kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

「リベラル・左派」側から「新皇后は前皇后と同じように振る舞え」と圧力をかけるのはいかがなものか

 私はそもそも天皇制に反対する立場の人間だから、前天皇*1の退位だの新天皇の即位だのに伴う「おことば」の映像や新旧天皇が発した音声には接していないのだが(記事を多少目にしてはいる)、新皇后が宮中祭祀に不熱心なのではないかと論難する声が「左」側から上がっているようだ。

 

 

 これに関連するかどうか、最近あまり覗かなくなった「はてなブックマーク」の「マイページ」を覗いてみたら、天皇家の人間関係や宮中祭祀をめぐるブクマコメントが目についた。

 

天皇陛下 最後のおことば 全文 | NHKニュース

まぁ男系派に肩入れした現政権のお陰で家系断絶の危機に立たされたままの退位だけど、あとはお前らで考えろよって感じだろうな。あと長男の嫁は姑サイドからの有形無形のプレッシャーが減るんだろうな

2019/05/01 07:34

b.hatena.ne.jp

 

 このコメントにある「長男の嫁」とは新皇后、「姑」とは前皇后*2を指すのだろう。

 他に下記のブクマコメントも同様の件に言及している。

 

新しい天皇陛下が即位 時代は令和に | NHKニュース

代替わり騒ぎの中で親父の存在感が倅のそれをかき消してたのが面白かった/靖国の前宮司が「新しく皇后になる彼女」は神道嫌いだと言ってたが、どうか。祭祀の手抜きは前任者が大バッシング受けた際の理由の一つだし

2019/05/01 06:17

b.hatena.ne.jp

 

 このコメントの「前任者」は昭和天皇で、昭和天皇を「大バッシング」したのは大正天皇妃にして昭和天皇の母だった貞明皇后なのだろうか。それとも、大バッシングを受けたとは前皇后で、バッシングしたのは右翼や香淳皇后昭和天皇妃)を指すのだろうか。このあたりはよくわからない。

 ただ、間違いないと思われるのは新皇后と宮中祭祀のかかわりが、「令和」とやらの「新時代」における天皇制に関して大きな議論になるだろうことだ。

 その際、右翼は新皇后に宮中祭祀を真面目にやれと圧力をかける側に立つだろうから、最初にツイートを引用した「世に倦む日日」は一般的に「左」と目されているけれども、右翼と同じ側に立つことになる。

 前記「世に倦む」氏のツイートには、下記の反応がついている。

 

 

 えっ、原武史が「ご皇室」とか「皇后『陛下』」とか「おいでになる」なんて敬語使うのか、嘘だろと思ってリンク先(『AERA』2019年4月29日-2019年5月6日合併号の記事)に当たってみると、確かに原武史の文章だったが、原自身の言葉ではなく引用文だった。以下原文を引用する。

 

 93年になると、昭和天皇香淳皇后が住んでいた吹上御所に代わる新御所の建設を機に、「皇室バッシング」というべき現象が生まれた。宮内庁職員を自称する「大内糺(ただす)」という人物は、こう述べている。

「本来、ご皇室にとって皇后陛下は、あまり意味のある存在ではない。ご公務はもちろん、大抵の儀式も天皇陛下がおいでになれば事足りる。(中略)それなのに、最近では国際親善の場面にとどまらず、あらゆるところにご夫妻として参加されるようになってきているのである」(「皇室の危機」、「宝島30」93年8月号所収)

 

(「両陛下が確立した平成の皇室像に紆余曲折…乗り越えた右派の批判」より-『AERA』2019年4月29日-2019年5月6日合併号)

 

 自称宮内庁職員(本当かどうかはきわめて疑わしいと聞く)の「大内糾」とやらが四半世紀前に発した「宮中祭祀に皇后が出しゃばるな」というのは、いくらなんでも極端な意見であって、一般的な右翼は「神道嫌い」の皇后より宮中祭祀に熱心な皇后を当然歓迎するだろう。そう私は思うのだがいかがか。

 

 なお、原武史の『平成の終焉』(岩波新書)には、下記の記述がある。

 

 ポスト平成の宮中祭祀行幸

 

 雅子妃は適応障害と診断されたように、平成の宮中という環境に適応できないことが体調悪化の原因となりました。そうだとすれば、代替わりによる環境の変化は、逆に体調を回復させる原因になるという見方もできるでしょう。

 その場合、新皇后が宮中の改革に乗り出す可能性は、大いにあるように思われます。具体的にいえば、自らも苦しんだであろう血のケガレという宮中のしきたりにメスを入れ、男性よりも負担がかかる環境を改めることが考えられます。公務が再開できない限り、宮中祭祀への雅子の出席はないと皇太子徳仁は言いましたが、平成になってかつてないほど絶対化した宮中祭祀そのものが見直されることになるでしょう。(後略)

 

原武史『平成の終焉 - 退位と天皇・皇后』209-210頁)

 

 私自身は新皇后に特に期待するところはないが、原武史の指摘によればせっかく新皇后が宮中を改革する可能性を持っている(かもしれない)のに、わざわざ「リベラル・左派」側から新皇后に「前皇后と同じように振る舞え」と圧力をかけるのはいくらなんでもいかがなものだろうか。

*1:上皇」という言葉は嫌いなので、この日記では引用文を除いて原則として使わないことにした。

*2:この日記では「上皇」同様、「上皇后」も引用文以外では原則として用いない。