「反新自由主義」の旗を安倍総理から取り返せ : 広島瀬戸内新聞ニュース(社主:さとうしゅういち)(2018年4月4日)より
実は、野党側を、「安倍総理より新自由主義では」と警戒し、自民党を支持している人も意外と多いと感じる。
旧民主党=新自由主義という特に警戒は結構ある。
「クリーンだけど新自由主義」というイメージで野党を敬遠し、自民党を消極的に支持している層は取り返さないといけない。
クリーンかつ庶民の味方。
そういった政策をもっと野党も押し出すべきだ。
共産党あたりも、旧民主党に忖度して、せっかくの消費税増税反対、富裕層増税などをトーンダウンさせてはいけない。
却って失望されかねない。
野党共闘は大事だが、大人しくなってはいけない。
IMFさえ、富裕層増税に舵を切っているのだから。
「野党側を、『安倍総理より新自由主義では』と警戒」させる一因として、どういうわけか、「リベラル・左派」のうち少なくない人間が、安倍政権の経済政策のうち、特に「金融緩和」に批判の焦点を絞りたがる傾向があるように思われる。
これは、リベラル・左派のコンセンサスでも何でもなく、同政権の金融政策よりも緊縮志向かつ傾斜配分が甚だしい財政政策や、新自由主義イデオロギーむき出しの規制緩和志向に批判の中心を据えるべきとの立場もある。私もその立場に属する人間だが、リベラル・左派の主流の意見とはなっていない。また未だに高度プロフェッショナルという名の「残業代ゼロ」法案に固執する安倍政権の労働政策もひどいものだが、裁量労働制に関する厚労省のデータ偽造が一時期問題となって法案提出断念に追い込めたものの、高プロ法案断念にまでは追い込めていない。なぜ敵の弱点を攻めようとせず、リベラル・左派内にも異論の多い「金融緩和批判」(世界的にはリベラル・左派にはむしろ金融緩和を支持する学者の方が多い。アメリカのスティグリッツやクルーグマンが好例)にばかり走ろうとするのか、私には全く理解できない。私はそんな方向に走りたがる面々は、「より安倍政権との相違点が多い方が、より安倍政権に対する強い批判者であることができる」かのようなイキリ根性をアピールしたがる幼稚な心性の者たちなのではないかと疑っている。あるいは、金融政策に一定の理解を示す者に「『アベノミクス』*1支持者」とのレッテルを貼って「リベラル・左派」内部での主導権を握りたいという浅ましくも内向きの論理にとらわれているのかもしれない。もちろん、金融緩和さえやっていれば財政政策など不要だとする高橋洋一のような「りふれは」(by 濱口桂一郎)はどんなに厳しく批判しても厳しすぎることはないとは私も思うけれども。
『広島瀬戸内新聞ニュース』の記事に戻ると、共産党が「旧民主党に忖度して、せっかくの消費税増税反対、富裕層増税などをトーンダウンさせ」ている事態が実際にあるのかどうか、共産党支持者ではない私にはわからないが、昨年の衆院選を前にした共産党の下記の政策などは、同党はもっと声を大にして宣伝すべきだろう。
07、税制(2017総選挙/各分野の政策)│各分野政策(2017年)│日本共産党の政策│日本共産党中央委員会 より
富裕層優遇の不公平税制をあらためます
この間、富裕層への減税が繰り返されてきました。99年には、所得税・住民税の最高税率(課税所得3000万円超)が、あわせて65%から、50%に引き下げられました。2003年度には「証券優遇税制」が導入され、上場株式の配当所得や株式譲渡所得の税率は、わずか10%(所得税7%、住民税3%)に軽減され、これが2013年まで11年間も続きました。証券優遇税制が廃止された今でも、配当や株式譲渡所得への税率は、どんな富裕層でも20%(所得税15%、住民税5%)という低い税率になっています。ほんらい所得税は、所得が高い人ほど負担率が高くなる累進税制になっているはずです。ところが、国税庁の統計では、所得が1億円を超えると逆に負担率が下がってしまいます。2014年分の統計データで計算すると、所得5000万円〜1億円の層の所得税負担率は28.7%なのに、所得100億円超の超富裕層では17.0%しかありません(図表3=引用省略[引用者註])。お金持ちほど、株式や土地の譲渡所得などが多く、これらの所得の税率が低いからです。こんな不公平がまかり通っていたのでは「働くのが、ばからしい」という風潮を広げてしまいます。こうした金持ち優遇税制を改めることが、消費税増税にかわる必要な財源を確保するためにも、格差と貧困の是正に向けて税制による所得再分配機能を再建・強化するためにも、不可欠となっています。
──引き下げられた所得税・住民税の最高税率を引き上げ、累進税制を強化します。所得税の最高税率は、2015年に引き上げられましたが、対象は課税所得4000万円超(5万人程度)に限定され、引上げ幅もわずか5%です。税収も600億円足らずしか増えませんでした。99年に所得税・住民税あわせて15%引き下げられた税率を元の水準に戻せば、1兆円以上の増収が見込めます。
──世界に例を見ない大資産家優遇の配当や株式譲渡所得の税率軽減措置を改めます。証券優遇税制が期限切れとなり、所得税・住民税あわせた税率は20%となりましたが、欧米の富裕層の株式配当への最高税率は、アメリカ(ニューヨークの場合)32.7%、イギリス38.1%、ドイツ26.375%、フランス60.5%(配当の6割が所得とされるため、実質的には36.3%)、株式譲渡所得への最高税率も、アメリカやドイツは配当と同じ(いずれも2015年1月現在)であり、日本は依然として低い状況が続いています。これによる減税額は、財務省の16年度の見込み試算(所得税のみ)でも1兆円を超えています。
株式配当は少額の配当や低所得者の場合を除き、勤労所得などとあわせた総合課税を義務づけ、富裕層の高額の配当には所得税・住民税の最高税率が適用されるようにします。譲渡所得についても将来的には総合課税とすることを検討しますが、分離課税が続いている間も、欧米諸国の水準にあわせて高額所得者には30%以上の税率が適用されるようにします。(後略)
この共産党の政策は、何も共産主義政党の政策でも何でもなく、同党が欧米各国の例を引いていることからも明らかなように、先進資本主義国で普通に行われているのと同等の税制にせよと言っているに過ぎない。
しかし、証券等の配当益や譲渡益に強く反対するのは、何も富裕層には限らないのが今のこの国の人々の実態だ。なぜ「努力した者が報われる」ことにすら該当しない不労所得への増税に人々が拒絶反応を示すのか、私にはさっぱり理解不能だ。
上記引用文中から省略したグラフは、懐かしい「申告納税者の所得階級別の所得税負担率」であって、引用文にもあるように、「所得が1億円を超えると逆に負担率が下がってしま」っている。
2010年、このグラフを引用した記事をこのウェブ日記に公開したが、その記事は今に至るもこの日記についた「はてなブックマーク」としては最多のはずだ(記憶に基づいて書いているので誤りかもしれないが)。その頃には既に、自分の書いた記事のブックマークコメントは既にあまり見なくなってはいたが、それでもネガコメが圧倒敵に多かったという話は聞かない。
しかし昨年だったか、上記共産党の政策と似て、株式等の譲渡所得の税率を(今でも軽減措置が続けられているはずの小口の分を除いて)30%に増税すべきだと書いた記事を公開したら、すさまじいネガティブコメントの嵐だったそうだ。私はそれを実際に見ていないが(他人がつけた「栞(しおり)」なんかを見てる暇があるなら、本を読んだり新たな記事を書いたりする方がよほど良いというのが私の信念だ)、実際にブコメを見た読者の方に教えていただいた。
そのような無理解が蔓延している世の中だからこそ、共産党には上記の政策を強く訴えてもらいたい。
また、この程度の政策は本来立憲民主党や民進党や自由党あたりでも普通に打ち出して当然だし、それどころか自民党が本当に一部の人たちが喧伝するような「経済政策ではリベラル」な政党であるのなら率先して打ち出してしかるべき政策だと思うので、「再分配を重視する」論者ももっと声を張り上げるべきだと自戒を込めて訴えたい。
自戒を込めて、といえば、下記の共用ブログはもう1年以上も新たな記事の公開がない(2017年はついに更新が一度もなかった)。これを機に、改めて新規記事の寄稿を募ります。有志の方々にご協力いただければ幸いです。
*1:この日記ではこの言葉は原則として禁句だが、金融緩和批判者には、なぜか反安倍のはずなのにこの言葉を用いたがる傾向が強い。