kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

英労働党党首に「反緊縮」のジェレミー・コービン氏

予想されていたことだが、イギリス労働党党首選で「反緊縮」を掲げるジェレミー・コービン氏が当選した。

http://www.asahi.com/articles/ASH9C6X97H9CUHBI01Q.html

労働党首に「反緊縮」急進左派 EU離脱に傾く可能性
ロンドン=渡辺志帆
2015年9月13日01時05分

 英国の最大野党・労働党の党首選で12日、急進左派のジェレミー・コービン氏(66)が新党首に選ばれた。保守党のキャメロン政権は2017年末までにEUからの離脱の是非を問う国民投票をする構え。コービン氏は候補者の中でただ一人、労働党の親EU路線の踏襲を明言しなかったため、EU離脱の可能性が高まるとの見方も出ている。

 党首選は、5月の総選挙大敗を受けてミリバンド氏が党首を辞任したことに伴うもの。「影の内閣」の閣僚3人も立候補するなか、コービン氏は有効投票数の過半数を得た。知名度が低かったコービン氏が支持を集めた背景には、キャメロン政権が進めてきた緊縮策に対する反発がある。投票できる党員や登録サポーターら約55万4千人のうち、総選挙後に加わった人の多くがコービン氏を推す左派支持者とみられている。

 EUは加盟国に対し、財政危機を脱するため、厳しい緊縮策を促している。コービン氏は、最大労組ユナイトの支援を受けている事情もあり、労働者の処遇が後退したり、財政難のギリシャ政府にさらなる緊縮を求めるようなEUの「経済ありきの姿勢」が続いたりすれば、離脱支持も辞さない構えをみせている。

朝日新聞デジタルより)


続きの一文を朝日新聞紙面から引用しておく。

 キャメロン首相はEUにとどまる方策を練っているが、保守党内でも移民・難民問題の深刻化に伴い、離脱容認派が勢いづいている。また、即時離脱を掲げる英国独立党(UKIP)が存在感を増している。さらに労働党が離脱に傾けば、国民投票で離脱が多数となる可能性が高まりかねない。

朝日新聞 2015年9月13日付国際面掲載・渡辺志帆記者署名記事より)


いかにも朝日らしい記事の悪例だ。「可能性が高まりかねない」とは、朝日に限らず新聞記事に頻出する、実にいやらしい表現である。記者は右派の排外主義とリベラル・左派の反緊縮を一緒くたにして、EU諸国に緊縮財政を強いる「経済極右」ともいうべきドイツを妄信してしまっているのではないか。日頃から日本国内の財政政策に関してもタカ派色の強い主張を打ち出している朝日ならではともいえるが、むろん他紙の記事も似たり寄ったりである。

その成り立ちから言っても、全メディアの中でももっとも「経済右派」色の強い日経の記事は、朝日よりももっとひどい。

英労働党、強硬左派コービン氏を党首に 中道路線転換 :日本経済新聞

労働党、強硬左派コービン氏を党首に 中道路線転換
2015/9/12 22:43

 【ロンドン=小滝麻理子】英国の最大野党・労働党は12日、臨時党大会を開き、強硬左派の下院議員ジェレミー・コービン氏(66)が新党首に選ばれたと発表した。同氏は反緊縮や格差是正を訴え、党員らの6割近い支持を得た。1990年代以来中道路線を取ってきた同党の大きな転換となる。キャメロン首相率いる保守党の市場経済を重んじる経済政策や欧州連合(EU)離脱の是非を巡る交渉にも影響は及びそうだ。

 労働党の党首選は、5月の総選挙で労働党が保守党に大敗したことを受け、8月中旬から9月10日まで投票を行った。

 12日の投票結果では、4人の候補者のなかでコービン氏が投じられた42万2664票の59.5%を獲得し、2位以下に40ポイントもの差をつけて圧勝した。党員だけでなく、主要労働組合からも軒並み高い支持を得た。

 選出後の演説でコービン氏は「金融危機を利用して、人々に過大な負担を与えた」と現政権の緊縮策を批判。今の英国が一部の富裕層ばかりを遇しているとし、「人々はグロテスクなまでの不平等にうんざりしている。よりよい社会を作ろう」と呼びかけ、党員らから大喝采を浴びた。

 コービン氏は選挙戦で、鉄道再国有化や高所得者層への課税強化、核兵器廃絶などを主張。これに対して、90年代にブレア労働党政権下で市場経済とのバランスを重視する「ニュー・レイバー」を掲げてきた労働党幹部らは猛反発した。ブレア元首相自ら「コービン氏が党首になれば労働党は破滅する」と訴えたが、中道路線で保守党との違いがなくなったと感じる人々や生活苦に直面する若年層の不満を集め、人気はかえって高まった。

 コービン氏は1983年に下院初当選の大ベテランで、トレードマークは自転車とノーネクタイ。キャメロン首相など40代の若いエリート層出身のリーダーが目立つ最近の英国にあって、庶民出身の“泥臭いリーダー”像を体現する。

 もっともその政治手腕は未知数だ。これまで党内の役職についた経験はない。下院の議決で党の方針に500回以上も背いた異端児でもあり、党内をまとめられるかを不安視する声は多い。コービン氏は12日の演説でほかの候補の健闘を褒めたたえ、「一つの労働党になる」とアピールしたが、「このままでは次回の総選挙でも保守党に負ける」との声が労働党から出る。

 それでも、左派として強い信条を持つコービン氏が党首になったことで、英政治への影響は避けられない。最大の注目はキャメロン首相が2017年末までに予定する欧州連合(EU)離脱の国民投票への影響だ。

 労働党はこれまで親EU路線を党是としてきたが、コービン氏は「ギリシャ支援などを巡りEUに改革が必要なのは明らかだ」と独自の見解を見せる。最近では、EUの前身である欧州共同体(EC)を巡る1975年の英国民投票で加盟継続に反対票を投じたことを明らかにした。コービン氏のEUに対する懐疑的な姿勢が、労働党支持者のEU離脱への姿勢を強めるのではないかと懸念する向きも出ている。

 外交政策が混乱する可能性もある。コービン氏は中東やアフリカなどからの難民の受け入れには積極的だが、過激派組織「イスラム国」(IS)への空爆拡大などには否定的だ。これまでは二大政党は反発しながらも、テロ対策などでは現実的に折り合ってきたが、原理的なコービン氏の登場により、英国が外交分野で“決められない政治”に陥るリスクも浮上している。

日本経済新聞より)


私に言わせれば、日経や朝日の方が「EU原理主義」あるいは「緊縮財政原理主義」としか言いようのない論調だと思う。彼らは、労働組合を支持基盤とする政党の党首はみな「野ダメ」(野田佳彦)のような保守派でなければならないとでも考えているかのようだ。「決められない政治」とは、「野ダメ」政権時代に耳にタコができるほど聞かされたセリフではないか。

これらの記事を読んで、大新聞の高給取りである英国特派員たちには「反緊縮」の訴えなど届きようがないのだろうな、と思った。