kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

年の瀬の慰安婦の日韓合意/「リベラル」は安倍政権を甘く見るのをいい加減に止めよ(上)

年の瀬の慰安婦問題の日韓合意だが、来年の通常国会に出席するらしい共産党までもが「評価」している。戦争法(安保法)成立とその後の内閣支持率V字回復で今年の政局に、まるで今年の日本シリーズにおける福岡ソフトバンクホークスを思わせる「完勝」を収めた安倍晋三が、10対2で大量リードした9回表に、さらにダメ押しのダメ押しともいえる3ランを放ったかの印象がある。

えっ、安保法案反対のデモの盛り上がりと安倍内閣の支持率の一時低下があったじゃないかって? そんなの焼け石に水ですよ。ヤクルトスワローズに唯一の勝利(第3戦)をもたらした山田哲人の3連発*1と同じくらいの効果しかなかった。

元「小沢信者」にして「リベラル」のブログ*2は「【慰安婦日韓合意】で、ネトウヨが大暴れしているらしい。」と書き*3、他の「リベラル」のブログは「慰安婦合意で安倍の変心、裏切りに唖然」、「安倍シンパや安倍ブレーンの超保守系の議員、識者、ネトウヨなどは、この安倍首相の心変わり&裏切りとも言える決断を簡単に許すのだろうか。」などと書くのだが*4、「安倍談話」の教訓が全く生かされていないとしか言いようがない。

「安倍談話」が発表された頃、後者の「リベラル」氏は

真ん中へんから客観的に見ると、今回の談話には、安倍氏&超保守仲間の思想や考えが、彼らがいつも主張していることの半分も反映されていないことから、安倍首相は周囲の圧力や世論に押されて、負けちゃったかな〜(=超保守派の期待を裏切っちゃったかな〜)という感じがする

もしこれで、近い将来、拉致問題北方領土問題にも前進がなければ、さらなる失望を招いて、そのうち党内のアンチ安倍派に加えて、超保守派の間からも「安倍おろし」が起きるかも知れないな〜と(半分、期待込みで)思ったりもする

などと書いた*5が、とんだ「取らぬ狸の皮算用」だった(特に極右が「安倍おろし」を起こす云々は、とんでもないお花畑の妄想に過ぎなかった)ことが、その後すぐに示された。

実際には、極右(≠「超保守派」)である渡部昇一は、下記極右ブログに記録されたような反応を示したのである。


また、産経新聞記者・阿比留瑠比も「安倍談話」を絶賛した。


当時、リベラル・左派が賛意を示すべきは、それを「中立的に」報じた毎日新聞東京新聞の記事などではなく、「安倍談話」を痛烈に批判した村山富市の談話や朝日新聞の社説だった*6。「リベラル」氏の記事にも載っているが、村山富市氏は下記のように「安倍談話」を論評していた。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150815-00010004-nishinp-pol

「談話を出す意味はなかった」村山元首相、不満あらわ 大分市で会見
西日本新聞 8月15日(土)8時58分配信

 「何の目的でおわびという言葉を使ったのか明確でない」。戦後50年の節目に、アジア諸国への植民地支配と侵略を認めて謝罪する談話を発表した村山富市元首相(91)は14日夜、安倍晋三首相の談話を受けて大分市で記者会見し、「美辞麗句を並べたが、焦点がぼけて、何が言いたいのかさっぱり分からない」と不満をあらわにした。自身の談話が継承されたと考えるかの質問には「ない」と言い切った。

 第2次内閣発足から間もないころ、村山談話について「そのまま継承しているわけではない」と述べた安倍首相。今回の談話に対する海外の注目も高く、会見場には中国メディアの姿もあった。
 村山氏は新たな談話への動きについて「日本は何を考えているのかと疑問を持たれた」と力説。焦点となった「植民地支配」「侵略」などの言葉が盛り込まれたが、村山氏は「日本が侵略したことが悪かったと率直に謝る文章にはなっていない」「(アジア諸国に)大変な迷惑をかけたことが不明確だ」と指摘した。
 また、安倍首相が以前から主張してきた歴史観を抑えた形となったことには「言葉に配慮し、苦労して作ったのだと印象を受けた。いろんなことが耳に入ってきたのだろう」と述べた。
 自身の20年前の談話について「以後、歴史問題で日本が謝罪したことはない。(安倍首相は)最初から継承すると言えば良かった」との自負ものぞかせた村山氏。最近は安全保障関連法案に反対し、国会前のデモにも参加している。法案審議で首相が強調している積極的平和主義については、談話の終盤で触れられただけだった。
 村山氏は「本来ならば、積極的平和主義をもっと本人は言いたかったと思う。安全保障関連法案とどれだけ関係があるのか、言うなら言うべきだと思う」と述べ、会見中繰り返した同じ言葉をまた繰り返した。
 「談話を出す意味はなかった」


この西日本新聞の記事もまだ認識が甘い。「法案審議で首相が強調している積極的平和主義」とは、自衛隊が海外で戦争を行うことの言い換えに過ぎないからだ。しかし、この村山氏の言葉をを「リベラル」氏が「『左』の認識」と断じ、「<70年談話>安倍カラーを抑制 支持率急落受け軟化」と題した毎日新聞のぬるま湯的な記事を「一番自分の考えに近い」として軍配を上げた時に、安保法案をめぐる「リベラル」の戦いは「敗北」が確定したのだった。なぜなら、「安倍談話」に丸め込まれた「リベラル」は他にも大勢いたからであって、それまで先陣を切っていたかに思われた東京新聞も安倍政権に丸め込まれた「リベラル」の一員だった。この日記に関連した話では、例の仙台の「お行儀が良くなくちゃ嫌よ」君も、当時「安倍談話」を大いに評価した一人だった。

実際には、その少し前くらいから、安倍内閣の支持率低下は止まりつつあったので、「まずいな」と思ったのだが、その後の推移は私が懸念したよりももっと悪かった。戦争法が可決されることはもちろん想定していたし、ある程度安倍内閣の支持率が回復するだろうとは思っていたが、ここまでの「V字回復」になろうとは想像もしなかった。日頃、悲観論に傾きすぎると批判されることの多い私だが、その私の予想をも超えた日本国民の「右傾化」ぶりだった。

「安倍談話」の話に長々とそれたが、あの「安倍談話」を発表した安倍晋三ならば、今回の、明らかにアメリカの意向に韓国の朴政権ともども迎合した日韓合意を成立させたことは驚くに当たらないし、今回も、ごく一部のネトウヨはともかく、渡部昇一や阿比留瑠比らの極右の大物たちは安倍晋三を絶賛するだろうし、安倍内閣の支持率が、今年年初に(実際は昨年に)自称イスラム国(IS)が引き起こした日本人人質事件に安倍晋三が強硬策をとった時に匹敵するほど、いやそれ以上に上がっても何の不思議もない。

「リベラル」は安倍政権を甘く見るのをいい加減に止めた方が良い。(この項続く

*1:山田の3連発は、確かに偉業には違いなかったが、シリーズ全体の流れからすれば「焼け石に水」でしかなかった。

*2:今では実質的に「小沢信者」を休業している。

*3:http://blog.livedoor.jp/hanatora53bann/archives/52267126.html

*4:http://mewrun7.exblog.jp/24003061/

*5:http://mewrun7.exblog.jp/23571107/

*6:ただ、以前にも書いたが、朝日の社説に関しては、安倍談話がどのようになるかを朝日は事前に知らされていたためではなかったかと私は邪推している。つまり朝日新聞毎日新聞東京新聞とは違って、「エスタブリッシュメント層」の一員として遇されているのではないかとの仮説を私は立てている。