kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

「希望の党は再分配政策の公約を掲げた」と強弁する前原誠司の欺瞞

前原誠司の言い訳は、あまりにも見苦しい。全文引用はしないが、下記URLにアクセスすれば1どのクリックだけで全文が読める。


あまりにも突っ込みどころ満載の酷い文章だが、1点だけ挙げておく。下記の部分は特にひどい欺瞞に満ちている。

https://twitter.com/Maehara2016/status/916208852336390149

16 希望の党が発表した選挙公約には、「All for All」でも掲げた所得の再分配政策など、民進党が目指してきた社会像や理念が反映されました。「原発ゼロ」「隠ぺいゼロ」「受動喫煙ゼロ」といった、小池さんのこだわりも盛り込まれました。


前原がこんなことを言ってるが本当かと思って、希望の党(実質的には野望の党または絶望の党)の選挙公約のどこかに再分配政策のことが書いてあるのか調べてみたが、みつからなかった。下記の朝日新聞デジタルの記事(紙面では6日付夕刊1面に掲載=東京本社発行最終版)を見ると、まさか「ベーシックインカム」のことかと訝ってしまう。

http://www.asahi.com/articles/ASKB632GWKB6UTFK002.html

経済政策「ユリノミクス」掲げる 希望の党、公約発表
別宮潤一
2017年10月6日12時48分

 希望の党代表の小池百合子東京都知事は6日午前、衆院選公約と新党の政策集を発表した。「タブーに挑戦する気持ちで思い切った案を公約に盛り込んだ」と説明。公約に9本の柱を盛り込み、このうち「消費税増税の凍結」「原発ゼロ」「憲法改正論議を進める」ことを主要な「3本柱」とし、政策集では原発ゼロについて「憲法への明記を目指す」とした。

 「3本柱」のほかの柱は「議員定数・議員報酬の削減」「ポスト・アベノミクスの経済政策」「ダイバーシティー(多様性)社会の実現」など。柱のほかに「『希望への道』しるべ 12のゼロ」をスローガンに掲げ、隠蔽(いんぺい)ゼロ、受動喫煙ゼロ、花粉症ゼロ――などを打ち出した。

 消費増税の凍結について、小池氏は「個人消費が改善していない。(2019年10月に10%に)予定通りに引き上げるのはいかがなものか」と説明。財政再建策として、公共事業などへの歳出削減や国有資産の売却の徹底などを挙げた。

 原発ゼロは「30年までに」と年限を明記。今後、政策を進める考え方と位置づける政策集で「政権交代が起きても方針が変わらぬよう、原発ゼロを憲法に明記することを目指す」とした。憲法改正で小池氏は、「国会の憲法審査会で、憲法を真正面から議論していく。憲法改正に向けた大きなうねりを作る役割を果たす」と述べた。

 このほか「アベノミクスに加えて、マクロ経済に人々の気持ちを盛り込んだ『ユリノミクス』の政策を入れ込んでいく」と主張。政策集に、生活に最低限必要なお金を国民全員に給付する「ベーシックインカムの導入」を明記。大企業の内部留保への課税▽政府系金融機関や官民ファンドの廃止――などを掲げたが、必要となる財源規模には触れなかった。

 沖縄の米軍普天間飛行場移設問題については、「辺野古(移設)は着実に進める立場だ」と明言した。(別宮潤一)

朝日新聞デジタルより)


ベーシックインカムについて最近はほとんど書いていないが、ベーシックインカムそれ自体は経済左派でも経済右派でもない政策だ。この政策には、マルクス経済学系の支持者もいる一方、経済右派の代表的な学者だったミルトン・フリードマンも強力に推した。もちろん「人頭税だけ」のような論外の経済極右と比較すれば「左」だが、フリードマンには「定率課税+負の所得税」の提案があって、松尾匡氏は「負の所得税ベーシックインカムと数学的に同値だ」と指摘している。また橋下徹フリードマンの猿真似をしたことは、もう5年半も前にこの日記で指摘したことがある。

橋下が「経済左派」的な主張をしたことなど一度もない/田中康夫もひどいもんだ - kojitakenの日記(2012年5月30日)より

「きまぐれな日々」に寄せられたコメントのうち、橋下の経済政策に関するもの。

http://caprice.blog63.fc2.com/blog-entry-1255.html#comment14520

橋下の場合、右翼っぽい言動をしたときと左翼っぽい言動をしたときのどちらで支持を集められるかを巧妙に計算しているように思えるのです。


「公務員は組合など作らず服務規程に従って入君が代を歌い、入れ墨などにうつつを抜かさず黙って仕事しろ」と言えば、右翼的な言動が支持されますし、「再分配はきっちりやる。ベーシックインカムだ」などと言って左翼的な支持も取り込もうとしています。
大阪市民全員に君が代斉唱を義務づければ猛反発を受けるでしょうが、相手が教職員だと認めてしまう、悲しいかなこれが日本の有権者のレベルです。


日本の政治家や評論家は新自由主義支持を明確に認めません。長谷川幸洋が「新自由主義者とレッテルを貼る人間は相手にしない」などと述べたように、ネオリベは自分がネオリベであることを指摘されるとすぐにキレます。こういう連中は日本でネオリベが支持されないことを知っているのです。
しかしネオリベは実に大衆迎合的で、ネオリベであることを見抜けない有権者の票をかっさらうのには長けています。橋下はまさしくそういうクズどもを凝縮したようなものです。


私はミルトン・フリードマンを支持しませんが、その主張の存在自体は認めます。彼は自分が新自由主義であることを認めた上で政策を語っているからです。
橋下も河村もみんなの党も「自分たちは新自由主義者である」と堂々と述べるべきですよ。肝心なことだけを隠しておいて、ポピュリズムで票だけは取ろうとする態度は卑怯というものです。

2012.05.29 22:09 飛び入りの凡人


 いうまでもないが、橋下が「経済左派」的な主張をしたことなど一度もない。橋下は「ベーシックインカム」を「再分配」と僭称するが、フラットタックスと組み合わされた橋下の「ベーシックインカム」は事実上ミルトン・フリードマンの「負の所得税」と同じであり、フリードマンは究極の「小さな政府」を目指すためにこの政策を考案した。「バサーット切る」が口癖の橋下は、フリードマン流を地で行っている。竹中平蔵でさえ所得税増税(累進制の強化)には賛成していることを考えると、橋下の「経済極右」ぶりは日本でも類を見ないほど過激なものだといえるだろう。

 そんな橋下が「再分配」という言葉を持ち出しただけで「橋下をネオリベときめつけるのは適切でない」というのは、あまりにもナイーブな見方だし、こんな橋下の言葉に騙されるようでは、「経済左派」はいつまで経っても伸びないだろう。(後略)


前原誠司は、井手英策をブレーンに迎えて編み出した "All for All" の経済政策は、希望の党の公約にも活かされてますよ、と言いたいのだろうが、井手理論と希望の党の公約はかけ離れている。その最たるものは消費税に関する主張で、井手氏は消費税率を10%どころかさらに引き上げることを主張しているが、希望の党の公約は消費税率引き上げ凍結だ。なお私自身は、中長期的には消費増税も必要になる局面が来るだろうが、喫緊の課題は不公正税制の是正にあり、まず直接税の課税ベース拡大が必要で、消費増税はその先の課題だと考えている。これは、2010年6月に当時の総理大臣だった菅直人が唐突に消費増税を言い出す前に、菅政権のブレーンだった神野直彦(井手氏の師匠に当たる)が唱えていた政策だ(神野氏は菅直人に妥協してしまったが)。

井手氏にインタビューするなど、井手氏に好意的な論調だった朝日新聞は、今回の前原の希望の党への「身売り」について井手氏のコメントでも取ってはどうだろうか。氏は「裏切られた」と前原に対して怒り心頭なのではないかと私は想像しているのだが。