kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

山本太郎、参院選比例区で「特定枠」を2つ使い、比例で党が320万票獲得しなければ自らが議席を失う「身を切る改革」を断行

 昨夜(7/3)は遅く帰って『news23』で途中まで放送された7党の党首討論で、持ち時間を無視する安倍晋三の傍若無人さに憤慨したり、TBSが小川彩佳をスカウトした効果が初めて出たなと思ったりしたが(小川氏の仕切りぶりはなかなか良かった)、それらよりも気をとられたのは、ネットで知った山本太郎(の元号政治団体)の参院選戦略だった。党首討論には出なかった山本太郎の動きこそ、サプライズに値した。以下朝日新聞デジタルから。

 

www.asahi.com

 

れいわ山本太郎氏、比例区で出馬 特定枠にALS患者ら

 

 政治団体「れいわ新選組」の山本太郎代表(44、参院議員)は3日、東京都内で記者会見し、参院選比例区から立候補することを表明した。前回2013年の参院選では東京選挙区から立候補して当選した。山本氏は「6年前と同じ1議席でいいのか、私は納得がいかない。1議席をより増やせるという市民の力を示していく必要がある。目標議席は5。政党要件をクリアしたい」と述べた。

 また山本氏は、比例区で個人の得票に関係なく優先的に当選できる「特定枠」を活用することも表明。1位に筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の舩後靖彦氏(61)、2位に重度障害のある木村英子氏(54)を充てる。

 れいわの擁立候補者は計10人。山本、舩後、木村の3氏以外は次の通り。(いずれも新顔、敬称略)

 【東京選挙区】野原善正(59)=創価学会

 【比例区蓮池透(64)=北朝鮮による拉致被害者家族連絡会元事務局長▼安冨歩(56)=東大東洋文化研究所教授▼三井義文(62)=元コンビニオーナー▼辻村千尋(51)=環境保護NGO職員▼大西恒樹(55)=元外資系銀行員▼渡辺照子(60)=元派遣労働者

 

朝日新聞デジタルより)

 

 山本太郎比例区に転出することは、数日前からその気配がきわめて濃厚になっていたから驚きはないが、「特定枠」を2つも使って、山本氏自らは比例区で政党(元号政治団体)が3議席以上の当選者を出さなければ議席を失う決断をしたことが最大の驚きだ。つまり、比例区で「山本太郎」の個人名で投票しても、まず最初に当選するのは舩後靖彦氏、2人目は木村英子氏であって、3議席を確保して初めて山本氏が議席を守るのだ。

 

 

 先日、山本氏が参院での麻生太郎らへの問責決議案の投票を棄権した時、誰よりも痛烈に山本氏を批判した「国会ライター」の平河エリ氏が、誰よりも大きな感嘆の声をあげたことが目を引いた。

 

 

 

 斉藤里恵氏は立憲民主党比例区候補で、幼少時に完全失聴し、2009年に刊行した自著の『筆談ホステス』で一躍有名になった。2015年に旧みんなの党系の「日本を元気にする会」から東京都北区区議選に出馬して当選したが、今回の参院選立憲民主党からスカウトされた。立民支持層の中には、山本太郎元号政治団体に対抗して、斉藤氏の個人名で投票しようと考える人が増えるかもしれない。また横沢高徳氏は2010年のバンクーバーパラリンピックの日本代表として活躍した元チェアスキー選手で、岩手県選挙区の野党統一候補(無所属)だ。山本氏の決断は、岩手県選挙区での横沢氏の得票を上乗せする効果も期待できる。

 

 全体に、山本太郎政治団体の候補者選定からは、これまでの政治から切り捨てられて(疎外されて)きた層から選ぶという明確なコンセプトが感じられた。これを『広島瀬戸内新聞ニュース』は「当事者主義」という言葉で表現している。

 

hiroseto.exblog.jp

 

派遣労働者、そして、ALS当事者を擁立。当事者主義がよく伝わってきました。
 
「当事者主義」かつ「庶民のメシ」重視の新選組

新選組の候補擁立は、徹底した「当事者主義」と感じた。こういう勢力が政党要件を満たすことは意義が大きいと思う。そして、いわば「庶民のメシ」を最優先する姿勢は、既存野党(特に日本共産党以外)の尻に火をつけ、国民民主党辺りからもそれなりに面白い政策も出ている。
党首討論には出られなかったが、現時点でそれなりの影響を与えていると思うし、政党要件を満たしてほしいと期待する。野党に対する「庶民のメシ」に冷たいイメージが変わる契機になればと思う。(安倍総理はもっと庶民のメシに冷たいのだが巧妙に隠している)
(なお、さとうしゅういち自身は、比例区日本共産党を軸に応援も新選組に期待、選挙区は無所属で、国民、立民、社民推薦の森本しんじさんを軸に応援します。)

 

出典:https://hiroseto.exblog.jp/28441291/

  

 山本太郎三宅洋平だの三橋貴明だのを担ぐのではないかとの私の懸念は幸いにも外れた。また、山本氏はやれ前川喜平を担げだのと有名人の名前ばかり挙げていた「山本太郎信者」たちの願望も外した。それどころか、自らを3議席当選しないと議席を守れない立場に追い込んだことで、「政治は特定のカリスマに依存して行うものではない」との強いメッセージを発したと私は受け取った。これは大いに評価しなければならない。やれ小泉純一郎だの小沢一郎だの細川護煕だの小池百合子だのと、今世紀に入ってからの選挙ではあまりにも「カリスマ依存」の度が過ぎて、民主主義が本来のあり方からどんどん逸脱してきていた。カリスマに頼る政治が行われるのはとんでもなく悪い時代なのだ。ヒトラーのドイツがその最悪の例だし、日本でも(今もひどいが)小泉純一郎の「郵政総選挙」(2005年)の前後は最悪だった。

 一昨年の衆院選では枝野幸男が「草の根民主主義」を口にしたが、「立民信者」たちはその枝野をも担ぎ上げてしまった。そして、「山本太郎信者」には、各党や書く政治家が抱える「信者」たちの中でも飛び抜けて個人崇拝度の強い狂信的な人間が多い。今回の山本太郎の決断は、山本氏自身が自らの「信者」たちに挑戦状を叩きつけたかに見える。

 前述のように、誰よりも痛烈な皮肉を山本氏に対して放った平河エリ氏が、誰よりも真率さの感じられる感嘆の声を挙げたことにはまことに印象深かった。批判すべき時には全力で批判し、感心した時には率直に心情を吐露する。これこそ自由な精神のあり方だと感心した。政治に関心を持つ者は平河氏のあり方を見習うべきだ。

 なお私は現在東京都に在住しているので、東京選挙区において当選の可能性が出てきた日本維新の会の音喜多駿を落とすための「戦略的投票」を迫られることになった。先日読んだ三春充希氏の『武器としての世論調査』にその「戦略的投票」の話が載っていて(同書236-240頁)、例示されているのがまさにその2016年選挙区における東京選挙区であり、それは私自身がまさに実践した投票行動だった。あの選挙で私は、当時のおおさか維新の会公認の田中康夫を落選させるために、「鼻をつまんで」民進党公認の小川敏夫に投票し、その甲斐あって小川氏は最下位で当選、田中は落選したのだった。

 

www.chikumashobo.co.jp

 

 この『武器としての世論調査』は広く読まれるべき本だ。特に、世論調査が世論を誘導するものだとか、ましてや「ムサシ」による「不正投票」だ、などと言い募りたがる傾向のある人たちは必ずこの本を読まなければならないとさえ思う。

 先日(6/29)、くりぃむしちゅー上田晋也が土曜日早朝にTBSでやっていた『サタデージャーナル』が最終回を迎えた。私は、『リテラ』などがほめそやすほどにはこの番組も「くりぃむ上田」も買っていなかったのだが(何よりコメンテーターを務めていた元TBS政治部長の龍崎孝は露骨な保守派だ)、番組の最後に上田氏は良いことを言った。以下、『晴天とら日和』から引用する。

 

blog.livedoor.jp

 

 上田晋也かく語りき。

 

 最後に、また当たり前のことを言わせていただこうと思いますが、
 私は政治、そして世の中を変えるのは政治家だとは思っていません。

 政治、世の中を変えるのは、我々一人一人の意識だと思っています。
 みなさま、どうもありがとうございました。

 

 私はこの言葉を耳にして、初めて上田氏への認識を改めた。数年前に水曜日の深夜だったかにやっていた『サタデージャーナル』の前身番組、たしか『ニッポンの過去問』といったかと記憶するが、あの番組は同じTBSなのに『サンデーモーニング』よりずいぶん右寄りだなあと思ったものだ。しかしそれから数年、『サンモニ』が見るも無惨に右傾化したのに対して上田氏はみごとな成長を遂げたようだ。

 上田氏の言葉を借りるなら、政治、そして世の中を変えるのは、カリスマ政治家ではない。そのことを山本太郎は「自らの身を切る」形で訴えたように見える。

 これまでカリスマに依存する「信者」のあり方を露呈させてきた山本氏の支持者たち、あるいはネット言論に流されているだけにしか見えない人たちが自らを変えていけるかどうか、それは今後にかかっている。

 なお私自身は山本太郎政治団体は名前に元号を冠している時点で全く支持しないし、比例区の投票は社民党吉田忠智の名前を書くと前から決めており、その投票行動を変えるつもりはない。しかし、東京都選挙区においては、音喜多駿(維新)と、あわよくば武見敬三(自民)をも落選させるための戦略的投票に切り替える。誰に投票するかは、候補者の主張や公約と選挙情勢によって判断する。

 

【追記】(2019.7.6)

 記事の最後に公言した「社民党吉田忠智候補への投票」は止めて、社民党の党名または他の候補者名で投票することにしました。理由は、吉田候補もまた天皇主義者の一人であると認めざるを得ない事実を教えていただいたことによります。