kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

実は2種類しかない「大手メディア」の東京都知事選序盤・中盤の情勢調査報道

東京都知事選については、立候補を予定していながら辞退した宇都宮健児氏の支持層を、極右かつ新自由主義者として知られる第1次安倍内閣の元閣僚への投票に流し込もうと煽動した人たちがいて、その中には(あえて括弧をつけないが)左翼でも左派でもリベラルでもないと思われる人間が少なからずいるらしいことを知って暗然となり、記事を書く気力も失せつつある。

と言いながら、上記の状況を象徴していると思われる香山リカ氏のTwitterを示しておく。

https://twitter.com/rkayama/status/755456191300407296

香山リカ
@rkayama

メーリスで宇都宮氏を支持してた人が、鳥越氏に決まった理由がわからないと悶々とし続けているうち、だんだん小池氏を「反安倍」と推す人の主張を転送してくるようになった。最初はおずおずと、次第に自信を持って。宇都宮氏支持者が小池氏支持になって行くプロセスを目の当たりにして怖かった。

10:36 - 2016年7月19日


実は香山氏の書いた新書本を過去に読んだことがあるが、正直に言って心に響いてくるものが全然なかった。そのこともあって従来から私は香山氏をあまり買っていなかったのだが、本件などは精神科医として格好の分析の対象と思われるので、是非その暗い(辺見庸の言う「湿土に隠れた地下茎部分」を暴き出すような分析をお願いしたいものである。それが鋭い分析であれば、私の香山氏に対する、必ずしもポジティブとは言い難い印象も変わるかもしれない。

さて以上は単なる前振りで、本論はここから。

今回の東京都知事選についての大手メディアの世論調査を論評するネットの文章をずいぶん見たが、私にはネットの書き手たちに対して大いに不満がある。それは彼らが「マスメディア各社の世論調査が出揃った」などと平気で書いていることだ。

私の知る限り、朝日と読売はまだ世論調査の記事を出していない。2014年の都知事選では、朝日は序盤と中盤の二度世論調査の結果を報じていたことが下記「NAVERまとめ」で確認できるが、今回は明日と明後日(23,24日)に中盤の情勢調査を25日付紙面で一度だけ報じる方針らしい。


また、最近の国政選挙の情勢調査を日経リサーチに外注しているらしい読売は、日経が行った序盤の情勢調査は利用しなかった。やはり朝日と同じタイミングで中盤の情勢調査だけを報じるものと思われる。

しかもそれ以上に問題なのは、「各社の世論調査が出揃った」などと書いている人たちが、実際には共同通信毎日新聞・TBS・フジテレビ・産経新聞の報道が同一のデータに拠っていることに全然気づいていないことだ。以下に7月18日付毎日新聞の記事を引用する。

都知事選:小池、鳥越氏競り合い 増田氏が追う…序盤情勢 - 毎日新聞

都知事
小池、鳥越氏競り合い 増田氏が追う…序盤情勢
毎日新聞 2016年7月18日 09時00分(最終更新 7月18日 09時00分)


 31日投開票の東京都知事選について毎日新聞は16、17の両日、都内の有権者を対象に電話による世論調査を実施し、取材結果も加えて序盤情勢を分析した。元防衛相の小池百合子氏(64)とジャーナリストの鳥越俊太郎氏(76)が競り合い、元総務相増田寛也氏(64)が追う展開となっている。ただ4割以上が投票先を決めておらず、今後、情勢が変わる可能性もある。

 主要候補で唯一の女性の小池氏は50代以下の女性に幅広く浸透し、40代は男女とも支持を集める。

 鳥越氏は60代女性や70代以上を中心として、高齢層に人気が高い。増田氏は30代で一定の支持を集めている。

 自民党が17年ぶりの「分裂選挙」となり、自民党都連との対立姿勢を鮮明にしている小池氏は自民支持層の4割弱の支持を集めた。おおさか維新支持層や無党派層にも浸透している。

 鳥越氏は推薦を得た民進、共産の支持層の6割近くを固め、同じく推薦する社民、生活の支持層や無党派層からも支持を得ている。

 自民、公明、こころの推薦を受ける増田氏は公明支持層の6割近くを固めたものの、自民支持層では3割の支持となっており、分裂選挙の影響が見える。

 投票する際に最も重視する基準を選択肢で尋ねたところ、最も多かったのは「政策」で37%だった。「行政経験」13.5%▽「お金に対するクリーンさ」13.4%▽「人柄」13.1%▽「政治経験」9.9%−−と続いた。

 行政経験と回答した人の6割弱が増田氏、人柄の5割弱が鳥越氏、政治経験の6割が元衆院議員の小池氏をそれぞれ支持しており、有権者が自身の選択基準に合った特徴の候補者を支持している傾向が見られる。

 政策と回答した人の支持は小池氏が約3割、鳥越氏が約2割、増田氏が2割弱で、約3割は態度をはっきりさせていない。

 都知事選には3氏を含め過去最多の21人が立候補している。【林田七恵】

調査の方法

 16、17日の2日間、コンピューターで無作為に電話番号を発生させて、調査員が電話をかける方法で行った。毎日新聞共同通信産経新聞、TBS、フジテレビの5社の共同で実施した。東京都内の有権者がいる1521世帯から1033人の回答を得た。回答率は68%。

毎日新聞より)

この毎日の記事の末尾に、

毎日新聞共同通信産経新聞、TBS、フジテレビの5社の共同で実施した。

と明記されている。しかも、上記記事における

 鳥越氏は推薦を得た民進、共産の支持層の6割近くを固め、同じく推薦する社民、生活の支持層や無党派層からも支持を得ている。

 自民、公明、こころの推薦を受ける増田氏は公明支持層の6割近くを固めたものの、自民支持層では3割の支持となっており、分裂選挙の影響が見える。

という記述は、産経のサイトに表示された下記のグラフと(データが同じである以上当たり前だが)一致する(但し、産経のグラフには社民・生活の支持層や無党派層の候補者別支持率は表示されていない)。

http://www.sankei.com/politics/photos/160718/plt1607180007-p1.html

それなのに同じ世論調査結果に基づいて、共同通信毎日新聞やTBSは「小池・鳥越氏競り合い、増田氏追う」と報じたのに対し、産経は「小池氏一歩リード」、フジテレビは「都知事選は3候補激戦」と報じた。産経とフジは同じグループなのに同じデータをもとに違う報じ方をしたのだった。

共同や毎日も小池の名前を先に出していることからわかる通り、小池の方が回答者が多かったのは事実だろうし、その差は「競り合い」と「一歩リード」の境目にある、つまり、有意差があると見るかどうか微妙なポイント数の差」だったことがうかがわれる。

これと全然違う世論調査結果は日経リサーチのそれであって、日経は「小池氏が序盤先行」と報じた。つまり、日経リサーチの調査では小池氏と他の候補者たちとの間に有意差がついていたわけだ。

私の知る限り、大手メディアによる世論調査結果はいまのところこの2種類しかない。日テレもテレビ朝日も出していない。それぞれ読売新聞・朝日新聞と組んで週末に調査を行い、週明けに発表するのであろう。

大手メディアの調査が2種類しかないのに「各社の世論調査結果が出揃った」も何もないものだ。全然わかっていない。

なお、都知事選の情勢はおそらく今週「バンドワゴン効果」が起きていて、来週初めに発表されるであろう朝日グループと読売グループの世論調査結果は、それを反映するものになるであろうと私は想像している。

なお、この記事を書いている最中、id:suterakusoさんからコメントをいただいた*1

踏ん張れ舛添と念じていたkojitakenさんも、それみたことかと、心中穏やかでないことを察しいたしますが、

というご想像は、その通りですが、

白票を投じざる得ない

というのは私の心境とは違っています。ぶっちゃけ、相手が舛添なら、こちら側の2人の候補者のどちらにも投票する気が起きなかった一昨年の選挙に白票を投じることもできましたが、相手が私としては絶対に許容できないあの極右にして新自由主義者の候補とあっては話が別です。鼻をつまんであの候補者(実は週刊誌の編集者をやっていた頃から大して買っていませんでしたが)に投票します。前回も、舛添ではなく今回と同じ極右新自由主義者が立候補していたなら、鼻をつまんで宇都宮健児氏に投票していたでしょう。

とはいえ今回はもうこれ以上都知事選のことは考えたくもないので、この週末に期日前投票をしようと思っています。7月最後の週末は天気が良ければ遊びに行こうと思っていて、その場合は国政選挙や主要な地方自治体の首長選の時に必ずといって行ってきた開票速報を転載する記事は書きません。8月1日の月曜日か2日火曜日の「きまぐれな日々」にでも都知事選を総括する(おそらくは書いている本人としても不快この上ない)記事を書いておしまいということになるでしょう。もちろん遊びに行く予定がなくなればいつもの通りやりますけど。