kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

差別意識の東と西(網野善彦『歴史を考えるヒント』より)

今日読み終えた本。


歴史を考えるヒント (新潮文庫)

歴史を考えるヒント (新潮文庫)


網野善彦(1928-2004)が晩年の1997年に行った講演を元に編まれた本。2001年に新潮社から出版されたものが、今年9月に新潮文庫に収録された。

現在話題の事柄に関連して、第VII章「被差別民の呼称」より紹介する。

差別のあり方は東国と西国で違う。(いうまでもなく)西日本における差別問題は東日本よりずっと深刻。また、北海道や沖縄には被差別部落はない*1。東と西との差別問題の違いは、「ケガレ」に対する対処の違いからきており、それはケガレに対しておおらかな縄文文化とケガレに神経質な弥生文化の違いからきていると考えられる。弥生文化が列島に入ってきた紀元前3世紀以降、列島東部が縄文文化、列島西部が弥生文化という時代が200年ほど続いた。ケガレに対する対処の東と西の違いは、その頃まで遡ることができると思われる*2

ちなみに著者の網野善彦自身は山梨生まれの東京育ちで、「被差別部落について本当に知ったのは歴史を勉強し初めてからのこと」とのこと*3

蛇足かもしれないけれど、橋下徹をめぐる一件で、東日本出身者と西日本出身者では確かに受け止め方が全然違うよなあとは思った。

*1:沖縄には、琉球王国の時代に「アンニャ」と呼ばれる一種の芸能民がいて、差別をされていたが(そういえばかつて広島カープ安仁屋宗八という沖縄出身の投手がいた。「アンニャ」はおそらく「行脚」からきた言葉とのこと)、本州・四国・九州の被差別民とは異なる要因によるものであり、被差別部落と言えるような集落はなかったとのこと。

*2:本書122-128頁より抜粋して要約

*3:本書124頁