kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

『怪傑ハリマオ』の実在のモデル・谷豊、シンガポール陥落時にもやらかしていた極悪人・辻政信の戦争犯罪などなど/船戸与一『雷の波濤 満州国演義七』を読む

先刻読み終えた本。この週末に一気読みした。


雷の波濤 満州国演義七 (新潮文庫)

雷の波濤 満州国演義七 (新潮文庫)


昨年亡くなった船戸与一の晩年の大作『満州国演義』も、全9巻のうち第7巻まで読み終えた。新潮文庫版の最終第9巻が発売されたので、第8巻と一緒に今夕購入した。しかし月が替わるとまた少し暇がなくなるので、最後の2冊は来月後半にでも読むことになると思う。

この小説は1冊毎に2年時が進む。第7巻は1940年に始まり、1942年2月のシンガポール陥落で終わる。「満州国演義」と言いながら、太平洋戦争(大東亜戦争)が始まると、主人公である敷島4兄弟のうち次男の次郎と三男の三郎はマレーを経てシンガポールに姿を現す。

この第7巻の後半に、2人の「マレーの虎」が出てくる。一人は山下奉文中将(のち大将、1946年戦犯として処刑)で、もう一人がマレーで生まれ育った日本人盗賊にして諜報員の谷豊(1911-1943)で、『怪傑ハリマオ』のモデルだという。1960〜61年にテレビ放映されたという子ども向けテレビドラマ『怪傑ハリマオ』(日本テレビ)は、そのタイトルには聞き覚え・見覚えがあるものの番組を見たことはなく、従って中身も全く知らなかった。だから実在の人物がモデルだったとは初めて知った。それにしても、のちに『宇宙戦艦ヤマト』を放映して一部から批判を浴びた日本テレビは、それ以前から戦争のヒーローを賛美するドラマを作っていたらしい。まことに読売系メディアとは百害あって一利なしだ。

第7巻は太平洋戦争で日本軍の進撃がピークに達したシンガポール陥落で終わる。つまり、残りの第8巻と第9巻では坂道を転げ落ち、谷底に真っ逆さまということだ。今日はたまたま東京都知事選の投開票日で、自公の推薦はもらえなかったものの自公が推した増田寛也以上に安倍晋三の思想との親和性が高い小池百合子が圧勝したが、もしかしたら安倍の権勢も今がピークで、今後は転落の一途をたどるかもしれないな、とふと思った(何の根拠もないけれど)。

第7巻の巻末には、あの極悪非道の憎むべき軍人にして「下剋上」の権化・辻政信が引き起こした大きな戦争犯罪の一つであるシンガポール華僑虐殺が描かれている。第5巻の巻末は南京大虐殺だった。先の戦争で、日本軍はそんなことばかりやっていた。だから沖縄で集団自決を強要した。沖縄の集団自決は、ノモンハン事件の最大の責任者でありながら敗戦の責任を将校たちに負わせて自決を強要した辻政信や、その辻の責任をいっこうに追及しないばかりか逆に辻をのさばらせ続けた日本軍の体質が引き起こした惨劇にほかならなかった。

それにしても、シンガポール陥落という日本軍進撃の絶頂期においてさえ、平気で戦争犯罪をやらかした日本軍というのは、なんと恐ろしい軍隊だったのだろうか。そんなものをトリモロそうとしているのが安倍晋三なのである。