」を信じているだけではなかろうか。