kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

菅直人の「疎い」失言にはしゃぐ人たちの方こそ「疎い」

アメリカの格付け会社が日本の国債の格付けを下げた件で、首相・菅直人が「そういうことに疎い」と言った件で、マスコミも小沢信者も大はしゃぎしているが、そんなことで騒ぐ方がおかしい。


小沢信者の例でいうと、「反戦な家づくり」の記事*1のタイトルは、「国債の格付けには疎い総理の『格付け論』」となっている。菅直人が、野党時代の2002年に、自身の公式ウェブサイトで、

 日本の国債に対するムーディーズの格付けが二段階下がった。景気回復が見込めず財政悪化に歯止めがかからないと見られた結果。(中略)外国に資金が流出し始めれば一挙に国債は暴落する恐れがある。能天気な総理や財務大臣には分かっているのだろうか。

と書いたこと*2を揶揄しているのだが、この2002年の菅の文章自体が、財政再建厨、つまり当時政権にあった小泉純一郎竹中平蔵に塩を送った代物であり、まずそこから批判しなければならない。もちろん、与謝野馨を経済財政担当相に招いた現在の菅直人の立場も当時と同じであり、その菅直人以上に、この騒ぎに一番ほくそ笑んでいるのは、実は与謝野馨だろう。この格下げは、与謝野の念願である消費税増税による財政再建への大いなる追い風になるからだ。


上記ブログ記事を書いたブログ主は、かつて「ハイパーインフレの恐怖」を切々と訴えていた人だから、「『疎い』のはどっち?」ですまされるだけの話かもしれない。これは何も上記ブログだけではなく、「きっこのブログ」なども同様である*3


菅直人が失言をしたといってはしゃぐだけのあさはかなネット言論に対し、朝日新聞の社説は本当に性質が悪い。
http://www.asahi.com/paper/editorial20110129.html#Edit1

 とりわけ深刻なのは、S&Pの格下げ理由に日本の政治状況があげられたことだ。ねじれ国会のもとで野党が対決色を強め、税と社会保障の一体改革は協議入りもかなり難しい。新年度予算案の関連法案が成立しない可能性さえある。その懸念が国債の格付けに響いているのである。

 日本の消費税率は先進国で最も低く、まだ引き上げ余地がある。日本政府はいずれ増税に踏み切るだろう。市場にはそういう期待と確信があった。だが日本の政治は重い腰を上げられないでいる。いまや市場から不信感が突きつけられたのだ。

 一体改革に「政治生命をかける」と言った菅直人首相が格下げについて聞かれ、「そういうことに疎い」と答えたのは情けない。「改革で、財政再建も経済成長も必ず成し遂げます」と、力強く言うべきだった。


朝日新聞 2011年1月29日付社説「『疎い政治』への重い警告」より)


もうおわかりだろう。菅直人の失言をあげつらうだけの「反戦な家づくり」や「きっこのブログ」の記事では、この朝日新聞の悪質な言論は撃てない。この社説は、一見菅直人に苦言を呈しているかのようで、その実菅直人与謝野馨に対する大きな援護射撃になっているのだ。

うがった見方をすれば、菅直人はこの朝日の社説のような、経済軸上における右側からの「批判」を引き出すために、わざとアホを演じて見せたのではないか。私にはそう思えてならない。