昨年11月から12月頃にかけて、自公与党が設定した「軽減税率」という名の土俵の上で踊っていた朝日新聞以下のマスメディアや当時括弧付きの「リベラル」と呼んでいた(今では括弧付きの「リベラル」にすら当たらないと考えて「保守的な」という枕詞に代えている)ブロガーたちがもっともらしく「論評」していたことにさんざん悪態をついてきた。それらを以下に再掲する。
橋下、「軽減税率」で公明党に「譲歩」した安倍晋三の「決断」(=猿芝居)を「凄すぎる」と絶賛 (呆)(呆)(呆) - kojitakenの日記(2015年12月11日)より
これまでこの日記では2017年4月引き上げを安倍晋三が決断した消費税の「軽減税率」の件を一度も取り上げなかった。それどころか、マスメディアはなぜさも大ニュースででもあるかのように報じるのかと腹を立て、この件について岸井成格がコメントするのを見て、おい岸井、そんなくだらないニュースにコメントするな、言わなければならないことが他にあるだろう、とまた腹を立てた。もちろん、某「リベラル」ブログがこの件を取り上げたことにも腹を立てた*1。敵の設定した土俵の上に乗っていることが「リベラル」氏にはわからないらしい。
私は、2017年4月の消費税引き上げ自体が問題で、そもそも税率引き上げをできる経済状況になる可能性などほとんどない、だから軽減税率の議論など無意味だと考えている。しかも、自民党と公明党のやり取りは、最初から「筋書きのあるドラマ」であることがあまりにもミエミエで、これはきっと国立競技場の件と同じように安倍晋三がしゃしゃり出てきて「一件落着」になるぞ、と思っていたら案の定その通りになったのでずっこけてしまった。(後略)
「リベラル」よ敵を知れ、現実を直視せよ。長谷川幸洋の記事くらい読んでおけ - kojitakenの日記(2015年12月12日)より
(前略)そもそも、軽減税率云々以前に、消費税が予定通り2017年4月に引き上げられる可能性が果たしてどのくらいあるのか、それを先に考えた方が良いと思うよ。
(中略)周知のように7-9月度のGDP確定値はプラス成長となり、安倍晋三は「2年連続で景気をリセッション入りさせた戦後初の首相」になる汚名こそ免れたものの、景気は相変わらず低迷している。こんな状況下では、軽減税率云々以前に消費税率の引き上げ自体が困難極まりないのは当たり前だ。だから私は、なんでマスコミはそのことを言わないで、無意味な議論に終わることが火を見るよりも明らかな軽減税率をめぐる自公のプロレスなんかをしたり顔に報じるんだよ、と怒り狂っているのだ。
長谷川幸洋は、今週号の週刊ポストで、安倍晋三は消費税率引き上げ見送りを争点にして来年の衆参同日選挙を戦う腹だともコメントしてる。それは大いにあり得ると私も思う。2017年4月の消費税率引き上げは、ほかならぬ安倍晋三自身が決めたことなのだから、その延期を争点にするなど理不尽な話なのだが、選挙は理よりもムードに左右される。(後略)
2015年10-12月度GDP、またマイナス成長に - kojitakenの日記(2016年2月16日)より
四半期のGDPがまたマイナス成長になった。
(中略)
「エコノミスト」が言うように「1〜3月度もマイナス成長となる」ならリセッション(景気後退)局面入りだな。っていうか、2015年4-6月期以来、7-9月期を除いてすべてマイナスじゃん。2014年4-6月期以降でも、3勝3敗が3勝4敗になり、1-3月期もマイナスなら3勝5敗ってことか。
消費税率引き上げ以来ずっとこんな調子だな。恐るべし消費税。1997年の税率引き上げの時にも日本経済は不況に突入した。あの時の不況は消費税率引き上げのせいではないと強弁する論者もいたが、2014年の税率引き上げ後も同じだった。今回は確定値ではないが、マイナスが確定すれば、2014年4-6度以降、7度の四半期で4度目のマイナス成長になる。1-3月度もマイナスなら8四半期で3勝5敗の惨状だ。今回の景気停滞ないし後退局面も、中国経済の減速を含む世界経済の影響だ、消費税のせいじゃないと強弁する向きもあるかもしれないが、私は2度続いて同じ結果が出たとみる。消費税率引き上げは経済成長の天敵だ。
これでは2017年4月からの税率再引き上げなんてできっこない。「軽減税率」の自公合意はとんだ猿芝居だったってことだ。
そして昨日(16日)、前々から私が予想していたことが現実味を帯びてきたことを示すニュースが報じられた。
スティグリッツ氏「消費増税すべきでない」 国際経済分析会合 :日本経済新聞
スティグリッツ氏「消費増税すべきでない」 国際経済分析会合
2016/3/16 9:51 (2016/3/16 11:58更新)
政府は16日午前、世界経済について有識者と意見交換する「国際金融経済分析会合」を初めて開いた。講師として招いたノーベル経済学賞の受賞者であるジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大教授は、世界経済は難局にあり「2016年はより弱くなるだろう」との見解を示した。「現在のタイミングでは消費税を引き上げる時期ではない」とも述べ、来年4月の消費税率10%への引き上げを見送るよう提言した。菅義偉官房長官は16日午前の記者会見で「スティグリッツ氏から税制について、総需要を喚起するものではないとの観点から、消費税引き上げはいまのタイミングではないとの趣旨の発言があった」と説明した。
分析会合の終了後、安倍晋三首相とスティグリッツ氏のほか、首相の経済政策のブレーンを務める浜田宏一、本田悦朗両内閣官房参与を交え意見交換した。スティグリッツ氏は首相官邸で記者団に「首相は(消費増税先送りを)恐らく、確実に検討するだろう」と述べた。
首相は分析会合の冒頭で「伊勢志摩サミットの議長の責任を果たすため、世界の経済・金融情勢について率直な意見交換をしたい。アベノミクスに関しても、どしどし意見を頂きたい」とあいさつした。
スティグリッツ氏は分析会合で「世界経済は低迷している」との認識を表明。「日銀の金融政策だけでは限界がある。次に財政政策をとることが重要だ」と強調し、政府に財政出動を促した。
分析会合の座長には石原伸晃経済財政・再生相が就いた。林幹雄経済産業相や加藤勝信一億総活躍相、菅氏や日銀の黒田東彦総裁が出席。本田、浜田両氏も陪席した。
分析会合は17日に米ハーバード大学のデール・ジョルゲンソン教授と元日銀副総裁で日本経済研究センターの岩田一政理事長を招く。22日にはノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマン氏を呼ぶ。
首相はこれまでの国会答弁で増税の是非について「世界経済の収縮が起こっているか、専門的見地から分析し判断していかねばならない」と発言している。首相周辺は「有識者が経済収縮のリスクを指摘するなら増税見送りの判断はありうる」と語る。
サミットまで継続的に開く予定で、5月の大型連休に安倍首相が欧州を歴訪する際にも外遊先で現地の経済学者らを招いた分析会合を開く方向で調整している。
(日本経済新聞より)
ほれ見ろ、言わんこっちゃない。
昨夜(3/16)、TBSテレビでもうすぐアンカーを星浩にとって代わられる岸井成格が、安倍晋三が消費税率引き上げを延期する可能性が高い、合わせて消費税率引き上げの是非を争点にして今年夏に衆参同日選挙を行う可能性もある、などと言っていたが、今頃何言ってやがる、そんなことは昨年暮れに言っておけよ、と思った。来年4月の消費税率引き上げなどできるはずもないことを、上記に示したように私はずっと指摘してきたからである。
こんなことは、何も私でなくても、ある程度の常識のある人間なら誰にでも予想できたことだ。そして、昨年暮れに自公でやっていた「軽減税率」の議論など何の意味もなく、単なる時間の浪費であり税金の無駄遣いであることなど自明だったのだから、あの時点でTBSやテレビ朝日や朝日新聞や毎日新聞や東京新聞や、「リベラル」もとい保守派の反安倍・反自民ブロガーたちは、もし本気で安倍政権や自民党と対峙するつもりがあるのなら、「軽減税率」なる土俵に乗ること自体を拒否し、猿芝居にかまける安倍晋三や自民党や公明党を厳しく批判なければならなかったはずだ。
だが彼らはそれらをしなかった。公明党が本気で安倍晋三と自民党に対抗している、などと報じていたTBSやテレビ朝日や朝日新聞や毎日新聞や東京新聞や、それを無批判で受け売りしていた「リベラル」もとい保守派の反安倍・反自民ブロガーたちは、安倍晋三や自公の応援団以外の何物でもないと断じるしかない。そんなていたらくだから、今年の参院選やもしかしたらそれと同日に行われるかも知れない衆院選も、安倍晋三や自公与党の書くシナリオ通りになってしまうのだ。
常日頃から、「リベラル」には怒りの温度が足りない、と私は言い続けているのだが、消費税や「軽減税率」の議論などその典型的な例だろう。