安倍晋三が衆議院を解散するかどうかについては、このところしばらくは意識して書かなかった。違憲の疑いが強いともいわれる「(憲法)7条解散」が総理大臣の「伝家の宝刀」とされる慣習が続き、それを濫用する衝動を特に強く持つ安倍晋三が総理大臣だから、いくらマスコミに衆参同日選挙見送りを安倍が決断したと言われても、最後の最後までそれを疑っていたからだ。もちろん通常国会は今日(6/1)閉会だから、最後の最後にどんでん返しが起こらないとまでは断言できないが、いくらなんでもまさかそれはなかろうと思ってやっと解禁する。だから少し遅れたが、下記朝日新聞デジタルの記事は昨日(31日)未明のものだ。
http://www.asahi.com/articles/ASJ5Z7V6CJ5ZUTFK01G.html
消費増税、2019年10月に再延期 同日選も見送りへ
2016年5月31日03時19分
来年4月に予定されていた消費税率10%への引き上げが2019年10月まで2年半、再延期されることが決まった。安倍晋三首相は衆院を解散せず、夏の参院選に合わせた衆参同日選も見送ることで決着した。首相は国会会期末の6月1日に記者会見を開き、こうした方針を正式表明する。首相は30日夜、再延期に反対していた麻生太郎財務相と約3時間にわたって会談。麻生氏はこれまで再延期の場合は衆院を解散して国民の信を問うべきだと主張していたが、首相が改めて理解を求め、容認に転じた。両氏は衆参同日選を見送ることも確認。最大のハードルだった麻生氏を説得できたことに加え、自民、公明両党も再延期を容認する方向で、増税先送りと解散回避で同時決着した。
消費増税をめぐっては、首相は14年にも、15年10月に予定していた消費増税を17年4月に1年半延期しており、今回は2回目の延期となる。政府・与党は、秋の臨時国会にも増税時期を2年半延ばす消費増税法の改正案を提出する。
(朝日新聞デジタルより)
これまで私がずっと書いてきた「安倍晋三が消費増税先送りを表明する場合、必ず衆議院を解散する」という予想は外れた。この予想というかシナリオは、東京新聞(中日新聞)の長谷川幸洋が早くから説いていたものであった。安倍晋三べったりの新聞屋(いわゆる「すし仲間」)である長谷川は、2014年にも同様のシナリオを描いて、その時は安倍晋三がみごとにそれに沿った行動を起こして2014年末に解散総選挙を行って自民党を大勝させた。
今回、安倍晋三が解散を見送ったのはなぜかと考えると、それは衆議院を解散しても議席を減らすだけだという自民党内部の調査結果でも出ていたのではないかと想像するほかない。普段マスコミが行っている世論調査からするとそのような結果になるとは想像しがたいが、思い出せば小泉純一郎が2005年に郵政解散・総選挙をやらかす前の2003〜04年の国政選挙(03年衆院選と04年参院選)はいずれもそのような選挙だった。つまり、平時の政党支持率では自民党が民主党を圧倒しているのに、いざ選挙を行うと民主党が普段の低い政党支持率からは考えられないほどの得票で自民党と議席が拮抗したのだ。特に2004年の参院選では、民主党の当選者が自民党を1人だけとはいえ上回った。しかし選挙が終わってしばらく経つと、また自民党の政党支持率が民主党に大きく水を開けたのだった。
どの程度効果があるか疑問視されている「野党共闘」にも同様の効果があるのかもしれない。普段別に民進党なんか支持していなくとも、「野党共闘」によって自民党候補との二択になる場合、民進党候補(あるいは他の「野党共闘」の候補)に投票する人は少なくない。加えて、2014年4月の消費税率引き上げによって景気回復にストップがかかって以来、もう2年以上もずっと日本経済は停滞したままだ。そろそろ以前と同じように、「今回は自民党(安倍政権)にお灸を据えようか」と思う人が増えても不思議はない。2014年の衆院選では、消費税率引き上げを決めた時は民主党政権だったから、と思った人も、今回はその時に安倍晋三が「(消費税率引き上げを)再び延期することはない。ここで皆さんにはっきりとそう断言いたします」と言っていた映像をテレビのニュースで繰り返し見せられると、なんだ、なんとかのミクスがうまくいっていないってことか、と思ったかもしれない。などなど、理屈はいろいろ考えられるだろうが、要するに安倍晋三は衆院選を行っても勝てる自信が持てなかったものと推測される。そう考える以外に、サミットまでをも消費税率引き上げ延期の口実に利用するような恥知らずにしてジコチューの塊である安倍晋三が、長谷川幸洋が推奨したシナリオを実行しない理由は私には想像できない。
以上、予想を外した言い訳だが、一方で当たった予想もあることを手前味噌で蒸し返しておく。それは、昨年11〜12月の「軽減税率」に関する自公の議論について、「論評に値しない猿芝居だ。これをまともに取り上げる人たちは、予定通りの2017年4月の消費税率引き上げが実行可能かどうか考えてみるべきだ。今の経済状況で消費税率引き上げなんかできっこない」と主張し続けていたことだ。
これは的中した。安倍晋三が消費税率引き上げを延期したこと自体は正しい。1997年、2014年と、経済が低迷期にある時の消費税率引き上げが与えた大きな悪影響を考えれば、「二度あることは三度ある」と考えるべきなのは当たり前だ。消費税率引き上げによって得られる税収増は、景気の落ち込みによる税収減によって相殺されてしまう。予定通り消費税率を引き上げるべきだと主張する人たちには、このことをどう考えるか問いたい。
ただ、安倍晋三の場合は今後財政支出も増やすのだろうが、従来の自民党政権の特徴である公共事業偏重に加え、軍需産業だの原発だのに活路を見出そうとする可能性が強い。前者は一部の軍需産業に富の偏重をもたらすばかりで、実際に自衛隊を海外に派兵しまくるとなれば軍事支出も増え、日本国内でテロが起きて一般人が犠牲になるリスクも高まる。安倍政権を一刻も早く終わりにしなければならないという私の意見は全く変わらない。