kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

「森の清談」の方が「小沢信者の絶叫」よりよほどまっとうだよ

昔、不人気をきわめた森喜朗の政権末期から小泉政権初期にかけて森にインタビューした、『文藝春秋』の不定期連載「森の清談」があって、私はこれを嫌っていたが、森喜朗の語ることが小沢信者の絶叫よりはるかに説得力がある時代になってしまった。

森は、町村派にのさばる安倍晋三と決裂し、派閥を脱退した。政治家としては功罪相半ばするというより害毒の方が多かった森喜朗だが、それでも今の民主党自民党の政治家よりまだ見どころがあったと思えるから情けない。

今朝の朝日新聞に掲載された森喜朗のインタビューの見出しは、「対中外交 小沢氏乗り出すべきだ」である。

森は、日中関係混乱の原因は、民主党が掲げた「政治主導」だとする。官僚を排除しているから、問題解決の知恵がない。国難にはオールジャパンで当たって、外務省の意見も聴き、自民党議員の協力も求めよと言う。もっともな主張だと思う。

森によると、小泉政権時代、小泉の靖国参拝などで悪化した中国との関係回復に動いたのは、野中広務野田毅加藤紘一らだった。加藤と中国との関係は有名だが、「加藤の乱」の頃、加藤と菅直人が携帯電話で連絡を取り合っていたこともよく知られている。一昨年の年末には、亀井静香が仕掛け人となって、「YKKK」(山崎拓加藤紘一菅直人亀井静香)で連携しようという発想もあったが、山崎と加藤は動かなかったし*1、その頃から菅直人も精彩を欠くようになっていった印象を受ける。総理大臣に就任した現在にいたっては、菅直人とはいったい何をやりたい政治家なのかと疑問に思うようになってしまった。

小泉政権時代に苦労したのは官房長官福田康夫だっただろう。1978年の日中平和友好条約を結んだ福田赳夫の倅だが、福田赳夫はもともと親台派だったのが、田中角栄の日中国交回復に絡む仕事として条約締結の役柄が回ってきたような印象を持っている。むしろ外相の大平正芳の方が、私に強い印象を残した。そのせいで、条約締結は大平政権時代のできごとだと錯覚してしまったことさえ私にはある。日中といえば田中・大平というのが私の印象だ。

だが、父を深く尊敬する福田康夫はそうではなく、私には福田康夫の方が福田赳夫より親中的に見える。暴走するボスの小泉純一郎に悩まされながら、前述の野中・加藤や官僚OBの助言も容れつつ、福田康夫は苦労したことだろう。それが、福田を次第に反小泉へと傾かせていったのではないか。当然ながら、福田康夫ネット右翼の標的にもなった。

さて、森喜朗小沢一郎についてこう語る。

民主党小沢一郎元代表は約140人の議員を連れて訪中し、胡錦濤国家主席と会談するなど中国との関係は深いはず。外交に「脱小沢」はない。小沢さんが乗り出すべきだ。


これぞ間然するところのない正論だ。私は、大嫌いな(いや、「中嫌い」くらいかな)森喜朗だろうが、評価すべき時には評価する。小沢信者の「前原なんかの尻ぬぐいを小沢さんにさせよというのか。向こうから頭を下げて頼み込むべきだ」という絶叫とは、残念ながら格が違う。もちろん私は小沢一郎前原誠司の尻ぬぐいをすべきだと言っているのだ。一方、前原誠司にも小沢一郎に頭を下げろと言いたい。前原は、「偽メール事件」の時にも小沢一郎や(当時疎遠だった)菅直人らの意見を全く聞かずに暴走して自滅した。「国難にはオールジャパンで当たれ」という森喜朗の言葉には説得力があるが、果たして小沢一郎前原誠司はその器なのか。

なお、朝日新聞記者は、小沢一郎森喜朗との連携に向けて接触するとの憶測が出ていると水を向けると、森は全否定した。以下森の発言。

小沢一郎森喜朗接触は)まったくない。ばかばかしい。2007年の自民党との大連立を自分から持ちかけておいて、失敗した後は一言のおわびもない。

(中略)

小沢さんは私に「消費税を持ち出した党が選挙に負けることがあってはいかん。消費税で自民党と協力しよう」と言った。代表選で言っていた話と全然違う。

(中略)

小沢さんは「一兵卒」と言うが、自分が動くとマスコミが大きく扱うことをわかっている。そうやって常に権力闘争の中にいて影響力を保つということだ。ただ、小沢さんが本当に国家のためになるのは、もっと大きな立場に立ち、権力闘争を捨てたときだ。経験豊かで手駒も資金力も豊富だ。ポストを求めず、公平無私の立場で民主党を一つにまとめるようになると手ごわい。


さすがというべきか、森は敵をよく知っている。

だが、現実の小沢一郎は、日中関係改善には動かず、河村たかしの応援に行けと松木謙公三宅雪子に指示を飛ばすだけの「政局屋」に成り下がっているようにしか、私には見えない。

*1:当時から衆院選の情勢が厳しいと言われていた山崎拓は、結局何の手も打たず、なすすべなく落選した。