kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

「ペンパイナッポーアッポーペン」と「阪神優勝」

2003年の「阪神優勝登録商標騒ぎを思い出したのは私だけではあるまい。

無関係の「商標出願」繰り返す企業、ついに「ペンパイナッポーアッポーペン」も! - 弁護士ドットコム

無関係の「商標出願」繰り返す企業、ついに「ペンパイナッポーアッポーペン」も!

ピコ太郎さんの大ヒット曲「Pen-Pineapple-Apple-PenPPAP)」で使われるフレーズ「ペンパイナッポーアッポーペン」などが、大阪府内にある無関係の企業によって商標出願されていたことがわかった。

商標登録出願についてツイッターで情報を流しているアカウントの投稿が1月24日夜、ツイッター上で話題になった。弁護士ドットコムニュースが、特許や商標の検索サイト「J-PlatPat」で調べたところ、昨年11月に出願されていたことが確認できた。

ペンパイナッポーアッポーペン」は昨年11月24日と同月25日、「PEN PINEAPPLE APPLE PEN」は同月15日と同月28日、それぞれ2度にわたって、商標を使用する商品・役務をわけたかたちで商標出願されている。また、昨年10月5日と11月15日、28日には「PPAP」も商標出願されていた。いずれも審査待ちとなっている。

一方、ピコ太郎さんが所属するレーベルを傘下におさめるエイベックス・グループ・ホールディングスは昨年10月14日、「PPAP」を商標出願しているが、確認できるかぎり「ペンパイナッポーアッポーペン」「PEN PINEAPPLE APPLE PEN」については出願していない。

大阪の企業は、過去にも「STAP細胞はあります」「民進党」といった言葉など、既存の団体や人物に関連した商標を出願していた。特許庁は昨年5月、「一部の出願人から大量の商標出願が行われている」として注意喚起する声明を発表していた。

(弁護士ドットコムニュース 2017年01月24日 22時00分)

この件は昨夜(1/26)のニュース番組で知った。この件が広く世に知られるようになったので、これらの出願が登録査定を受けることはよもやあるまい。しかし、2002年2月には「阪神優勝」がプロ野球阪神タイガース球団とは全く関係のない千葉県の男性の申請によって、商標として登録されたことがあった。おそらく、登録査定をした特許庁の審査官はプロ野球には全く興味がなく、何も知らなかったのであろう。この件は、翌2003年、開幕から阪神タイガースが首位を独走していた頃に発覚した(当時の阪神監督はあの暴力男・星野仙一だった)。

http://www.shohyo-toroku.jp/news/archives/16.html

阪神優勝」の商標無効

阪神優勝」の商標を、阪神タイガースとは関係のない千葉県の男性が、2002年2月に商標登録していたことが2003年に話題になりました。ロゴ入りTシャツなどを販売していたことも報道されました。
これに対し、プロ野球阪神球団側は、「公認グッズと誤認される恐れがある」として、「阪神優勝」の商標登録無効を求めた審判を請求し、特許庁は球団の請求を認め、商標無効の審決を出しました。
 無効審判の審決では、「阪神」を「阪神タイガース」の著名な略称と認定し、商標「阪神優勝」は「商品の出所を混同させる恐れがある商標は登録できない」と定める商標法に反して登録されたと判断したものです。


 さて、無効審判とは、登録され権利が成立した登録商標について、商標法の所定の規定に該当することを理由として、登録を無効にするために特許庁に請求する手続です。今回は、無効審決により、登録が初めからなかったことになります。
 ところで、「阪神優勝」報道に関しては、ひと頃は、この個人が「阪神優勝」を商標登録したことにより、あたかも、阪神球団が「阪神優勝」の言葉を使えなくなるかのような誤った報道がありました。はっきり言えば誤報です。
 まず第一には、阪神の優勝という普通の言葉を普通に用いる分には、商標登録をされていても使用できること。
 第二には、登録商標を独占的に使用できるのは、その商標権の指定商品・指定役務(サービス)について、商標として使用する場合であるため、それに該当しない使用をすることに問題はないこと。
 そして第三には、登録された今回の商標は、文字だけではなく図形と組み合わされて登録されたものであり、図形まで使用する場合であればともかく、文字だけを普通に使用することに問題はないと見られたこと。
 最後には今回の無効理由があったと思われることです。
 商標や特許、特にソフトウェアやビジネスモデル特許の報道には、誤報じゃないかと思われる内容があまりにも多く目に付きます。


この件に関連して、「阪神優勝」商標の登録申請に関わったのと同じ代理人が、「××優勝」(××は某読売球団の通称で、このウェブ日記NGワード)の商標の登録申請も行っていたが、こちらは拒絶査定を受けていたのだった。出願人はこれを不服として拒絶査定不服の審判まで起こしたが、当然ながら拒絶査定は覆らなかった。その審決をネットで見つけて読んでしまった。

http://shohyo.shinketsu.jp/decision/tm/view/ViewDecision.do?number=1093597 より。引用文中には前記NGワードが頻出している。

2 拒絶理由の通知

当審は、請求人に対し、意見書を提出するための相当の期間を指定して、平成15年10月20日付け拒絶理由通知書をもって、拒絶の理由を通知した(通知書発送日 平成15年10月24日)。
その要旨は以下のとおりである。

(1)「巨人」の著名性
プロ野球は、わが国において一般に広く親しまれているスポーツであり、そのプロ野球の球団の一つである「読売ジャイアンツ」(法人名は「株式会社読売巨人軍」、以下同社を「読売巨人軍」という。)は、昭和9年に創設されて以来(例えば、インターネット検索情報:巨人軍年表 http://www.giants.jp/G/museum/g_history/index.html)、新聞、雑誌の記事やラジオ、テレビの放送等を通じて日常的にその報道がなされ、その報道に際しては、「読売巨人軍」、「読売ジャイアンツ」、「巨人」、「巨人軍」又は「ジャイアンツ」の名称が用いられていることから、「巨人」の名称は、本願商標の出願時前はもとより現在においても、一般国民の間に、プロ野球の人気のある球団名称を表すものとして親しまれ、著名なものとなっていることは顕著な事実である。

(2)「巨人優勝」の語義
本願商標は、前記1のとおりの構成よりなるところ、その構成中の「巨人」の語は、「なみはずれて身体の大きな人」等(広辞苑)の意味を有するものであるとしても、本願商標の構成においては、後半部に「競技などで第一位で勝つこと」等(広辞苑)の意味を有する「優勝」の語を伴うこと及び前記(1)で認定したとおり「巨人」の語が球団名称を表すものとして親しまれ、著名なものであることを併せ考慮すると、プロ野球読売ジャイアンツを指称するものとして理解させ、認識させるとみるのが自然である。
してみれば、「巨人優勝」の文字は、「読売ジャイアンツの優勝」の意味合いを認識させるものである。このことは、例えば、「巨人優勝」の語が、全国紙及びスポーツ紙等の新聞記事及びインターネットの検索情報(例えば、スポーツ報知新聞2001年9月4日付5頁、読売新聞2002年1月27日付東京朝刊36頁、「週間レビュー」のタイトルの記事2002年10月2日付 http://www.ne.jp/asahi/weekly/review/news021002/news021002-5.htm )において、相当な数を見出し得るものであり、これらは、読売ジャイアンツの優勝に関連する記事や話題等であることからも認め得るものである。

(3)取引の実情
プロ野球球団が、リーグ戦の開催中やリーグ優勝あるいは日本シリーズに優勝した際には、その球団を運営する法人と資本関係にある企業又は同法人の許諾契約を受けた企業が「(球団名)応援セール」、「(球団名)優勝セール」等と称して多くの商品の販売を行っていることはよく知られているところである。
そして、読売ジャイアンツの場合も、リーグ戦開催中には「巨人応援セール」と称し、また過去において優勝した際には「巨人優勝セール」と称して、読売巨人軍と資本関係のある百貨店や許諾契約を締結しているスーパーマーケット等が、読売ジャイアンツを応援すると銘打ったセール、優勝を記念したセールを行ってきた(例えば、読売新聞2000年9月25日付東京朝刊32頁、朝日新聞2002年11月1日付大阪地方版/石川33頁、読売新聞2000年10月27日付東京朝刊/埼玉33頁)。
さらに、読売巨人軍は、「ジャイアンツグッズ」あるいは「巨人グッズ」(以下「巨人グッズ」という。)と称して、読売ジャイアンツのキャラクターや球団の図形標章又は「ジャイアンツ」のロゴマーク等を表示したアパレル商品、ユニホーム、野球用具、玩具等多種多様な商品を、読売巨人軍自らあるいはその代理店を通じて販売しているところである(「巨人グッズ」に関するインターネットの検索情報:例えば、「GIANTS巨人情報ジャイアンツグッズ」http://www.tokyo-dome.co.jp/dome/giants/goods/、「AUCTION HISTORY 巨人グッズ関係」http://www2.airnet.ne.jp/ando/syuppin/GIANTS.html)。そして、上記球団に関連したセールで販売される商品及び「巨人グッズ」と称する商品には、本願の指定商品と同種の商品が少なくないものである。

(4)結論
以上の認定事実からすると、本願商標は、読売ジャイアンツを指称する著名な「巨人」の文字を構成中に有するものであるから、読売巨人軍と何ら関係のない出願人が、本願商標をその指定商品について使用する場合には、これに接する取引者、需要者をして、読売ジャイアンツを直ちに連想、想起させ、該商品が読売巨人軍又は同人と経済的又は組織的に何等かの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるものといわなければならない。
したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。


上記の文章には同意しがたい点が多々あるが(たとえば、“「巨人」の名称は、本願商標の出願時前はもとより現在においても、一般国民の間に、プロ野球の人気のある球団名称を表すものとして親しまれ、”という部分など。誰が「親しんで」なんかいるものか、と思った)、それにもかかわらず爆笑してしまった。たとえば、“その構成中の「巨人」の語は、「なみはずれて身体の大きな人」等(広辞苑)の意味を有するものであるとしても”のくだりなど。いや、大真面目でこんな議論をしなければならない仕事も大変だよね。

「ヤクルト優勝」ではあまりにも月並みなので、「読売最下位」や「くたばれ読売」などの商標でも申請しようかと思ってしまった今日この頃なのだった。