kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

小沢一郎と嘉田由紀子が「脱原発」に冷水を浴びせた

佐川光晴という人がこんな記事を書いている。この作家のことはほとんど知らなかった。


民主党と日本未来の党の失敗から学ぶべきこと(1/3) | JBpress(日本ビジネスプレス)


記事には賛同できる部分とそうでない部分がある。たとえば、この人は自らと民主党を「中道左派」と位置づけているが、私は民主党は保守勢力であり、自民・民主は「保守二大政党」であると以前から考えている。だが、佐川氏が引用している宇野重規東大教授の発言(昨年12月18日付毎日新聞に掲載)には同意する。以下引用する。

宇野氏  自民党がここまで増え、民主党が50議席台まで落ち込むというのは予想外だった。勝ち馬に乗ろうという流れが加速したのが印象的だった。選挙結果を全体として見ると、「中道左派の壊滅的な後退」というのが私の印象だ。世界的に、平等を志向する中道左派に行き詰まりが見えるが、日本は持ちこたえるどころか、壊滅的になった。社民党共産党だけでなく、民主党も左派系議員が落選した。代わって、ある種のナショナリズム勢力が大きく伸び、新自由主義の傾向がはっきり出た。今後、中道左派勢力に支持が戻ってくるのかそれともこの流れが続くのかが、私の最大の関心事だ。


佐川氏の記事で、日本未来の党(現在の政治団体ではなく、かつて存在した同名の政党)についての論評にはほぼ全面的に同意できる。以下引用する。

(前略)2012年12月28日には「日本未来の党」が分裂した。

 〈小選挙区で約299万票、比例で約342万票を獲得した「日本未来の党」が投開票日から10日あまりで分裂した。(中略)小沢一郎氏が嘉田由紀子滋賀県知事を選挙用の看板として担ぎ出したあげく、選挙が終わるやいなや追い出した。嘉田氏が揚げた「卒原発」に寄せられた民意は宙に浮き、国民の政党政治への不信を一層深めそうだ。〉

〈工藤泰志・言論NPO代表の話 民主党離党者の延命のため、国民の原発に対する不安を利用したような党だった。党内のガバナンス(統治)も政策もあいまいで、「掛け逃げ」みたいな党だと有権者も気づいたから、選挙で勝てなかった。ただ、分党した小沢代表側が政党交付金まで受け取ったのは、新党を活用した集金ゲームに思える。これが常用化すれば、有名人を広告塔で党首にして政党交付金を増やすことも可能になる。〉

 2つの記事は、いずれも2012年12月29日の毎日新聞から引用した。社会面には、〈28日夜、首相官邸であった「脱原発」を訴える抗議行動の参加者からは「裏切られた」「がっかり」といった声が相次いだ。〉との記事も掲載されている。

 私は、日本未来の党」の結党と分裂の騒動で、小沢一郎氏の政治生命は遂に終わったと思う。

 8億6500万円もの政党交付金のほぼ全額を手にするというが、今回の厚顔無恥な振る舞いは、小沢氏が訴えられていた土地購入代金の疑惑による裁判よりも余程大きく自らのイメージを傷つけたのだから、まず再起不能だろう。事実、小沢氏が開いた新年会に現役の国会議員は13人しか集まらず、影響力の衰退が明らかになったのと報道が年明けの紙面にあった。

 「日本未来の党」については、私は当初からまったく馬鹿馬鹿しいと思っていた。しかし、昨年11月27日に嘉田滋賀県知事が「卒原発」を旗印にした新党の結党を表明すると、「脱原発」を唱えていた多くの著名人が大いに評価するコメントを次々述べて、新聞の紙面を賑わせた。

 それが衆院選の敗北を受けて、結党からわずかひと月で分裂するというお粗末ぶりである。こうした結果に至ったことについて、「日本未来の党」を支持した「脱原発」派の著名人から反省の言葉が語られたのを、寡聞ながら私は聞いていない。

 彼等の軽率かつ能天気なコメントが新聞に大々的に掲載されなければ、小沢一郎氏が「泥棒に追い銭」のようにして掴む8億6500万円もの政党交付金は少しは減っていたわけで、私としてはぜひ紙面を割いて責任を検証してもらいたいと思っている。

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 我々はいつまで裏切られたり、がっかりさせられたりを繰り返すのだろうか。

 小沢一郎氏にまんまと騙された嘉田知事と、嘉田知事を信頼して彼女と諸共に小沢一郎氏に騙された有権者とでは、当然ながら嘉田知事の方が責任は重い。現に嘉田知事の信用は失墜しているようだし、琵琶湖の環境保護に取り組んできた長年の研究活動にも自ら泥を塗ることになってしまった。

 政権交代さえなされれば何もかも上手くいくかのごとく人々に語った民主党は、3年半の与党暮らしの間、国民に失望しか与えなかった。

 そして、良識派と目されていた女性知事までもが、まさに浮かれたとしか言いようのない軽挙妄動によって、「脱原発」の流れにブレーキをかける選挙結果を導き出すのに一役買う結果になってしまった。

 われわれは、民主党日本未来の党の失敗から多くを学ばなければならない。あまりに高すぎる授業料だったが、左右を問わずバラ色の夢を語る政治家や政党は信用に値しないということははっきりしたはずである。

 それにしても、せっかく政権を担当しておきながら、民主党のリーダーたちはついに貫禄を身につけることがなかった。鳩山、菅、野田と1年ずつしか首相を務めていないのだから無理もないが、彼等は物事が思いどおりに運ばない時に他人のせいにするという共通の心象があったように、私には見えた。

 対して松井秀喜は、と名前を挙げるのも申しわけないが、奇しくも日本未来の党が分裂したのと同じ日に引退を表明した松井秀喜は初めて甲子園大会に出場した高校2年生の夏から、すでに覚悟を内に秘めていた。傑出した打者として一挙手一投足に注目が集まり、活躍すれば賞賛の声を、チャンスで凡打に終われば罵声を浴びせられる日々にどう耐えていくのかを真剣に考えていたはずだ。

 以来20余年、松井秀喜を応援しながら、我々も野球と野球選手について多くを学んだ。どんな状況でもフルスイングをする勇気。会心のホームランを打ってもハメを外さない自制心。なにより、万全の体調で試合に臨み続けるスタミナに感心し、自分も頑張ろうと思ってきたはずだ。

 政治家の活動はスポーツ選手のように分かりやすくはない。しかし、われわれは自民党から民主党へ、そしてまた自民党へと移った政権交代の劇を目の当たりにしながら、政治家として信用に値しない振る舞いとはいかなるものかを、実地に学んだと思う。

 その意味で、この5年ほどの年月は最高の政治教育だったのではないかと私は考えている。「中道左派」の方々の中には、安倍総理の再登板に落胆している方も多いだろう。しかし、自らの思惑が外れた時にそれを他人のせいにするのか、それともある必然によってもたらされた結果だと受け止めて、事態を打開するために地道な努力を積み重ねるのかが勝負の分かれ目なのだと私は思う。

 小沢一郎は「豪腕」や「強面」と呼ばれて、鳩山由紀夫は「宇宙人」、菅直人は「イラ管」とあだ名され、野田佳彦は自ら「どじょう」と名乗った。いずれも貫禄からは程遠いニックネームで、今さらながら情けない。しかし、石原慎太郎橋下徹のように、自己顕示欲ばかり強いのも困りものである。

 なにやらダメ出しばかりになってしまったが、「中道左派の壊滅的な後退」を受けて、社会的な平等を求める勢力をどう築き直していくのか、私も本気で取り組んでいこうと思っています。


最後の松井秀喜のくだりは、「ノモ(野茂英雄)マニア」にして、「野茂>イチロー>>松井秀」というひいきの順番である私としては共感できないが、「脱原発」を集票に利用しようとして大惨敗を喫した日本未来の党及び小沢一郎嘉田由紀子のみならず同党を応援した連中に対する批判には大いに共感する。

特に、ここまであまり語られてこなかった「日本未来の党」応援団の責任を指摘しているくだりは腑に落ちた。この記事を読んで直ちに連想したのは、マスコミでは東京新聞、応援団の有名人では金子勝坂本龍一だ。

結局、脱原発政治勢力及び議席の延命に利用しようとした「日本未来の党」は、今でも国民の多数を占める「脱原発」に冷水を浴びせる結果となった。だが、有権者は「脱原発」を否定したのではない。「脱原発」を利用しようとした「日本未来の党」やその候補者たちを否定したのだ。落選したあと、ネットの「小沢信者」だけならまだしも、落選した候補者自身が「不正選挙」がどうのといった妄言をネットに垂れ流している醜態を見て、私は、ああ、こんな連中が当選しなくて良かった、日本未来の党が惨敗して良かったと心から思った。

小沢一郎嘉田由紀子はもちろん、東京新聞金子勝坂本龍一ら「日本未来の党」の応援団たちも今回の選挙結果についての総括をすべきではないか。