アメリカのティーパーティー運動についての続き。先月末の毎日新聞記事より。
http://mainichi.jp/life/money/kabu/eco/worldwatch/news/20100927org00m020002000c.html
WASHINGTON D.C. 中間選挙で共和党を揺るがす「茶会運動」旋風
正直言って、ここまで米国の政治を揺さぶる存在になるとは思わなかった。草の根保守派の「ティーパーティー・ムーブメント」(茶会運動)のことである。筆者が茶会運動なる言葉を初めて聞いたのは、昨年2月19日だった。
その日、CNBCテレビのニュースが、住宅ローンが払えない人たちへのオバマ政権による支援策を取り上げた。その直後、シカゴ商品取引所に画面が切り替わり、マーケットの動向を伝えるはずだったキャスターのリック・サンテリ氏が激昂した様子で「政府は悪い行いを奨励している」と声を張り上げた。「これがアメリカなのか。自分の家よりも余分にバスルームがある隣人の家のローンを払ってやりたいヤツはいるか? オバマ大統領よ、聞いてるか? 政府がしていることは、墓場にいる(米国を建国した)トーマス・ジェファーソンたちの安眠を妨げている。俺はシカゴで茶会運動を組織することに決めた」。
18世紀の米国独立前、植民地統治をしていた英国による紅茶の輸入課税に反対し、独立戦争につながった「ボストン茶会事件」を念頭にした発言だった。サンテリ氏の怒りに触発されるように茶会運動は瞬く間に全米に広まった。
9月14日、中間選挙(11月2日投開票)の共和党予備選が7州で行われた。このうち4州で共和党指導部が擁立した候補に対抗して、茶会運動が無名に近い候補計10人を立てた。うち3人が共和党指導部が推す候補に勝った。
◇民主党の地盤でどう戦う
圧巻だったのはデラウェア州の予備選だ。上院予備選では、同州知事を2期務め、現在下院議員9期目で上院へのくら替えを目指す共和党重鎮、マイケル・キャッスル氏(71歳)が政治経験のない茶会運動の女性候補、クリスティン・オドネル氏(41歳)にまさかの敗北を喫した。下院予備選でも茶会運動候補が勝利した。
デラウェア州の上院選は、30年以上も上院議員を務め、オバマ政権で副大統領となったバイデン氏の後任を、民主党が死守するか共和党が奪うかで注目を集めている。副大統領の地盤で共和党が勝てば、オバマ政権の求心力低下を象徴する出来事になり、共和党は最重点選挙区の1つに据えた。
民主党支持者の多い州だが、共和党指導部は知名度が高く穏健派の候補であれば、逆風にさらされている民主党候補に勝てるとの読みでキャッスル氏に白羽の矢を立てた。一方、オドネル氏は市場コンサルタントなどの経歴を持ち、社会保障の削減や教育省の縮小、医療保険改革法の廃止など徹底した「小さな政府」を訴えた。
政策の是非よりも、共和党指導部と茶会運動のどちらが共和党が守るべき保守的価値観を大切にしているのかが争点になり、「エリート政治家はいらない」という茶会運動の大合唱が有権者に浸透した。キャッスル氏の敗退は、共和党指導部に不信任が突きつけられたことを意味する。茶会運動は「反オバマ政権」で共闘できる相手というよりも、共和党の脅威となりうることを証明した。
ブッシュ前大統領の懐刀で「最強の選挙参謀」と呼ばれたカール・ローブ氏はFOXテレビに出演し、「オドネル氏はバカげたことばかり言っており、議員になる資質がない。本選の民主党との一騎打ちでは彼女に勝ち目はない。共和党は重要な選挙区を失った」と不快感を示した。
『ニューヨーク・タイムズ』紙の世論調査では、共和党支持の登録有権者の48%が茶会運動を肯定的に受け止めている。オバマ大統領の支持率低迷を喜んでいる余裕は共和党にはない。
2010年9月27日
これは興味深い記事で、共和党を自民党に、ティーパーティーを「みんなの党」に置き換えてみたくもなるが、日米の大きな違いは、日本では河村たかしのように、民主党からも「ティーパーティー」に相当する流れが生じており、小沢一郎をその旗手として期待する向きもあることだ*1。ちなみにティーパーティーを日本語に訳すと「茶会党(ちゃかいとう)」になるのだろうか。
私が気になって仕方がないのは、検索語「ティーパーティー 小沢」でググってみつけた、民主党公式サイトにあるこの記事だ。
http://www.dpj.or.jp/news/?num=15518
主催者の岡本英子氏は、昨年の衆院選で初当選した「小沢チルドレン」の一人で、新人ながら今年の民主党代表選で小沢一郎の応援団長格で奮闘していた様子がテレビでも報道された。一口に「小沢チルドレン」といっても、打算で小沢についただけで、最近では小沢一郎離れの気配も見せている議員や、もともとは小沢一郎よりも菅直人に親和性の強い体質を持っていると思われる議員(福田衣里子氏ら)もいて、彼らは微妙に小沢一郎との距離をとっているが、岡本氏の場合は小沢一郎に心酔しきっている様子がテレビ画面を通してもありありと伝わってきて、私などは薄気味悪さを感じた。
民主党サイトの記事で紹介されている茶会は岡本氏が国会議員になる前の昨年3月に行われており、アメリカでティーパーティー運動が立ち上がった直後。だから、ティーパーティー運動とは関係ない、単なるお茶会だろうと思うが、仮に偶然であるにしてもいやな符合だ。なお、岡本氏は今年も「ティーパーティ2010」を開き、それにも小沢一郎を呼んだことを自らのブログで明かしている*2。
ま、いくらなんでも岡本氏とアメリカのティーパーティー運動は無関係だろうが、意識的にティーパーティー運動に言及したのが自民党参院議員に返り咲いた片山さつきである。当ブログは、片山が城内実と敵対する場合に限って、片山に一定の評価を与えてきたが、片山と城内が同じ選挙区で戦う可能性がなくなった今後は、片山を容認する文章を書くことはほとんどないと思う。
以下に片山のブログを示す。興味のある方はご参照いただいても構わないが、胸が悪くなること請け合いである。
片山さつき Official Blog : ティーパーティーツアー、前半終了!30日新霞が関ビルは、ターニングポイント!
この片山さつきに、「消費増税を唱える自民党の政治家が何を言うか」と噛みついたのが陰謀論者・「アルルの男・ヒロシ」だったわけである。だがそれは、私から見ればどっちもどっち。
ティーパーティー運動とは、「『小さな政府論』と『反エスタブリッシュメント』という『情念』で結ばれているだけ」という、冷泉彰彦氏の説明は、あまりにすっきりと、よく納得できるので、今後私は愛用してしまいそうだが、この冷泉氏の表現から私が思い浮かべるのは、そう、「良い小さな政府」を理想としていると公言し、批判されてもそれを撤回しない植草一秀であり、植草の盟友でリバタリアンを自称する陰謀論者の副島隆彦(ソエジー)であり、同じくリバタリアン系陰謀論者の「アルルの男・ヒロシ」である。彼らの主張には強弱があって、たとえば植草一秀は河村たかしをブログで取り上げたことは過去5度しかなく*3、そのいずれもが好意的な言及であって、植草が河村を批判したことは一度もないとはいえ、植草は河村が主導する名古屋市議会リコール運動については何も書いていない。つまり、植草一秀はリバタリアンにまでは至らない。しかし、ソエジーや「アルルの男・ヒロシ」はリバタリアンを自称し、河村たかしに強く入れ込んでいる。つまり、ソエジーや「アルルの男・ヒロシ」は、植草一秀よりもさらに悪質である。
社民主義や福祉国家を目指す人間にとって、彼らが敵対勢力であることはいうまでもない。
*1:もっともアメリカでも、ティーパーティー運動は民主党支持者にも支持を広げているらしい。
*2:http://ameblo.jp/okamoto-eiko/entry-10542618320.html
*3:http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2010/04/post-159d.html, http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2010/04/post-fad5.html, http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2010/03/post-623a.html, http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2009/04/5-38d3.html, http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2009/04/post-981d.html