kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

ポール・クルーグマンと「リフレ派」と「リベラル」と

先日来書こうとしている文章の本論は、某所で目にした「左派・リベラルはなぜ安倍政権を倒せないのか?」という記事*1に対する批判なのだが、このところの猛暑(ここ数日は一段落しているとはいえ)で気力が減退している(その証拠に、土日に記事を格言気がなくなっている)ので、今日は本論までには行き着かないと思う。

今回は本論の前に、7月17日付の朝日新聞に掲載されたアメリカのリベラル派経済学者、ポール・クルーグマンのコラム「ギリシャ危機 米共和党は教訓として学べ」を取り上げる。手元にはコラムが掲載された当日の朝日新聞があるが、手抜きをして記事の要旨をまとめたブログ記事から引用する。

「ギリシャ危機 米共和党は教訓として学べ」(クルーグマン・コラム@NYタイムズ)17日朝日新聞 | 知的漫遊紀行 - 楽天ブログ(2015年7月17日)より

私:クルーグマン氏は、また、ギリシャ危機にひっかけて、共和党攻撃だね。
 米国で、ギリシャのような経済的大惨事を一番引き起こしそうな考えの持ち主は、まさに、ギリシャを脅しの材料として使いたがっている人々なのだという。

A氏:ギリシャの本当の教訓を理解するには、二つのきわめて重大な点を知ってもらう必要があるという。
 まず、「我々もギリシャになってしまう!」と主張する連中は、毎年毎年すべての予測で間違えてきた連中だということ。

私:次に、ギリシャは「お金を借りすぎて、その過剰債務により現在の危機が発生した」という話があるが、これにも、間違いがある。
 ギリシャの債務の水準は高いとはいえ、歴史的に見ればそれほど高くはなかった。
 ギリシャの債務トラブルが大惨事になったのは、巨額の債務を抱えた国がふつう行うことを、ギリシャはユーロの枷のせいでできなかったからだ。つまり、緊縮政策はとるが、それを金融緩和で相殺することができなかった。
 GDPが大きく減った大きな原因は、ギリシャの債権者から強要された緊縮政策だね。

A氏:しかし、緊縮財政は常に自滅を招くことはない。たとえば1990年代のカナダでは緊縮財政と金融緩和がセットで成功している。 
 残念ながらギリシャは、徹底的な緊縮財政を強いられたとき、もはや独自の通貨を持っていなかった。そのために経済崩壊が起き、債務問題をさらに悪化させることになった。言い換えると、ギリシャを大惨事に導いたのは、緊縮策ではなく、緊縮財政と金融引き締めという有害な組み合わせだったのだ。

私:共和党のほとんどの人たちはそのような有害な政策の組み合わせを、米国に押しつけたがっているとクルーグマン氏はいう。。
 一方で、共和党のほぼ全員が政府支出、特に低所得世帯への支援を減らすよう求めていて多くの共和党員は金本位制の復活を切望しており、そんなことをすれば我々は実質的にユーロのような拘束衣を着せられることになる。
 クルーグマン氏は重要なのは、もし本当に米国のギリシャ化を心配するなら、米国の右派に関心を払うべきだということだ。
 もし右派が、支出を大幅に削減する一方でそれを相殺する金融緩和をすべて阻止するという経済政策をやりたいようにやれば、事実上ギリシャ危機を招いた政策を米国に持ち込むことになるからであるという。


対話形式に書き換えられた上記記事が書くように、コラムでクルーグマンは緊縮財政と金融引き締めの併用を主張するアメリカ共和党の政策を批判している。

ところが日本で米共和党と似たような主張をするような人たちといえば、このコラムを掲載した朝日新聞毎日新聞の経済担当の論説委員民主党及び同党から分かれた生活の党と山本太郎となかまたちなどの政治家たちである。後者については、これから批判の対象にしようと思っているブログ記事「左派・リベラルはなぜ安倍政権を倒せないのか?」が下記のように書く通りだ。この部分に関しては私も異論はない。

ただ、1990年代の「非自民政権」を志向した政治家には小沢一郎細川護煕武村正義のような自民党出身者も多いのですが、彼らが財政再建を主張して消費税増税を画策し、インフレを恐れ、経済成長に無頓着であったことは、日本の「リベラル」を社会主義者の後継者にすることに大きく貢献してしまったと思います。彼らの後継者が今の民主党執行部であることを考えれば、この時代にインフレを許容して経済成長を追求する勢力を作れなかった(と言うか、そのような問題意識すら無かった)ことが、現代の「リベラル」を石橋湛山のような本来のリベラルと異なる物にしてしまった大きな要因だと思います。


興味深いことに、ことこの点に関しては小沢一郎の政敵である菅直人も、その意見は小沢一郎と何ら変わりなかった。それどころか、党内反主流派に転じた気楽さから消費税増税批判派に転じた小沢一郎に対して、強硬に消費税増税路線を採ったのが菅だった。クルーグマンが批判する

「我々もギリシャになってしまう!」と主張する連中

という言葉から、2010年、首相在任当時の菅直人を思い出したのは私だけではなかろう。

なお、このようにくどくどと書くのは、私が書く記事を「小沢対反小沢」の構図にねじ曲げたがる輩が後を絶たないからだ。もう数はすっかり減って「絶滅危惧種」になってはいるが。

小沢や菅の話はともかく、クルーグマンの記事に私は大いに溜飲を下げた。そして、朝日や毎日の経済記者はこのコラムをよく読めよ、と内心毒づいていたのであった。

しかし、私はこのポール・クルーグマンやジョセフ・スティグリッツなど、アメリカのリフレ派にしてリベラル系の経済学者たちの言い分には素直に耳を傾ける気になるのだが、日本の「リフレ派」の多くが書く文章には、正直言って共感よりも反感が先に立つのである。それはなぜか。

以降が本論になるのだが、もったいぶって今日はここで止めておく(笑)。