kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

立民・共産支持者が「山本党に票を食われた」と怒るのは筋違い。比例代表制のおかげでその影響はせいぜい立民・共産各1議席。今後野党が標的とすべきは衆院選の小選挙区制だ

 一昨日(7/22)に公開した下記記事のコメント欄より。

 

kojitaken.hatenablog.com

 

abc

 

マスコミの選挙予測はサンプリング調査でやっている。そして高い精度で的中させている。で、サンプリング調査は無作為に投票に行く人々、行かない人々を対象にしてる。ってことは投票行っていない人々も傾向はあまり変わらないってこと。つまり、仮に投票率が100%だったとしても、結果は殆ど変わらない

勘違いしてる左派が多いけど、野党を支持する有権者が増える→投票率が高くなる、は成立するけど、投票率が高くなる→野党躍進、は成立しない

民主党が政権を取った時も、投票率が高くなったから、民主党が政権を取れたのではなく、民主党を支持する有権者が今よりもはるかに多かったから民主党が政権を取れた

民主党が政権を取った時の選挙前の政党支持率NHK世論調査で30%近くだったのに対して、今の立民の支持率は6%、民民の支持率は1.5%くらいしかない

自公政権を倒すには、野党を支持する人々を増やすしか方法はない

 

 このコメントで正しいのは、最初の

マスコミの選挙予測はサンプリング調査でやっている。そして高い精度で的中させている。で、サンプリング調査は無作為に投票に行く人々、行かない人々を対象にしてる。

というところまでに過ぎない。そこからあとは問題だらけのコメントだ。

 最初の部分については、三春充希氏の著書の影響などもあるのか、このような認識がようやく行き渡り、今回は山本党(元号党)が2議席を獲得したこともあって「不正選挙」の連呼がほとんど見られないのは良いことだ。

 しかし、そのあとの部分は、まず私が書いた記事の意図を無視しているし、論理も間違っている。

 

ってことは投票行っていない人々も傾向はあまり変わらないってこと。つまり、仮に投票率が100%だったとしても、結果は殆ど変わらない

 

 上記の「殆ど変わらない」は「あまり変わらない」の間違いだ。そして私は、その「あまり変わらない」うちの「変わる」部分を問題にした。具体的にいえば、各政党には固定票と浮動票の比率があり、自民党立憲民主党公明党共産党と比較して浮動票の占める比率が高い。従って獲得議席投票率の影響を受ける。現に、自民党立憲民主党も、比例区の獲得議席は各メディアの情勢調査結果の予想の下限値近く、または下限値そのものだった。

 コメント主は

勘違いしてる左派が多いけど、野党を支持する有権者が増える→投票率が高くなる、は成立するけど、投票率が高くなる→野党躍進、は成立しない

と書いているが、私の記事のミソは「投票率が低くなったことによって、1人区の接戦区で自民党候補が負けた」という指摘だ。つまり、「投票率が高くなる→野党躍進」などとは最初から言っていない。それどころか、「安倍晋三が『投票率を下げて立憲民主党議席を抑えようとしたら、地方の1人区において、もっと参院選に関心が持たれていれば自民党候補に投票したであろう浮動票が寝てしまって、メディアの各種調査で『接戦区』とされた選挙区をことごとく落とす結果になった」と指摘したのだ。そういう論旨の記事を書いたのに、なぜこのような頓珍漢なコメントを送ってくるのか。コメント主のあまりの読解力の低さに呆れてしまった。

 なお私は「維新はもはや浮動票ではなく固定票に頼る政党になりつつある印象だ」と書いた。同様の指摘を『広島瀬戸内新聞ニュース』(7/23)がしている。

 

hiroseto.exblog.jp

 

投票率でも維新は議席を伸ばした。
維新は固定票政党化した。


組織政党ではないが、「公務員を叩きさえすれば日本はよくなる、大阪はよくなる!」と考えている方々の安定的な受け皿になっている。

 

特段、維新が選挙運動をしないでも「公務員をぶったおせ!」と考えている方々は維新に投票する人がかなりの割合、おられるだろう。


ちなみに、最近の共産党は意外と浮動票政党で、投票率が下がったからと言って必ずしも有利になるとは限らない。


比例区の個人票も、市議選でも候補により結構得票に差がある。

公明党と違い、自分で考えて行動する人が多い証拠だ。

今回は無党派の中で若手の共産党シンパが山本太郎(99万票を獲得)に流れた。

身の回りでもそういう現象はあった。

山本太郎に京都や大阪、神奈川などで共産党選挙区候補を応援してもらうお礼の意味合いもあったろう。

(実際、全年代で共産党山本太郎の支持率合計はあまり変わらない。若手ほど柔軟に山本太郎に流れた。)

 

出典:https://hiroseto.exblog.jp/28477822/

 

 実際には共産党の得票率は2017年の衆院選とほとんど変わらないが、2016年の参院選と比較すると大きく下げている。また立憲民主党と国民民主党の得票率合計は2016年の参院選とほぼ同じだ。前回と今回の参院選の得票率比較は、下記日経記事に示されている。

 

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO47633400S9A720C1PP8000/

 

投票率参院比例で各党得票減らす 公明は27年ぶり600万票台

2019/7/22 18:00 (2019/7/22 18:43更新)
 

総務省が22日発表した参院選比例代表の開票結果によると、19議席を獲得した自民党の得票は1771万票で、前回2016年参院選から240万票減った。投票率が24年ぶりに40%台に低迷し、多くの党が得票数を減らしている。

自民党の前回の得票数は15年ぶりに2000万票を超える2011万票だった。今回の得票率は前回より0.54ポイント低い35.37%だったが、獲得議席は変わらなかった。

公明党は653万票で、前回の757万票から100万票以上減った。得票数が600万票台となるのは1992年以来27年ぶりだ。獲得議席は前回と同じ7だった。

8議席立憲民主党は791万票、3議席の国民民主党は348万票だった。両党の合計は1139万票で、民進党として戦った16年参院選の1175万票に迫った。得票率の合計は民進党時の前回の20.98%から22.76%に上昇した。

日本維新の会は490万票だった。おおさか維新の会だった前回の515万票より減ったが獲得議席は4から5に増えた。共産党は前回参院選で安全保障関連法の廃止を掲げて601万票を集めた。今回は明確な争点がなく448万票にとどまり、獲得議席は4だった。

れいわ新選組では山本太郎代表が他党も含めた比例代表の個人票でトップの99万票を得た。合計で228万票となり2議席を得たが、特定枠の候補2人が優先して当選するため山本氏は落選した。社民党は104万票で1議席を守った。NHKから国民を守る党は98万票を集め、1議席を獲得した。

 

日本経済新聞より)

 

 上記日経記事は、維新や共産などの得票率については数値を示しておらず、画竜点睛を欠いているので、以下に補足する。

 2016年参院選と2019年参院選で、各党の得票率は下記の通り。旧民主系支持者の方には申し訳ないが、議論の都合上、立民と民民は「民進」表記で一括りにした。

 

党派 2016年 2019年

自民 35.91% 35.37%

民進 20.98% 22.76%(注:2019年は立民と民民の合計)

公明 13.52% 13.05%

維新  9.20%  9.80%

共産 10.74% 8.95%

社民  2.74%  2.09%

山本  1.91% 4.55%(注:2016年は生活の党と山本太郎となかまたちの得票率)

 

 上記でみる通り、自民党投票率が下がった今回、前回参院選より得票率を減らした。この3年間で安倍晋三によるメディア支配が随分進んでメディアから政権批判が聞かれなくなるとともに、安倍内閣支持率や自民党政党支持率が上昇したことを思えば、実際には上記に見られる数字以上に、安倍晋三が「参院選隠し」を行って浮動票を寝かせたことがブーメランとなって自民党の「接戦1人区」の得票に打撃を与えたであろうことは容易に推測できる。オール民進(立民+民民)は得票率を増やしており、立憲民主党結党の効果はまだ若干残っているようだが、一昨年の衆院選の時と比較すればその効果は随分薄れた。一方、維新の得票率は増えており、それにはもちろん先の大阪ダブル選挙勝利の余勢もあるだろうが、維新の票自体が固定票と化しているとの仮説も有力とみられる。また山本太郎は、小沢一郎の配下にあった2016年と比較して飛躍的に得票率を伸ばした。共同通信朝日新聞参院選後に行った世論調査では政党支持率は1〜2%程度だが、それでも共同の調査では(有意差があるとはいえないが)山本党が小沢が在籍する国民民主党を上回っている(山本党2.2%、民民1.7%。なお朝日の調査では両党とも1%)。存在感がほとんどなくなった小沢は、次の衆院選には出馬せず引退すべきだろう(笑)。

 ついつい小沢の悪口に話が逸れたが、共産党についていえば、2017年衆院選で同党は浮動票部分を立憲民主党に大きく食われて得票率を落としたが、今回の参院選ではその部分の大半が山本党に流れ、共産党には戻ってこなかったと考えられる。

 なお、上記の表で投票率が下がったのに公明党比例区得票率が下がっており、一件奇異な印象を受けるが、これは例の「比例区公明党」という毎回行われる自民党得意のバーターが、自民支持層が寝てしまったせいで削られてしまったのか、それともあまりにも安倍自民べったりの公明党に一部の創価学会員が造反を起こしたものか。おそらく前者だろう。なぜなら東京選挙区で公明党山口那津男は2013年より得票を増やしており、山本党から立候補した創価学会員の野原善正に票を食われた形跡は見られないからだ。今回の参院選で、山本太郎は保守票まで食うことはできなかったとみるべきだろう。

 結局山本党が立民や共産など従来の野党から票を奪って2議席を得たことは間違いない。

 しかしここで忘れてはならないのは、票を奪ったといっても小選挙区での野党票の共食いによって自民候補を当選させたのでは全くないということだ。あくまで比例区内の話なのだから、いまや(「野党共闘」には加わっていないとはいえ)野党の一員となった山本党を含めた「オール野党」の議席数には変わりがない。おそらく立民と共産が比例区で山本党に1議席ずつ食われたと見るのが正しいだろうと私は考えているが、逆にいえば比例代表制のおかげで立民や共産の「被害」はその程度で済んだのだ。だから立民や共産の支持者が「山本太郎に票を食われた」と言ってヒステリックになるのは被害妄想でしかない。私など、立民や共産の支持者は選挙制度を理解していないのかと腹を立てている。むしろ東京選挙区で立民は2議席を得るチャンスを山本太郎にもらったようなものだったのであり、それを活かせずにみすみす音喜多駿ごときに議席を献上した責任の重さを痛感するとともに、敗因の徹底的な分析と総括を行わなければならない。

 もっとも、次の衆院選で「野党共闘」と山本元号党がともに小選挙区に候補を立てたりすれば共倒れになって自民党を助けることになるから、今後立民・共産を軸とした「野党共闘」と山本党とが協議に入らなければならないことは当然だ。但しその際には「おいしい選挙区」の候補はことごとく立民に持って行かれることは間違いない。そうしなければ野党の議席は大きく減ってしまうからであって、そうせざるを得ない原因は小沢一郎が導入させた衆院選小選挙区制にある。こう考えると、小沢の存在感が急速に消えつつある今、従来は小選挙区制支持の立場にあったはずの山本太郎や立民・民民は、今後は選挙制度の再改変を目標とする方向へと転換しなければならない。それが議論の当然の帰結だ。私はこのように堅く信じる。