kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

2000年と2012年の総選挙を比較すれば、日本の「右傾化」は明白だ

今回の衆院選で、自民党比例区議席が前回よりも2議席増えただけで、絶対得票数に至っては減らしていることを理由に、「日本は右傾化なんかしていない」と強弁する声がある。しかし、これは明白な誤りだ。既に多くの人が指摘しているように、上記の論法は、自民党よりも過激な極右政党である日本維新の怪が厄侵したことを無視している。

私が思い出すのは、1976年の総選挙で自民党過半数を割り込んだ時、新自由クラブが躍進したことを指摘して「オール保守」としては議席を増やしていると言った朝日新聞石川真澄(2004年没)の論評だ。この時、石川が「保守」と評した河野洋平ネトウヨらによって「極左」呼ばわりされており、今回の総選挙で一部マスコミから「リベラルのとりで」と評された政党の某有力議員が、河野談話を不服として河野洋平の国会への参考人招致を要求したことを考えても、日本の世論の異様なまでの右傾化は明白だろう。

日本の世論がいかにひどく右傾化しているかは、2000年と今回の総選挙の結果を比べてみれば一目瞭然だ。

2000年の総選挙は、自民233、民主127、公明31、自由22、共産20、社民19、保守7、無所属の会5、自由連合1、無所属15という選挙結果だった。比例代表の得票率は、自民28.3%、民主25.2%、公明13.0%、自由11.0%、共産11.2%、社民9.4%、保守0.4%、無所属の会0.3%、自由連合1.1%、諸派0.2%となっている。自民と民主の比例区の得票率はわずか3.1ポイントしかないが、それでも議席数が233対127という大差がつくのが小選挙区制の特性だ。

今回の総選挙では、自民294、民主57、維新54、公明31、みんな18、未来9、共産8、社民2、大地1、国民新1、無所属5という選挙結果で、比例代表の得票率は、自民27.6%、民主15.9%、維新20.3%、公明11.8%、みんな8.7%、未来5.6%、共産6.1%、社民2.3%、大地0.5%、国民新0.1%、改革0.3%、幸福0.3%となっている。自民と維新・民主の得票率の差を見れば、当然の選挙結果だったといえる。

両選挙を比較すると、自民党の得票率はほとんど変わっていないことがわかる。2005年の郵政総選挙が異常だったともいえるが、その前の2003年総選挙でも、自民35.0%、民主37.4%という、自民・民主ともに高い得票率を記録し、議席は自民237、民主177だった。自民党は「小泉改革」への期待、民主党は「政権交代」への期待でそれぞれ得票率が上がっていたものと見られる。つまり、2005年と2009年の両極端の選挙結果は、2003年に既に準備されていたと見ることができる。

今回は、両党のバブルが弾けたあとの最初の総選挙だったといえるが、違うのは、自民党は下野したあとも分裂せずに耐えたことであって、これには谷垣禎一の功績が大きかった。一方、民主党は下野する前から分裂したが、政権交代の目標のみを接着剤としてくっついていた(野合していた)政党の宿命といえるかもしれない。2005年の自民党圧勝は小泉純一郎への熱狂に支えられたが、今回は民主党の瓦解に助けられたに過ぎないことは明らかだ。

右傾化については、左翼政党の得票率が、共産党は2000年の半分強(54%)、社民党に至っては4分の1弱(24%)にまで下落していることから明らかだ。また、保守政治家である小沢一郎の個人人気も、2000年の自由党と今回の日本未来の党の得票率を比較すると、およそ半分に下落した。2000年の総選挙から小沢一郎民主党代表になるまでに6年、民主党が総選挙で圧勝するまでに9年を要している。今回の日本未来の党が12年前の自由党の半分の得票率、4割の議席数しか得られていないことを考えれば、そこから仮に復活するにしても前回以上の時間がかかることは明らかであり、現在70歳という小沢一郎の年齢を考慮しても、もう政界のトップに小沢一郎が返り咲く可能性はほとんどないと考えるべきだろう。橋下に祭り上げられた石原慎太郎が80歳にしてのさばっている悪例もあるが、現状を見て、石原が総理大臣になる可能性があると考える人はほとんどいないだろう。

ところで、民主党比例代表の得票率は、2009年の42.4%から今回は15.9%になり、なんと前回比37.5%にまで激減した。8人いた民主党への投票者が今回は3人にまで減った勘定だ。そして、投票行動を変えた5人のうち4人までが日本維新の怪に投票した。彼らは、「右も左もない」という言葉で表されるような人たちだろう。なお、私自身は前回も今回も比例で民主党には投票していない。

前回の衆院選の前に、「『右』も『左』もない」という合言葉を使いながら政権交代を煽っていた人たちがネットにもいた。彼らのおすすめは城内実平沼赳夫だったが、城内実自民党に復党し、平沼赳夫は日本維新の怪公認候補として、それぞれ前回の総選挙に引き続いて圧勝した。

今となって思うのは、「『右』も『左』もない」人々が、日本維新の怪の人気を後押しし、日本を破滅へと追いやるだろうということだ。その意味でも、前回の総選挙前に「『右』も『左』もない」という合言葉を使って政権交代を煽った人たちの罪は重い。