kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

「自民党支持層」を切り崩すことが肝要。リベラル・左派は内輪にしか通用しない言説に安住するのを直ちに止めるべき

世論調査や選挙に関する精緻な統計的分析に定評のあるはる氏は、明らかにリベラルまたは左派に属する人だが、氏が信頼できると思うことの一つに、同じ立場の人に対しても鋭い批判を投げかけることだ。

たとえば先日、きむらとも氏が下記のツイートを発信した。

https://twitter.com/kimuratomo/status/977916760211927040

きむらとも
@kimuratomo

TVで、党内から安倍降ろしになるかは「今後内閣支持率がどうなるかによる」って、なんだよそれ。内閣支持率が下がらなかったら、安倍に反旗を翻すのは怖い、内閣支持率が下がったら怖くない。内閣支持率なんて、そんないくらでも操作できる指標で日本国民の命運が決められてしまうって、なんだよそれ。

7:34 - 2018年3月25日


このツイートをはる氏は批判した。

https://twitter.com/miraisyakai/status/980440617372213248

はる/みらい選挙プロジェクト
@miraisyakai

内閣支持率が「いくらでも操作できる指標」だなんていうのは、幻想です。

6:43 - 2018年4月1日


これははる氏に軍配を上げるほかない。

この「崩壊の時代」にあって、自分の意見に都合の悪い世論調査を「操作」だと言って「なかったこと」にする傾向は、ネトウヨにも「リベラル・左派」(括弧付き)にも強く目立つ。日本で政治について語る人たちがどんどん幼稚になってきていることの表れにしか、私には見えない。そして両陣営とも、陣営内で仲間を批判する言論がタブー化され、ムラ社会の内輪でしか通用しない言葉であふれ返っている。その結果、後世の歴史家から「異議を唱えるものが絶え果てた『崩壊の時代』」と評されることになる。今はそれが現在進行形で行われている時代だ。

以上は前振り。本論は、はる氏の下記の分析だ。

https://twitter.com/miraisyakai/status/980716663740932096

はる/みらい選挙プロジェクト
@miraisyakai

読売・共同ともに佐川氏証言「納得できず」7割超 / 内閣支持率の下落を止めたものは?
https://note.mu/miraisyakai/n/n224070c12eea

多くの人が見落としていたのは、無党派層内閣支持率はすでに失墜しており、これ以上は自民党支持層が内閣の支持をやめていかない限り内閣支持率が下がらないことです。

1:00 - 2018年4月2日


上記ツイートに含まれるリンク先の記事を以下に引用する。

無党派層内閣支持率はすでに10%台。だからこそ、自民党支持層が内閣支持率の増減を握ってます。


今週発表された読売新聞と共同通信世論調査からは、直近1週間で内閣支持率がやや回復傾向となった一方で、不支持率が依然として高水準にとどまっていることが示唆されていました。読売新聞では佐川氏の説明に「納得できず」が75%、共同通信では佐川氏の証言に「納得できない」が72.6%となっています。この状況で内閣支持率はどうして底を打ったのでしょうか?

ぼくが受け取った返信で多くの人が見落としていたのは、無党派層内閣支持率はすでに失墜しており、これ以上は自民党支持層が内閣の支持をやめていかない限り内閣支持率が下がらないことです。

無党派層に限定した内閣支持率は、最近のものを例に挙げると3月17〜18日実施の毎日新聞の調査では15%、3月23〜25日実施の日経新聞の調査では18%になっています。これら無党派層からの内閣支持が完全に削れたらどうなるのかをイメージするために、無党派層の割合を掛けて内閣支持率への寄与を計算してみましょう。

世論調査にはいろいろな偏りがあるので、11社すべてのなかから特定の何社かを選んで論理を組み立てているものには注意が必要です。意図的に都合のいい複数の調査社だけを選び出して整合していると見せかけることが可能だからです。ここでは、あえて今週発表のものではなく先週の日経と先々週の毎日を使いますが、これは長期的に見て日経新聞が最も高い内閣支持率を出す傾向があり、毎日新聞が最も低い内閣支持率を出す傾向があることから、上限と下限のイメージを把握できるだろうと考えて選んでいます)

まず毎日新聞世論調査の数字ですが、無党派層の割合は39%なので、無党派層内閣支持率15%と掛け算してみれば内閣支持率に対する無党派層の寄与が5.85ポイントであることがわかります。

日経新聞では無党派層は31%なので、無党派層内閣支持率18%をかければ寄与は5.58ポイントとなります。

毎日新聞発表の内閣支持率は33%ですから、無党派層の寄与5.85ポイントを引くと、27.15%でしょうか。もともと発表された数字が小数第一位が四捨五入されたものなので、ほぼ27%と見ることができますよね。

日経新聞ではどうでしょうか。日経発表の内閣支持率は42%なので、無党派層の寄与5.58ポイントを引くと、36.42%、つまり36%ほどということになります。

まとめると、無党派層の支持を完全に喪失したときの内閣支持率は、毎日で27%、日経で36%程度です。毎日は最も低い支持率を、日経は最も高い支持率を出す傾向がありますから、だいたい真ん中を見ても30%以上になる。

そうすると、政党支持層が変化しなければという単純化をした上の話になりますが、無党派層が誰一人内閣を支持しなくなったところで倒閣危険水域(内閣支持率30%未満)には入らないだろうということが見えてきます。

そうであるのなら、内閣支持率を引き下げる余地はどこにあるのでしょうか。それは自民党支持層になりますよね。

もちろん野党でも維新のような政党もあって、この前ウィキペディアで「与党」の説明を見ていたら維新が与党扱いになっていて笑ってしまいましたが(与党の欄に載っているうえに「※癒党でもある」と書いてあった)、まあそういう政党の支持層は内閣を支持している割合が高いとはいえ政党支持率自体が低いから寄与として小さいと見ておくと、決め手はどうしても自民党になります。

少し荒っぽい話ですが、内閣支持率が30%水準に迫ってきたようなときには、増減は自民党支持層が握るようになるんですね。内閣支持率が下がるというのは、これまで支持していた層が離れるということですから、不支持層がどんなに不支持の感情を強めようが関係はありません。

佐川氏の証人喚問に多くの有権者が納得していなくても、自民党支持層が「まあ少し落ち着いたな」と見れば上がる可能性はある。そういうイメージをもって見れば、不支持率が依然として高い状況も腑に落ちるのではないでしょうか。(後略)

(はる/みらい選挙プロジェクト「読売・共同ともに佐川氏証言「納得できず」7割超 / 内閣支持率の下落を止めたものは?」2018/04/02 16:59 より)


この分析も説得力十分だ。

ところで、自民党政党支持率が約30%ということだが、これはずっとそうだったんだろうか、たとえば政権交代のあった2009年前後はどうだったんだろうかと思ってちょっと調べてみた。みつけたのはNHK世論調査。これで2004年以降の各党の政党支持率の表を見てみた。まず小泉政権時代の2004年は、年間通して自民党政党支持率は30%前後だ。


これが2005年になると、郵政総選挙を境に、9月以降の自民党政党支持率は4割を超えている。


この傾向は2006年3月まで続くが、ライブドア事件の影響か、同年4月からは自民党政党支持率は3割台に戻った。しかし第1次安倍内閣発足直後の2006年10月だけは4割を超えた。


第1次安倍内閣が倒れた2007年にも、安倍内閣支持率は8月に一度29%を記録しただけで、内閣が倒れた9月にも、内閣改造の効果かどうか内閣支持率は34%を記録している。また自民党政党支持率が3割を切ったのも、2007年8月と9月だけだ。


福田内閣が倒れた2008年も、時折自民党支持率は2割台を記録したが、概ね3割を超えている。ところでこの年5月に福田内閣支持率も自民党支持率もともに一時的に大きく下落しているが、何の影響だったのだろう。直ちに思い出せない。9月に福田内閣支持率が大きく下げたのは、福田康夫が政権投げ出しをこの年の9月1日に表明した影響だ。


政権交代のあった2009年は特異的だ。自民党支持率が3割を超えたのは5月だけで、下野後は政党支持率1割台に転落し、11月には14.1%にまで落ちた。


民主党政権時代の2010年は、10月になってようやく自民党政党支持率が2割台に回復した。


しかし自民党政党支持率回復は2011年にまでは続かなかった。年間通して2割前後で低迷した。東日本大震災と東電原発事故の菅政権の対応が批判されて自民党が党勢を回復したわけでは全くないことがわかる。


自民党政党支持率が本当に回復したのは、年末に政権復帰を果たした2012年だ。自民党政党支持率が2割を切ったのは、2012年7月が最後だ。


第2次安倍内閣の実質的に最初の年である2013年は、年間通して自民党政党支持率は4割前後で推移した。2012年12月の衆院選を境にしたこの変化も劇的だ。


同じ傾向は2014年も続く。自民党政党支持率は前年よりやや下げたものの、平均すれば4割近い高水準を保った。


安保法制で揺れた2015年も、前年に引き続きやや下げたものの自民党支持率は3割台後半を誇った。年間を通じて内閣支持率自民党支持率を下回ったことは一度もない。


2016年になると、内閣支持率自民党支持率ともに高止まりの傾向が顕著に見られる。


2017年の森友・加計問題で、ようやく自民党支持率が崩れ始めた。しかしその崩落は一時的な者にとどまってしまった。


そして2018年。3月のNHK世論調査財務省が公文書改竄を認める直前だったためか、その影響は支持率調査に反映していない。


ざっとこんなところ。

これを概観して、「自民党支持層から安倍内閣支持を切り崩す」視点も確かに必要だが、それ以上に自民党支持層自体を切り崩す必要を痛感した。

そのためにも、リベラル・左派はいい加減、内輪にしか通用しない言説でマスターベーションにふける悪弊を自覚して、それからの脱却を図らなければならないと強く思う今日この頃だ。