kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

千葉県の「南北問題」と昭和期の林業政策のツケ・新自由主義・「崩壊の時代」などなど

 台風15号による千葉県南部の被害の報に接して真っ先に思ったのは首都圏内での格差の問題だった。それを原武史は鉄道の観点からツイートしていた。

 

 

 

 上記はだいぶ古いツイートで、その後まずJR内房線外房線、次いで9月14日にはいすみ鉄道が完全復旧した。しかしJR久留里線は今なお全線で運転を見合わせており、小湊鐵道も完全復旧には至っていない。

 

https://response.jp/article/2019/09/17/326575.html

 

JR久留里線は依然、全線で運行見合せ…小湊鐵道は今週末の全線再開を目指す 台風15号

 

台風15号の影響で被災した千葉県内の鉄道は、9月17日時点で、JR久留里線(木更津~上総亀山)全線と小湊鐵道上総山田~上総中野間で依然、運行見合せが続いている。

内閣府の9月17日7時時点の発表によると、久留里線は袖ヶ浦市内の東横田駅と横田駅で発生した屋根の損傷のほかに、久留里~平山間でのり肩(のり面とのり面上の平らな部分との交差部)の一部崩壊や倒木も確認されているという。

また小湊鐵道では、市原市内の馬立(うまたて)~上総牛久間や上総牛久駅構内で送電線や通信線が断線。月崎~上総大久保間では土砂崩壊が確認されている。

同鉄道は9月13日に特別ダイヤにより五井~上総山田間で運行を再開。代行バスは上総山田駅~里見駅間の運行に変更しており、今週末の全線再開を目指すとしている。

なお、上総中野駅で小湊鐵道と接続しているいすみ鉄道(大原~上総中野)は、停電が解消されたため、安全確認後の9月14日17時に上下線が再開している。

東京電力パワーグリッドが14時29分に発表した情報によると、同鉄道沿線のいすみ市は約600軒、大多喜町は100軒未満の停電となっており、大幅に解消が進んでいる。一方、小湊鐵道で大半を占める市原市は約6000軒で停電が解消されていない。

《佐藤正樹(キハユニ工房)》

 

(「Response」2019年9月17日(火)15時19分)

 

  房総半島での倒木に関しては、戦後の林業の行政に問題があったとの指摘がある。

 

news.yahoo.co.jp

 

 以下、記事の後半部を引用する。

 

捨ててしまった歴史的な森の育て方

 房総半島、とくに山武地方はなだらかな丘陵地が多いが、土質は砂岩と粘板岩の風化した痩せた土壌である。乾けばホコリが舞い、雨が降れば泥になる。

 そこで江戸時代から独特の農林業技術が発達した。最初は、小麦やナタネ、落花生など畑作を行いつつ、痩せ地に強いアカマツクロマツを植える。十数年経ち、マツの一部を薪として販売しながら、その下にスギを植栽する。スギはマツに保護される形で育つ。次第にマツとスギの落葉が溜まり、土地は肥えてくる。スギが育つと間伐しながら、その跡地にヒノキを植える。マツも大木は残しておく。

 つまり農業と平行しながらマツ、スギ、ヒノキと環境に合わせて植え継ぎ多様性を築く。落葉が土壌を保護するから、皆伐せずに森を維持し続ける。このような技術で、健全な木々を育ててきたのだ。

 しかし、戦後は長い時間をかけて多様な木を育てることが嫌われた。木材が高く売れたため、残されていたアカマツの大木も伐られてしまった。そして政策的にスギの一斉林づくりが奨励された。補助金によって全国画一的な1ヘクタール3000本の苗の植え付けが強要されたのである。

 だが皆伐してスギの苗だけを一斉に植えたのでは、土壌保全能力が失われてしまう。それに一斉林は、適切に間伐をしないと林内の風通しが悪くなり、樹木が健全に育たない。そんなスギは、溝腐れ病に罹患しやすくなった。すると芯が真っ黒になるうえ、腐って溝ができると材としてまったく価値はない。

防災にも重要な林業政策

 一銭にもならないため森林経営の意欲は低下し、大量の放棄山林が生じてしまった。それがより溝腐れ病を蔓延させた。そんなスギが今回バタバタと折れているのだ。

 森にも歴史がある。試行錯誤を経てよりよい状態を築いてきたのに、目先の木材生産だけを考えて伝統を崩すと、どこかに齟齬が発生する。

 今回の災害は、風があまりに強かった台風が引き起こしたものだ。しかし地域に合わせた林業技術を捨て、多様性を失わせた末に放置を招いた林業政策も、処理の難しい倒木を大量に発生させた一因かもしれない。

 ともあれ倒木処理は、二次被害を出さないよう慎重に行ってほしい。そして、今後の林業行政も一考していただきたい。林業は防災にも深く関わっているのだから。

 

出典:https://news.yahoo.co.jp/byline/tanakaatsuo/20190917-00142951/

 

 新自由主義者たちが大好きな「身を切るカイカク」によって公務員を減らしすぎた悪弊も指摘されている。下記記事はリンクのみ示す。

 

news.yahoo.co.jp

 

 そして安倍晋三の問題、それに安倍を批判できない「崩壊の時代」の問題がある。

 

 

 

 後者のツイートを発した米山隆一は、自身がかつて日本維新の会に所属していたり、新潟県知事を突如投げ出したりするなど問題の多い人物だが、問題点の把握と批判にはすぐれている(さすがは元「受験秀才」というべきか)。

 特に、安倍晋三とその政権が「『何でも擁護』で守られて批判されない」(=批判する言説の絶え果てた「崩壊の時代」)弊害は、ここにきてますますひどくなっている。

 数年前にさる芸能人候補が国政選挙に立候補して「批判なき政治」なるスローガンを標榜して当選した時には唖然としたが、それは時代の空気を敏感に反映したスローガンだったのだ。この元芸能人は内閣府政務官に「抜擢」された。そのうち誰かさんを見習って「八紘一宇」とか言い出すかも知れない。そういやこの「誰かさん」は入閣を見送られたが。

 しかし、アレが入閣しようがしまいが「崩壊の時代」の泥沼は、ますます深さを増すばかりだ。