kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

宇沢弘文死去

経済学者の宇沢弘文氏が9月18日に死去していた。

http://mainichi.jp/select/news/20140926k0000m040147000c.html

訃報:経済学者の宇沢弘文さん死去86歳…消費社会を批判

 東大名誉教授で世界的な経済学者である宇沢弘文(うざわ・ひろふみ)さんが18日、肺炎のため死去した。86歳だった。葬儀は親族で営んだ。喪主は妻浩子(ひろこ)さん。

 1951年東大理学部数学科卒。経済学に転じ、56年に渡米、58年に米スタンフォード大経済学部助手となり、のち助教授、准教授。カリフォルニア大経済学部助教授、シカゴ大教授を経て、69年から東大経済学部教授。80〜82年に学部長を務める。83年に文化功労者、97年に文化勲章受章。数理経済学の分野で多くの実績を上げ、新古典派経済学の発展に大きな影響を与えた。

 しかし、70年代以降は市場原理優先の新古典派理論を批判する立場に転換。環境保全への視点から生産、消費優先の先進国の在り方に疑問を呈してきた。二酸化炭素の排出に対し、国民所得に比例した「炭素税」を各国に課すことも提案。東大教授時代は、電車や車を使わず、自宅からジョギングで通っていた。

 一時は、ノーベル経済学賞に最も近い日本人学者といわれた。

 東日本大震災直後の2011年3月21日、脳梗塞(こうそく)で倒れ、その後、自宅などでリハビリを続けていた。

 主要著書に「近代経済学の再検討」「自動車の社会的費用」「地球温暖化の経済学」「社会的共通資本」などがある。

毎日新聞 2014年09月26日 02時31分(最終更新 09月26日 03時25分)


このうち、『自動車の社会的費用』と『社会的共通資本』は読んだ。


自動車の社会的費用 (岩波新書 青版 B-47)

自動車の社会的費用 (岩波新書 青版 B-47)


社会的共通資本 (岩波新書)

社会的共通資本 (岩波新書)


http://mainichi.jp/select/news/20140926k0000m040145000c.html

宇沢弘文さん死去:数理経済学で実績 温暖化防止訴えも

 18日に亡くなった文化勲章受章者の宇沢弘文・東大名誉教授は、マクロ、ミクロ両経済学の分野で先駆的な業績を上げ、世界計量経済学会会長を務めるなど、世界的な経済学者として活躍した。同時に環境破壊など現代文明に対する鋭い批判者としても知られ、地球温暖化防止などを訴え続けた。

 宇沢さんは1951年に東大理学部数学科を卒業。生命保険会社に一時勤務したが、経済学に転じ、渡米。スタンフォード大で助教授、准教授を歴任。カリフォルニア大経済学部助教授、シカゴ大教授を経て、69年から東大経済学部教授となった。

 50年代から70年代にかけ、数理経済学の分野で数多くの実績を上げた。特に高い評価を受けたのは、消費財と資本財の2部門の成長モデルの構築。農業と工業が成長を遂げるため、土地、資本、労働など生産要素が部門間でどう移動すればいいかを理論的に実証した。

 しかし70年代以降は、次第に市場原理を優先する現代新古典派理論に疑問を抱き、同理論を激しく批判する立場をとった。公害など環境問題に対応できていないという不満からだった。地球温暖化など環境問題への発言は多く、生産、消費優先の先進工業国のあり方に疑問を投げかけた。

 90年8月には、毎日新聞のインタビューに対し、「石油、石炭をふんだんに消費し、環境保護の費用を出し惜しんできた工業文明のツケが、今、私たちに回ってきている」とし、「将来の世代と開発途上国に負担を肩代わりさせないよう、生産、消費のコストに温暖化を減らす費用を急ぎ組み込まねばなりません」と語った。当時、宇沢さんが提唱した「炭素税(カーボン・タックス)」を世界各国に課すというアイデアは、その税収で大気安定化国際基金を設け、発展途上国の森林作りなどに役立てるという狙いだった。そうした環境面での国際貢献で日本が先頭に立つよう、強く訴えた。

 企業活動と環境保全をどう両立させるかについて、宇沢さんは「経済成長率が高いということは、地球の温暖化や日本の経済摩擦のような好ましくない問題を引き起こす。本来なら経済成長率は低いほど望ましい」とさえ述べていた。

 97年に地球温暖化防止に向け、京都議定書が締結され、先進国が温室効果ガス削減目標を定めたが、日本で官民による環境保全の流れを作る上で、宇沢さんの主張は大きな影響を及ぼした。

 近年は、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の反対運動に携わり、日本の農業保護などを訴えていた。

毎日新聞 2014年09月26日 07時10分


経済学の門外漢である私は、むろん一般向けの本しか読んだことがないが、宇沢弘文にはジョン・K・ガルブレイスと似た印象がある。ともにヴェブレンから影響を受け、ミルトン・フリードマンとは激しく対立関係にあった。宇沢弘文フリードマン嫌いは筋金入りで、フリードマンの死を大いに喜ぶ言葉を妻と交わしたことを、自らあけすけに書いている。



ただ、上記の本にも出てくるし、ネットでもフリードマン嫌いの人たち(私もフリードマンは大嫌いだが)がよく引き合いに出す、「フランク・ナイトがフリードマンを破門した」という話は、宇沢弘文以外の情報源が見つからないので、信憑性に乏しいと私は思っている。それくらい宇沢弘文フリードマンが大嫌いだったということで、「稚気愛すべき」とは思うが、真に受けるのは禁物であろう。

宇沢弘文の生前最後に見た新聞記事は、前にも書いたが、昨年12月8日の朝日新聞読書欄に載った、同紙特別編集委員・山中季広によるインタビュー記事だった。


たまたま私は、この記事が載った前日に、前述の『経済学は人びとを幸福にできるか』*1を読み終えたばかりで、この記事で初めて宇沢氏が脳塞栓で倒れていたことを知ったのだった。それ以来、宇沢氏の体調の回復を願っていたが、かなわなかった。

故人のご冥福をお祈りする。

*1:山中季広が書いた記事にもある通り、この本は書き下ろしではなく、2003年に刊行された『経済学と人間の心』に講演録を加えたものである。目障りな池上彰の序文がついているのも難点だ。