kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

「安倍批判」を自粛する新聞。これでは「報道の自由度」世界61位も当然

安倍晋三の「日教組」の野次で、かつての故ハマコー浜田幸一)の「みやざわけんじ君*1が人を殺した」発言を思い出された人が多かったようだ。

この発言が1988年の今頃の季節にあったことは覚えている。翌朝、「リベラル・左派」系とおぼしき3年先輩の同僚が「宮沢賢治は人殺しじゃない!」と言って怒っていたことを覚えている。ニュースで見た記憶もあるし(多分「ニュースステーション」だな)、翌朝の新聞で読んだ記憶もある。

そう、確かに新聞に載っていた。多分2面か、もしかしたら社会面だったが、「みやざわけんじ君」と、ひらがなだったカタカナだったかで表記されていた。朝日新聞だ。

しかし、安倍晋三の「日教組」の野次は、載らなかった。

朝日新聞デジタル」には、19日の夜遅くに載せた。「withnews」にリンクを張って。

首相、農相追及の民主議員にヤジ 「日教組どうするの」:朝日新聞デジタル

首相、農相追及の民主議員にヤジ 「日教組どうするの」

 安倍晋三首相が19日の衆院予算委員会の質疑で、西川公也農林水産相献金問題を追及する民主党議員に首相席からヤジを飛ばし、大島理森委員長からたしなめられる場面があった。

(withnews)【全文】首相、委員長巻き込みヤジの応酬

 民主党玉木雄一郎氏は質疑で、砂糖業界の関連企業から西川氏側への献金を「脱法献金だ」と主張。その直後、首相は「日教組どうするの」などとヤジを飛ばした。過去の日教組加盟組合による民主党議員への献金事件を指したとみられる。玉木氏は「日教組の話はしていない」と応酬。大島委員長が「ヤジ同士のやりとりをしないで。総理もちょっと」と双方を注意した。

 質問終了後、玉木氏は「首相席からヤジを飛ばすのをやめてほしかった」と記者団に語った。

朝日新聞デジタル 2015年2月19日22時39分)


しかし、20日付の朝刊には載せなかった。今日(21日)になって、前原誠司の質問を報じる形でようやく記事が載った。下記「朝日新聞デジタル」の記事は、紙面では、「衆院予算委員会 首相ヤジ飛ばす」「民主・前原氏が批判」という見出しがついている。つまり、紙面では安倍晋三の「日教組」野次の報道は今朝の朝刊が初出なのだ。なお、電子版では下記記事に岡村夏木記者の署名が入っているが、

http://www.asahi.com/articles/ASH2N544SH2NUTFK00M.html

「今後は静かな討論を」 首相、自らのヤジに

岡村夏樹

 安倍晋三首相が19日の衆院予算委員会の質疑で、西川公也農林水産相献金問題を追及する民主党議員に首相席から「日教組日本教職員組合)どうするの」とヤジを飛ばした。日教組民主党議員の関係を念頭においたものとみられる。

 民主党玉木雄一郎氏が19日の質疑で、砂糖業界の関連企業から西川氏側への献金を「脱法献金だ」との指摘した。その直後、首相がヤジを飛ばした。

 20日の同委では、民主党前原誠司元代表が「答弁席からヤジを飛ばすのは言語道断だ」と首相を批判。首相は「今後、静かな討論を心がけていかなければいけない」と応じた。大島理森委員長(自民)も「ヤジは抑制してほしい」と注文をつけた。(岡村夏樹)

朝日新聞デジタル 2015年2月20日18時52分)


野次なんて政策と関係ないじゃないか、と言って間接的に安倍晋三を擁護する向きには、下記渡辺輝人弁護士の記事を進呈する。

安倍君、言葉を慎みたまえ(渡辺輝人) - 個人 - Yahoo!ニュース(2015年2月20日

安倍君、言葉を慎みたまえ
渡辺輝人 | 弁護士(京都弁護士会所属)
2015年2月20日 12時23分

 いやー、昨今の国会の安倍首相の発言。酷いですね。酷いのに大手新聞があまり取り上げないのでいくつかピックアップして見たいと思います。

日教組日教組

 2月19日の民主党の玉木議員の国会質問。精糖業界が傘下に置いている会社を通じてTPP交渉直前に西川公也農林水産大臣の政党支部に100万円の献金をしていた問題についての質問をしていたようです。TPP交渉では砂糖を自由貿易の例外とするかが焦点となっており、法的には、業界団体が迂回献金をする手法を許して良いのかかが問題なのです。ところが、質問中、安倍首相が「日教組」「日教組どうするんだ」と繰り返し不規則発言をし、議長にすら「やや、総理、静かに」とたしなめられる始末。質問者の玉木議員、安倍首相が質問と関係ない不規則発言を繰り返しているので、ブチ切れてます。下記動画だと20:55のあたりから問題の場面になります。



 総理大臣は国会質問に答える側の人間なので、ヤジはもちろん、野党議員が質問中に逆質問をする行為自体が「質問を質問で返すなあーっ!」という例のマナー違反なんですが、さらに教職員組合の名前を持ちだして非難するセンスも総理大臣としては大変下品で、憲法で定められた首相の職責の重さに悖る行為だと思います。安倍首相の中では日教組という組織はショッカーみたいな悪の組織の象徴なのかもしれませんが、それを口にして相手を攻撃した気になるのは、ほとんどネット上の落書きレベルですね。

憲法9条はどこへ行ったのさ

 集団的自衛権に関する安倍首相の国会答弁も、もはや完全にぶっ飛んでいます。首相の答弁によると、ある国や勢力がホルムズ海峡に機雷を撒いたら、集団的自衛権を行使して、自衛隊が機雷を除去するんだそうですが(2月16日朝日)、その根拠は昨年7月の閣議決定にある「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合において、これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないときに、必要最小限度の実力を行使することは〜中略〜憲法上許容される」という文言のようです。

 この閣議決定自体が憲法違反であることはもちろんですが、安倍首相の答弁は、もはやこの閣議決定をダシにして、日本にとって何か不利益なことがあれば、自衛隊が同盟国と一緒に世界中どこでも武力行使できると言っているに等しく、そもそも憲法9条武力行使を禁止していることと全く矛盾する答弁になってしまっています。安倍首相は同盟国が他勢力に対して先制攻撃して、その勢力が反撃してきた場合には自衛隊が参戦可能だ、という答弁もしており(2月2日日経「同盟国先制でも「行使できる」 集団的自衛権で首相が見解 」)、これでは、平和憲法を持っている国が、かえって世界有数の好戦国になってしまいます。内閣総理大臣が負っている憲法尊重擁護義務を完全に逸脱しているように見えます。

憲法24条は変な厳格解釈して同性婚を否定

 一方、安倍首相は2月18日の国会答弁で「現行憲法の下では、同性カップルの婚姻の成立を認めることは想定されていない」と述べました(2月18日朝日新聞)。確かに憲法24条1項は「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。 」としていて、婚姻は「両性」(男と女)がするものだという文言に読めます。しかし、この規定の意味は、旧民法で結婚について親の許可が必要だったことを改め、カップル相互の同意のみで結婚できるようにしたことに意味があります。憲法は国民が国に対して有する権利の章典なので、憲法ができた当時、同性婚が想定されていなかったとしても、憲法同性婚を否定したり、抑制的な態度を取っているとは到底思えません。有名な憲法の注釈書を読んでも、憲法24条のところには「同性婚の許容性」という項目すら存在しません。許容されて当然だからです。また、フランスがそうだったように、同性婚を認める前に、まず、同性間でも異性間でも利用可能なパートナー同士の相互扶助契約を立法することも可能でしょうし、そういうことを日本国憲法は何も否定しないはずです。

 安倍首相の答弁は、憲法24条1項を「結婚は男と女しかできないんだ」という国民に対する義務規定だと捉えているようにも見えます。いずれにせよ、単に政策的にやりたくないだけのことを、日本国憲法のせいにする態度は法律家として許しがたいものがあります。

もっと批判を

 上記はわずかな例ですが、今のマスコミを通じた報道は、安倍首相の常軌を逸した言動を伝えなかったり、大きな問題はないものとして政治論争の範疇としてしか伝えない傾向があります。しかし、我が国は日本国憲法を根本規範とする法治国家です。首相が国会で責任を果たさず、憲法を逸脱する発言を繰り返していることについて、もっと公然と批判がされるべきだと考えます。


他にも、「安倍談話」有識者懇に16人 25日初会合、座長は西室氏内定 夏めど、首相報告(2015年2月20日)と題した記事でも、なんとかデジタルの登録者でなければ読めない部分に(私は登録していないが新聞本体の記事を転記している)「バランスを重視した人選」であるとの菅義偉の言い分をそのまま掲載している、といった「無批判報道」の例もある。実際には「安倍色」の極めて濃い人選であることはいうまでもない。

竹下内閣当時の1988年には衆議院予算委員会委員長の暴言を報じたのに、今では内閣総理大臣の下品な野次の報道も自粛する。

このていたらくでは、「報道の自由度ランキング」が世界61位でも、全く不当とはいえない。むしろもっと順位が低くても文句を言えないくらいだ。

*1:ハマコー宮本顕治氏を誹謗しようとして言い間違えたもの。