ついに恐れていた新年度に入った。報道ステーションに出てくるのを今から恐々としている後藤謙次が登場するのは4月11日で、今日から来週いっぱいは報ステはお休みだそうだ。出演していたキャスター、アナウンサー、コメンテーターらは、サブキャスターの小川彩佳とスポーツコーナーの解説者らを除いてほぼ全員交代するようだ。
さて、昨年度最後に書いた 誰かのプレゼン資料(「仮訳」)より - kojitakenの日記 のコメント欄より。
http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20160331/1459379421#c1459396043
id:zenzaburo 2016/03/31 12:47
スティグリッツですね。力がある文章で素晴らしい。これなら安倍の成長と分配の好循環というスローガンに対抗できる基礎があると思います。脱帽。野党はこれこそ丸呑みしろ。
なおTPPはクルーグマン戻って反対に回った。議会でどうなるのか知りませんが。
zenzaburoさんの論敵・杉山真大(id:mtcedar)さんのTwitterより
論敵のお二方の意見が一致するとは、さすがはスティグリッツ。なお私が昨日わざとリンクを張らなかったスティグリッツのプレゼン資料のリンク先は下記。官邸の翻訳に安倍晋三の印象を悪くしないための手心が加えられているという批評もありましたが、そんなのは焼け石に水に過ぎないと思わせる、説得力のある資料です。読者の皆さま、是非下記リンク先をご参照下さい。スティグリッツの悪口を言うなら、下記のプレゼン資料を読んでからにしてくださいね。
さて、野党の政治家ですが、民進党の岸本周平衆院議員が3月19日に「スティグリッツ教授発言の全体像を見逃してはいけない」と題した記事を、ハフィントンポストに寄稿しています。この岸本という人、Wikipediaを参照すると、財務官僚出身で、下記のような身の毛もよだつ経歴を持っています。
2004年4月、理財局国庫課長を最後に財務省を退官。トヨタ自動車に入社し、同社渉外部長に就任する。トヨタ自動車では奥田碩の政策スタッフを務め、財界における奥田の活動をサポートした。
政界入り同年7月の第20回参議院議員通常選挙では、同郷の竹中平蔵の選挙参謀を務める。同年10月より内閣府参与に就任し、構造改革を推進する小泉純一郎首相や竹中平蔵らを支えたが、2005年の第44回衆議院議員総選挙を前に内閣府参与を辞任。
民主党民主党に入党。同党公認で和歌山1区から出馬したが、自由民主党前職の谷本龍哉に敗れ、落選。2009年の第45回衆議院議員総選挙では和歌山1区で谷本を破り、初当選した。2011年3月、「日本のグランド・デザイン」研究会(玄葉グループ)の結成に参加した。
2012年10月、野田第3次改造内閣で内閣府大臣政務官並びに経済産業大臣政務官に任命される。同年12月の第46回衆議院議員総選挙では、民主党に猛烈な逆風が吹き荒れる中、和歌山1区で自民党新人の門博文や、自民党を離党し日本維新の会から出馬した元衆議院議員の林潤らを破り、再選(門は比例復活)。
2014年の第47回衆議院議員総選挙では和歌山1区で門を破り、3選(門は比例復活)。
民進党2016年3月27日、民主党と維新の党が合流し、改革結集の会の一部議員や無所属議員なども参加して民進党が結成される。現在同党に所属。
政策・主張
経済
ところが、ハフィントンポストの記事ではそんな気配は欠片も見せません。それどころか、故宇沢弘文に学んだ生粋のリベラルであるかのような印象を読者に与える文章です。スティグリッツのプレゼンの内容が、かつての岸本自身の立場とことごとく鋭く対立していることなどおくびにも出しません。このあたりが元官僚・現「ゆ党」の政治家の処世術なのでしょうか。
先に悪口ばかり書き連ねましたが、岸本が書いた記事を以下引用します。
スティグリッツ教授発言の全体像を見逃してはいけない | ハフポスト
岸本周平
衆議院議員
スティグリッツ教授発言の全体像を見逃してはいけない
投稿日: 2016年03月19日 13時40分 JST 更新: 2016年03月19日 13時40分 JST
ジョセフ・スティグリッツ教授を囲む朝食会に参加しました。教授はシカゴ大学で宇沢弘文先生と知遇を得て、尊敬する友人として、今回宇沢先生の追悼のために来日されました。教授は行動する学者として宇沢先生を尊敬しているとおっしゃっていました。
私も、大蔵省の経済理論研修生として宇沢先生に直接経済学を教わりました。いつも黒板いっぱいに数式を書いて独り言をいうような講義でしたので、チンプンカンプン。でも、ビールの大好きな宇沢先生の人徳には十分に触れることができました。
スティグリッツ教授のお話は、まず社会正義の実現、格差の是正、地球環境の保護、平和主義を推進することの重要性からスタート。
「GDPを増やすことは、何が幸福かを教えてくれない。」
日本経済が成長していないと批判する人がいるが、日本の労働者はベストパフォーマンスを示している。平均寿命も高いし素晴らしい国だ。しかし、労働者の賃金は上がっていない。労働者の賃金を上げるための社会的なルールの変更が重要。
そして、気候問題を解決するために炭素税を強く勧めます。環境保全に加え、日本では、財政再建のための歳入増、景気刺激にもなる。同じ増税でも、需要を減らす消費税より炭素税だとの主張。
今は、需要を喚起するための積極的な財政政策が必要だが、その財源のためには、格差是正にもつながる資産課税が良いとも指摘。財政のバランスそのものを崩してはいけないとの立場でした。教育や技術への投資の重要性も指摘。
そして、大企業の利益のためのTPPには反対。環境保全を妨害し、医薬へのアクセスが難しくなるからだと。TPPは社会正義に反し、格差を広げ、環境にも悪いと熱弁を振るわれました。
安倍内閣では、「国際金融経済分析会合」でのスティグリッツ教授の発言のすべてを公平に取り上げず、消費税の再延期のところだけをプレイアップしていましたが、チェリー・ピッキング(良いとこ取り)はいけません。
格差拡大に反対する「Occupy wall Street」運動の先頭に立って行動したスティグリッツ教授の全体のお話は宇沢先生と同じ、リベラルなもので首尾一貫されていました。マスコミで、教授の発言の全体像が報道されないことが残念です。
(ハフィントンポストより)
よく読むと、岸本自身はスティグリッツに同意であるとも不同意であるとも書いていません。ただ、安倍政権の「良いとこ取り」を批判し、「マスコミで、教授の全体像が報道されない」ことを残念がっているだけです。こういう腹黒い元官僚の政治家がいるから民進党は信用ならない、と私などは思います。しかし、岸本が書いた記事だけを切り取れば、良いことが書かれています。ただ、それは岸本自身の思想信条とは全くの別物であることを、「リベラル」は十分認識しておくべきでしょう。また、安倍晋三がスティグリッツの発言の「良いとこ取り」(というより「つまみ食い」)をして、消費税増税再延期を打ち出して参院選(あるいは衆参同日選挙)の勝利しか眼中にない独裁者の醜態を晒していることを批判できず、安倍晋三の宣伝機関と化しているマスメディアの堕落のひどさには言葉もありません。消費税増税を再延期するか否かなんて、スティグリッツのプレゼン資料には一言も書かれていないというのに。昨夜の報ステでの古舘伊知郎の最後っ屁も、自分が番組を辞めるのは(安倍晋三の)圧力のせいじゃないなどと強弁することによって、最後まで安倍に妥協してましたね。古舘は昨夜の放送でスティグリッツの名前を出して炭素税にも触れてましたが、スティグリッツが講演で法人税の減税を批判したことには触れなかったんじゃないかな。古舘は最後まで中途半端のままに終わったな、というのが私の印象です。
なお、クルーグマンについての情報を杉山真大さんからいただいています(一箇所typoを修正しました)。
http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20160331/1459379421#c1459415946
mtcedar 2016/03/31 18:19
序でを言えばクルーグマンも「東京で言っておいたこと」ってのを公開してる。
https://www.gc.cuny.edu/CUNY_GC/media/LISCenter/pkrugman/Meeting-minutes-Krugman.pdf
和訳はこちら。 http://ch.nicovideo.jp/niconicoffee/blomaga/ar997582
この件は菅義偉が記者会見で記者の質問に答えたために、今朝の各紙に報じられてました。下記は毎日の記事ですが、朝日にも出ていました。っていうか紙面で読める朝日の記事の方が詳しいんですが、ネットで無料で読める朝日新聞デジタルの記事は後半がカットされてしまっています。毎日でも同様なのかもしれませんが。
http://mainichi.jp/articles/20160401/k00/00m/010/080000c
クルーグマン教授
安倍首相の「オフレコ」発言を公開毎日新聞 2016年3月31日 20時45分(最終更新 3月31日 23時16分)
3月22日に首相官邸で開かれた「国際金融経済分析会合」に招かれたポール・クルーグマン米ニューヨーク市立大教授が、会合での安倍晋三首相の「オフレコ」発言を含む議事録をネットで公開し、政府が困惑する事態となっている。会合は原則非公開だったが、クルーグマン氏は26日、ネット上で「私が東京で話したこと」と題し、12ページの議事録を公開した。それによると、首相は「これはオフレコですが」と前置きしつつ、「財政出動の余地が最も大きいのはドイツだ。ドイツ訪問の際、財政出動での協調を説得するのに何かアイデアはないか」と質問。クルーグマン氏は「外交術は私の専門ではない」と答えた。
菅義偉官房長官は31日の記者会見で「議事録は政府が作成したものでなく、あくまで教授ご自身のメモだ」と説明し、クルーグマン氏への抗議は「考えていない」と語った。【高本耕太】
さて、以下は蛇足。ハフィントンポストのサイトにアクセスした時、下記の訃報記事(朝日の朝刊にも出ている)とどうでも良い記事を1本ずつ知った。
ザハ・ハディド氏が死去 新国立競技場の当初案をデザイン | ハフポスト
ザハ・ハディド氏が死去 新国立競技場の当初案をデザイン
The Huffington Post | 執筆者: 中野渉投稿日: 2016年04月01日 00時41分 JST
2020年東京オリンピックのメーン会場となる新国立競技場の当初案をデザインしたイギリスの女性建築家、ザハ・ハディド氏が3月31日、アメリカ・フロリダ州マイアミで心臓発作のため死去した。65歳だった。気管支炎の治療のため入院していた。イギリスBBCなどが伝えた。ハディド氏はイラクの首都バグダッド出身。レバノンのベイルート大学で数学を学び、1979年にロンドンに事務所を立ち上げた。2004年には建築界で最も権威ある賞とされる「プリツカー賞」を受賞、ロンドン・オリンピックの水泳会場の設計でも知られる。
ハディド氏は新国立競技場のデザインを当初、手がけたものの、建築費が莫大になることがわかり、日本政府が白紙撤回していた。
同氏の事務所は、新デザインを担当した日本人の隈研吾氏のデザインが旧デザインと似ているとして、事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)に著作権をめぐる交渉を求めている。
(ハフィントンポストより)
小保方晴子氏「STAP細胞の作り方」特設サイトで公開 | ハフポスト
小保方晴子氏「STAP細胞の作り方」特設サイトで公開
The Huffington Post | 執筆者: 安藤健二投稿日: 2016年03月31日 19時06分 JST 更新: 2016年03月31日 19時06分 JST
STAP細胞論文の著者だった理化学研究所の元研究員、小保方晴子氏(32)が3月31日、STAP細胞の作製手順などを記したサイトを開設した。神戸新聞などが報じた。サイトの名称は「STAP HOPE PAGE」で、全文英語で表記。小保方氏は、理研が否定したSTAP現象の存在を主張しており、トップページには以下のように書かれている。
(記事には小保方のメッセージが引用されているが省略=引用者註)
このサイトでは、STAP細胞発見の発表当時の資料のほか、理研による検証実験について、写真や図表とともに記載している。また、小保方氏自身が行ったとするSTAP細胞の作製手順について、使った薬品やその濃度なども示している。このサイトについて、理研は「(2014年12月に)公表した調査報告書で示した以上のコメントをすることはない」と神戸新聞にコメントしている。
(ハフィントンポストより)
そういえば小保方の「著書」、近所の本屋ではいまだに目立つところに平積みで置かれている。4年前に出た孫崎享のトンデモ本『戦後史の正体』も、相当長い間平積みで置かれていた。陳列のセンスの悪い本屋だといつも思っている。