日曜日の朝日新聞には、隔週で星浩のコラムが掲載される。たいていはつまらない文章であり、今回も例外ではなかった。ただ多少興味を引かれるところがあったので少し触れる。
http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201306010537.html
(日曜に想う)「9条と96条」自民の深い溝 特別編集委員・星浩
「私が1986年に初当選した時、自民党の幹事長だった金丸信先生は、こんな話をしていた。『自民党は政権与党だからもっている。与党でなくなったら、あっという間に瓦解(がかい)してしまうだろう』と。もっとも、金丸先生は『瓦解』なんてい…
(朝日新聞デジタル 2013年6月2日)
このコラムで自民党の政治家を「9条解釈改憲派」と「96条改憲派」に分けて、前者は親米で石破茂が代表格、後者は「離米」で安倍晋三を代表格としている。これは妥当な見方といえるだろう。星は後者について、
底流には「米国から押しつけられた憲法体制からの脱却」という考え方がある。「米国と距離を置く(離米)自主憲法路線」とも言える。
と書いている。
この記述から直ちに連想されるのは、そう、あの孫崎享である。星浩とよく似た立場をとる毎日新聞の岸井成格が最近、慶大卒同士で仲が良いらしい佐高信(これを書いている今、たまたま『サンデーモーニング』でしゃべっている)とつるんで孫崎享を批判しているが、星も孫崎を念頭に置いて書いたのではないか。
佐高や岸井(もしかしたら星もか?)の孫崎享批判には一定の理があって、孫崎が称賛する岸信介を筆頭にする「自主独立派」とは、「米国から押しつけられた憲法体制からの脱却」を目指す政治勢力にほかならない。やはり孫崎が称賛する小沢一郎は、最近、「自民党は9条改憲がやりたいだけだ」などと、あたかも主権在民を否定するような自民党の改憲案に問題意識を持たないかのような発言をして、ネットにおける小沢一郎の支持者からも疑問を呈されているありさまだが、小沢の本心が実は安倍晋三らに近いものだと仮定すればこの矛盾は説明できる(笑)。「小沢信者」を相手に商売をしている孫崎にとってはそれでは都合が悪いから、「安倍晋三は実は『従米派』だ」ということにしてしまっている。
ところで、星浩のコラムで甘いと思ったのは、
安倍首相はジワリと集団的自衛権派に軸足を移してきたようにみえる。
と評していることだ。安倍晋三は根が正直な人で、アメリカの圧力を受けて主張が封じられることにおとなしく黙っていられる性格ではない。だから少し支持率が上がると、気を良くしてすぐに歴史修正主義的な本音を口にするのだ。既に何度も同じパターンの失敗を繰り返している安倍晋三の生態が星浩にはまだ理解できていないのかと唖然とした。
ところで星浩が書く「離米」派は、「親米」派の主張、すなわち「集団的自衛権の政府解釈見直し」にももちろん賛成しているが、それにとどまらず、主権在民の理念を否定して「戦前の日本をトリモロス」ことを目指すという特徴がある。つまり、「親米」に立脚している2階建ての2階部分が「離米」ないし「反米」という、自己矛盾を抱えているのである。
愚かなことに、彼ら「自主独立派」(笑)は、自分たちがアメリカに嫌われるだろうなどとは露ほどにも思っていない。自らの自己矛盾に全くの無自覚なのである。だから、いざアメリカから批判されると、今回の安倍晋三と橋下の例に典型的に見られるようにあわてふためくのだ。
自分では「穏健保守」のつもりでいる自民党支持者に自覚してもらいたいのは、安倍晋三ら自民党の「自主独立派」は世界標準(グローバルスタンダードw)で見ると「極右」以外の何者でもないことだ。安倍晋三を総理大臣に選んでしまった自民党からは、リスクを回避する能力が既に失われてしまっている。自民党には全く期待できないから、せめて自民党支持者に安倍晋三を下ろす圧力をかけてもらいたいと思う次第である。
安倍晋三を総理大臣の座から引きずり下ろすことなくして、日本の未来はない。