kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

「やっぱ大阪弁」? それとも神奈川方言?

ん、でも、やっぱり - Living, Loving, Thinking, Again(2015年4月4日)より

「全国大阪弁普及協会」*1によれば、「中高年は「やっぱし」、若者は「やっぱ」を使う」という。


うーむ。私は現在の中年が少年時代に使っていた頃の大阪弁*2しか知らないのだった。ちなみに、「やっぱし」は同世代に使っていた人間もいたけれども、私には違和感があった。また、言わずもがなだが、現在の中年が少年時代に使っていた大阪弁は、親(老人)世代の大阪弁とも異同がある。

リンク先の「全国大阪弁普及協会」によると、「やっぱし、やっぱ」について

矢っ張し。「やはり」「やっぱり」の転。「やっぱし」などの「り」が「し」になるのは江戸発祥の語だが、「さっぱし」「がっぽし」「きっかし」などとは言わない。中高年は「やっぱし」、若者は「やっぱ」を使う。下野で「まさか」、など。

と書かれている。しかし一方で、「り」が「し」に変化するのは、地方から東京に入ってきた言い方だとする人もいる。

http://www.sipec-square.net/~mt-home/alumni/ando/change2.html

「やっぱし」「やっぱ」は、「やはり」「やっぱり」に比べると「り」が「し」になり、さらにそれが脱落している。東京ではつい最近増えてきたので、ごく近来の表現と思われるが、実際はその起源はかなり古い。国語史の文献を見てみると、「やはり」は由緒ある言い方で、国語辞典によると中世からの用例がある。「やはり」の強めとして「やっぱり」も中世から使われていた。「やっぱし」は、京都の俳人安原貞室の著書によると江戸時代初期の子供達はすでに使っていたそうだ。一方、現代の方言会話の資料によると、東京の人も使うが、中部地方や西日本の方言では、老年層がさかんに「やっぱし」を使っている。このことから「やっぱし」も東京への逆流型と言える。さらにもう一段階変化した「やっぱ」も、江戸時代に例が見られる。各地方の会話を文字化した資料によると、老人の普段の言葉として「やっぱ」が聞かれる。これも、現在全国的に使われているものの、特に中部・関西地方で多く使われているそうだ。

「り」が「し」になるのは、これだけではない。東京でも地方でもこれに似た変化が一斉に起こっている。長年にわたり様々な文献から日本語の用例を集めてきた見坊豪紀氏によると、文献初出は1970年の「あんまし」「ぴったし」「にっこし」である。その後も「し」になったり、脱落したりする語の例は着実に増えているそうだ。(「はっきし」「さっぱし」「びっくし」など)このような語の変化は、語の最後でRの発音を怠って、声帯の動きをサボって声を出さずにしまうと、Sとそっくりの音になることから来る。その流れのせいか、「やっぱし」「やっぱ」等はいくら普及しても、俗語のレベルを超えることは当分ないと思われる。


上記の説は私の感覚とは全く合わない。「やっぱ」が関西の言葉はおろか、(たとえば)名古屋などの中部地方の言葉だといわれても全くピンとこない。「やっぱドラゴンズ(グランパス)だがや(だぎゃあ)」というのには、木に竹を接いだようなミスマッチを感じる。

この文章を見て思いついた仮説だが、「り」が「し」に変化したり音を省略したりする発音には俗語的な耳当たりがあるから、異物として排除したくなるという心理が、大阪(出身)の人にも東京(出身)の人にも働くのかもしれない。あんなのはもともとの俺たちの言葉じゃない、という感覚。だから、「全国大阪弁普及協会」が

「やっぱし」などの「り」が「し」になるのは江戸発祥の語

と書かれた言葉が、別の論者には

東京ではつい最近増えてきたので、ごく近来の表現と思われる

と書かれてしまう。

そんな嫌われ者(?)の「やっぱ」や「やっぱし」だが、ネットを見る限り神奈川・横浜の方言だとの説がかなり多い。

神奈川県方言 - Wikipediaによると、「神奈川県方言を使う作品など」の例として、

横浜西口振興協議会 - 横浜駅西口エリアのキャッチコピー「やっぱ、横浜西口じゃん。」

が挙げられている。

*1:http://www.osakaben.jp/

*2:のちに阪神間及び神戸市東部にも住んだが、このあたりは「大阪弁エリア」に含まれるらしい。