kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

東電福島第一原発事故でのドライベント準備は公知だよ

朝日新聞が、東電福島第一原発の事故の件で、故吉田昌郎福島第一原発所長から政府事故調が聴取した調書(「吉田調書」)の内容を入手したとして「スクープ」記事を連発しているが、今朝(5/21)の目玉記事は下記。

http://www.asahi.com/articles/DA3S11146641.html

ドライベント、福島第一3号機で準備 震災3日後、大量被曝の恐れ 吉田調書で判明

 東京電力が2011年3月14日、福島第一原発3号機で高濃度の放射性物質を人為的に外気に放出するドライベントの準備を進めていたことが分かった。国はこの時、混乱を避けるため3号機の危機を報道機関に知らせない「情報統制」をしており、多数の住民が何も知らないまま大量被曝(ひばく)する恐れがあった。当時の吉…

朝日新聞デジタル 2014年5月21日05時00分)

あれっ、と思った。というのは、東電がドライベントをしようとしていたというのは初耳ではなかったからだ。調べてみると、3号機ではなく2号機の話だったが、やはり過去に報じられていた。

福島第1原発:放射性物質を多量に放出したのは2号機のドライベントであった可能性? | EXSKF-JP(2012年3月8日)より

(前略)産経新聞の2011年3月21日付けの記事によると、東電は2号機のドライベントを3月16日から17日の間に行った、としていたものの、21日に訂正し、ドライベントは3月15日の午前0時から数分行った、とあります。

このドライベントが実際に行われたのかどうか、内閣の事故調査委員会の中間報告で当該部分をさがして見ました。

IV 東京電力福島第一原子力発電所における事故対処 228ページ以降に、2号機の格納容器ベント実施状況が記載されています。231ページ、232ページに、3月15日午前0時前後の対応が次のように記載されています:

(5) この頃、吉田所長は、2号機について、D/W圧力計及びS/C圧力計の指示値によれば、S/C 圧力がラプチャーディスク作動圧(0.427MPa gage=約0.528MPa abs)よりも低い一方で、D/W 圧力が上昇しているため、D/W 側の原子炉格納容器ベントラインを構成しなければ、D/W の圧力が上昇して原子炉格納容器が破壊されると考えた。もっとも、この点について、実際のS/C 圧力は、S/C 圧力計が指し示す値よりも実際には高かったものの、原子炉格納容器ベントライン(S/C側)にあるS/C ベント弁(AO 弁)の開状態を維持できなかったが故に、ラプチャーディスクが破壊されなかった可能性も十分考えられる。

 いずれにせよ、3月14日23時35分頃、吉田所長は、テレビ会議システムを通じて、本店対策本部とも相談の上、2 号機のD/W ベント弁(AO 弁)小弁の開操作を行い、D/W ベントの実施を決めた。

 原子炉格納容器ベントラインは、原子炉格納容器外に出る配管が、それぞれD/W 側とS/C 側に分かれているものの、途中で両配管が合流し、原子炉格納容器ベント弁(MO弁)のある配管を通って排気筒から大気中に排出する構造となっていた(資料?-24 参照)。

 そのため、D/W側の原子炉格納容器ベントラインを構成するには、この時点で、原子炉格納容器ベント弁(MO弁)が既に開となっていたため、D/W ベント弁(AO弁)の大弁か小弁のいずれかを開とすればよかった。

 また、D/W ベントは、S/C ベントと比べ、サプレッションプール内の水を通さずに、放射性物質で汚染された気体を大気中に放出するため、S/C ベントを優先することとされていたが、吉田所長は、D/W 圧力が上昇し原子炉格納容器破壊の危険があるためやむを得ない措置と考え、2 号機のD/W ベントの実施を決断した。

 また、本店対策本部も吉田所長と同様の考えであり、異論を唱える者はいなかった。

(6) 3 月15 日零時過ぎ頃、発電所対策本部復旧班は、1/2 号中央制御室において、2 号機のD/W ベント弁(AO 弁)小弁の電磁弁励磁を実施して開状態とし、2 号機T/B大物搬入口内側に設置していた可搬式コンプレッサーから送られる空気によってAO 弁を開いて、ラプチャーディスクを除く原子炉格納容器ベントライン(D/W 側)を構成した。しかし、その後数分以内にD/W ベント弁(AO 弁)小弁が閉であることが確認された。

 その後も、2 号機について、D/W ベント弁(AO 弁)小弁の開操作を実施したが、D/W 圧力計によれば、同日7 時20 分頃に至ってもなお0.730MPa abs を示すなど、D/W 圧力は0.7MPa abs 台を推移し、顕著な圧力低下傾向が認められなかったため、D/W ベント弁(AO 弁)小弁の開状態を維持することはできなかったと推認される。

(7) 結局、2 号機については、S/C ベント及びD/W ベントの実施を試みたが、これらのベント機能が果たされることはなかったと考えられる。

東大の研究者の論文の記載と政府の事故調査委員会の中間報告のどちらも正しいとすると、「ドライウェルのベント弁小弁を開けてベントラインを構成してベントを試みたものの、数分以内にその弁が閉じていることが確認された、ドライウェルの圧力は低下傾向が認められなかったため、ベント機能は果たされなかった」、と政府事故調査委員会が判断したそのベントによって、原発正門の空間線量が1万2千マイクロシーベルトに跳ね上がったことになります。(後略)

このように、2号機と3号機の違いはあるものの、東電が福島第一原発でドライベントをやろうとしていたことは、過去に報じられているばかりか、政府事故調の中間報告で既に明らかにされていたのだった。

この件に限らず、今回の朝日の「スクープ」、羊頭狗肉の感が否めない。