kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

陰謀論がまかり通る「東京電力」という会社(朝日新聞「原子力村は伏魔殿」より)

25日付朝日新聞で、「神話の陰に 福島原発40年」というシリーズ記事が始まった。初回の今日は、「原子力村は伏魔殿」という記事で、経済記者の小森敦司が書いている。小森記者は、5月20日付の同紙コラム「記者有論」で、「『毒まんじゅう』やめたい」というタイトルで、田中角栄首相・中曽根康弘通産相の時代に制定された「電源三法」を批判した記者だ。コラム中で、福島大学の清水修二副学長が電源三法交付金の廃止を訴えたコメントを紹介し、日本とアメリカ、モンゴルが共同して使用済み核燃料の貯蔵・処分施設をモンゴルに建設する構想*1も、電源三法交付金の構図の延長だと喝破した。蛇足だが、田中角栄の愛弟子である小沢一郎が「電源三法」に言及したという話は聞いたことがない。

今朝の記事では、特に3面に掲載された発送電分離に関する文章が読ませる。菅政権が言い出して議論になっているこの件だが、かつて90年代から2000年代初頭にかけて電力会社の地域独占体勢を崩そうとする動きがあったとして、電力自由化の旗を振った官僚として村田成二(66)の名を挙げている。村田は2002年に事務次官に就き、現在では新エネルギー・産業技術総合開発機構NEDO)理事長。2002年というと第1次小泉政権の時代だから、小泉政権には新自由主義政権にふさわしく、いちおうは電力自由化を目指していたことになる*2。村田が最終目標に置いたのが電力会社から送電部門を切り離す「発送電分離」だった。

これに対して電力業界が巻き返しを図り、これに成功したわけだが、記事に実名を挙げられた政治家が、先日、原発を守るための議連を立ち上げた甘利明と東電元副社長の加納時男(笑)である。さらに、細田博之の名前も出ている。甘利は安倍内閣経産相細田福田康夫がケツをまくった後任の小泉内閣官房長官の印象が強い。「電力族」と呼ばれる甘利らは、自民党内にエネルギー政策の小委員会を立ち上げ、議員立法によるエネルギー政策基本法の制定を急いだとのことだ。

基本法が成立したのは2002年6月だが、その2か月後に東電の原発トラブル隠しが発覚した。東京電力は、「村田が発送電分離を実現するために仕組んだのでは」といぶかった、と記事は書く。

自らの悪事である原発トラブル隠しが露見したのを、「官僚の陰謀」のせいにするのが東京電力という会社の体質らしい。これには呆れるばかりだ。

結局電力族議員らの働きかけが奏功し、2003年10月にできたエネルギー基本計画には「原子力を期間電源と位置づけ」「発電から送配電まで一貫」という文言が盛り込まれた。2004年に村田が退官すると、電力自由化の機運はしぼんでいったと記事は書くが、蛇足を付け加えると、その代わりに小泉純一郎が熱中したのが「郵政民営化」だった。

甘利明経産相を務めていた2007年1月に、各社で原発の検査データ改ざんが発覚した時、原子力安全・保安院は経営責任を事実上不問に付し、産業界や族議員は東電原発事故後も原発推進を声高に叫んでいるという指摘で記事は結ばれるが、これにも蛇足を付け加えると、電力総連やその出身の民主党議員(藤原正司)も原発推進のお仲間である。

現在、菅政権の批判をあおり立て、内閣不信任案の成立に躍起になっている自民党とはこういう政党だということだ。

もっとも、自民党総裁谷垣禎一は、いまいち不信任案の提出には腰が引けている。最近、小沢信者は何を考えたか、自民党は内閣不信任案の提出時期は谷垣の判断に委ねることを確認。(もう、内閣不信任案は出さないってことだね。はぁ〜、。。) : 晴天とら日和 (SEITEN TORA BIYORI) などとため息をついているが、よほど自自公政権を復活させて原発を推進したくて、したくて、したくてたまらないらしい(爆)。

*1:この件は、確か毎日新聞が暴いたと記憶する。

*2:先日、竹中平蔵がテレビで「電力自由化にもっとも強く反対したのが東京電力だった」と言っていた。