kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

岩田健太郎医師、「47人の感染者を捕捉するのに100人未満しか検査していないのは少なすぎる」と東京都を批判

 昨夜(3/27)は帰りが少し早かったので報道ステーションを見て、金曜日はnews23までの間に少しタイムラグがあるが、それに耐え切れずに寝てしまったのでnews23は見ていない。

 報ステではまたぞろ「専門家」がコメントしていたが、東京都の感染者数が5日ぶりに「過去最多を更新しなかった」ことに肯定的に言及していた。しかし「専門家」氏は、東京都の異様な陽性率の高さ(25日の43%に続いて26日には54%)には言及しなかった。

 大阪から東京での陽性率の高さを言い募っているのは、厚生官僚の提言を「誤読」したことで悪名高い府知事・吉村洋文だ。以下大阪の民放局による「MBSニュース」より。

 

www.mbs.jp

 

吉村知事“大阪+兵庫の感染確認が1日40人超”になれば『緊急事態宣言』出すべき

 

 東京都で新型コロナウイルスの感染者が急増していますが、大阪では感染経路がわかっていない人が感染者数の累計のほぼ半数に達しました。そんな中、大阪府の吉村知事は、『緊急事態宣言』を出す目安について言及しました。

 「(東京は)人数を見てもステージが一つ変わったなという印象を持っています。」(大阪府吉村洋文知事)

 東京都での新型コロナ感染確認は、3月25日=41人、3月26日=47人と急増していて、“感染者の爆発的増加の恐れがある”として、首都圏では『3月28日・29日の土日の外出自粛要請』が出されています。

 大阪府の吉村知事は、首都圏への不要不急の訪問は避けるよう呼びかけていますが、仮に“大阪と兵庫を合わせた新たな感染者数が1日で40人を超えた場合”、『緊急事態宣言』を出すべきという見解を示しました。

 「大阪府兵庫県を合わせた人口は1100万人、東京都とほぼ一緒です。一挙に感染者が40人になったら、東京はそうなっていますが、大阪も同じようになってきたとすれば、僕なら緊急事態宣言に基づく特定区域の知事としての行動に移すと思う。」(大阪府 吉村洋文知事)

 また吉村知事は、緊急事態宣言の目安として、東京の「陽性率の高さ」も指摘しています。

 【東京都での検査の陽性率】

 東京での陽性の患者数は今週に入って急増。3月26日に確認された感染者数は47人に上っています。PCR検査を受けた人は95人で“陽性率は50%”と高い数値になっています。

 【大阪府での検査の陽性率】

 一方、大阪の陽性患者数は、クラスターが発生した3月上旬をピークに、1日10人以下で推移しています。3月26日は、検査を99人が受け、7人の感染が確認されています。“陽性率は7%”ほどでした。

 「東京は陽性率が50%ぐらいありましたから、僕は緊急事態宣言を出すべきタイミングだと思っています。リンクを追えていない人が増えていると、さらに陽性率が高いとなってくるならば、これは市中感染が広がっている可能性が高い。」(大阪府 吉村洋文知事)

 大阪では、感染者の内のほぼ半数が感染経路不明となっていて、新たなクラスターが発生しても把握することは難しいことから、専門の対策チームが設置されました。

 

MBSニュース 2020/03/27 17:38)

 

出典:https://www.mbs.jp/news/kansainews/20200327/GE00032283.shtml

 

 MBS毎日放送)はTBS系だが、TBSと同じく検査実施人数のデータを1日読み違えている*1。上記引用文中の「95人」は25日の検査実施人数であり、26日の東京都での検査実施人数はさらに少ない「87人」なのだ。そのうち47人の陽性が判明している。

 弊日記の昨日(3/27)の下記記事にいただいたコメントより。

 

kojitaken.hatenablog.com

 

 Lint

95は予想していたより随分少なかったです。確かに陽性率は16/56、17/74、41/95と非常に高めでしかも増えてきているので、検査を10倍程度に増やすべきで、ここで見逃すのは大変危険です。すでに感染爆発は起きていると考えるべきで、後はどれだけ早く小くそれを抑えられるか、でしょう。
岩田医師が今日出された論考が、現状の分析も今後取るべき道についても妥当だと思います。
https://twitter.com/georgebest1969/status/1243338813524475905

オリンピック関連で(それ以外でも!)政権や小池の動きは醜悪ですが、DP号を除き、感染対策にこれまで実際に与えた影響はそう大きくないと思います。

なお、新興感染症に地名を冠するのは勿論論外ですが、人名も同様に論外です。分かっていてあえてやっているんだろうとは思いますが。

 

 コメントの最後にご指摘の箇所については、もちろん「論外だと分かっていてあえてやっ」たものです。ネトウヨ麻生太郎やトランプの論法だと「安倍ウイルス」や「小池ウイルス」と呼ばれても仕方ないよ、という意味です。

 

 また、「広島瀬戸内新聞ニュース」(3/28)より。

 

hiroseto.exblog.jp

 

 上記リンクの表示から切れてしまった文章は下記。

ここまで来たら岩田先生がおっしゃるようにポピュレーションベースで抗体検査をし、状況把握をして戦略をたてた方がいいだろう。

 

 お二方から言及のあった岩田健太郎医師のブログ記事より。

 

georgebest1969.typepad.jp

 

 以下に記事の後半部分を引用する。

 

 日本の「今」は感染がうまくコントロールされている状態で、それは最悪時の武漢や、現在のイタリア、スペイン、フランス、英国、ニューヨークに比べてずっとよい状態である。問題は、それが「これからもずっとうまくいく」ことを保証しないことである。

 懸念されるのは東京だ。感染報告が増えたことだけが問題なのではない。クラスターを形成できない、トレースできない感染者が増えているのが問題である。そして、その陽性患者数に比べて検査数がずっと少ない。感染者が増えているのが問題である。そして、その陽性患者数に比べて検査数がずっと少ない。47人の感染者を捕捉するのに100人未満(陽性者の検査日が不明だが、おそらくこのへんだろう)しか検査していないのは少なすぎる。繰り返すが、すべての感染者を把握する必要はない。が、感染の流れ、動き、クラスターが見えなくなっているのは困る。よって、東京では検査の閾値を下げねばならない。検査の閾値は状況によって変化する。韓国の例で説明したとおりだ。厚労省の「基準」にこだわっていると現象そのものを見誤る。すでに関西では味覚異常、臭覚異常を根拠に感染者が見つかっており、そこからクラスターが検知された東京都の「どこ」が検査数を下げている障壁なのかは分からないが、その障壁は即座に取り払う必要がある。

 感染のピークを下げて横にずらす、という皆が見ているこの概念図。これとて演繹法の産物であり、本当に正しいかどうかは分からない。前述のように、英国の試算ではすでにこれでは足りない、と考えられている。横にずらした被害が、単に「やたら長い被害」になってしまう可能性もある。

 そして、ここが肝心なのだが、ピークを下げるという理念が、「ピークを下げなければいけない」という観念になり、「ピークは下がっているはずだ」という確信になり、「ピークは起きていないんだ」という自己暗示に転じてはいけないということだ。プランAに固執する日本あるあるの失敗のパターンで、ダイヤモンド・プリンセスでは「二次感染が起きてはいけない」が「起きているはずがない」に転じてノーガード下船を許してしまった。ピークが起きてはいけない、がピークなんて見たくない、にならないように現実を見据える必要がある。たとえ、それが我々の見たくない不都合な真実であったとしても。

 繰り返す。演繹法帰納法で補完するのがこの業界の常識だ。とはいえ、PCR偽陰性が多くて感染の状態を把握する力に乏しい。「なんでも検査」が間違っているのはそのためだ。しかし、免疫グロブリンIgM、IgGを測定する血清検査であれば、「集団における感染の状態」はより正確に把握できる。これとて、無謬ではない。早期感染は見逃すので、個々の症例には使いにくい。HIV早期感染を見逃すのはこのためである。個々の事例に抗体検査が有用かどうかは、未だ検証を待たねばならないが、ポピュレーションベースで疫学調査をするのには向いている。ざっくり言えば、今東京で「感染が蔓延している」のか、それは杞憂に過ぎないのかを確認できる。前例はあって、ロンドンの血清検査で09年パンデミックインフルエンザが従来予測の10倍起きていたことが血清検査でわかっている。抗体検査はアウトブレイクのあとで事後的に行うことが多いが、慢性的パンデミックになりつつあるCOVID-19については、「今」こそが検証のポイントといって良い。

英国はさらにアグレッシブだ。家庭で抗体検査を行い、「感染者である」とわかればそれを自宅での自己隔離の根拠に使おうというのだ。ロックダウンが起きている中で、検査陰性は「自己隔離不要」を意味しないため、その戦略に穴はある。が、考え方としては「感染全体を抑え込みたい」というもので、検討の価値はあると思う。

 東京でどのくらいの感染が起きているか、帰納法的確認は必要であり、有用だ。その結果がどうなるかは預言者ではないぼくには分からない。が、どんな結果が出てきても、それを受け入れ、場合によっては自説を曲げ、プランBに移行することにも躊躇しない態度が科学者には必要だ。科学者は、首尾一貫していないことにかけて、首尾一貫していなければならないのだ。形式においては朝令暮改であっても、プリンシプルやプロフェッショナリズムにおいて曲げてはならないのだ。事実に誠意を。

 

出典:事実に誠意を - 楽園はこちら側

 

 このところ「リベラル」側の一部からも、かなり小池百合子の意見発信に対する高評価が出ているようだが、23日から26日までの4日間に陽性率が29%, 23%, 43%, 54%と異様な高さで推移している危険な状態だというのに、「夏以外なら五輪のマラソンは東京で」などとはしゃぐジコチューの極右都知事に対する嫌悪感は強まる一方だ。

 そんな感情論は別にしても、東京都における「検査の閾(しきい)値を下げる」必要があるとの岩田医師の主張には、強い説得力がある。この主張に論理的に反論できる人などいるのだろうか。

 阪神タイガース藤浪晋太郎選手ら3選手が身をもって示した「味覚異常、嗅覚異常を根拠にした感染の検出」も、のちに「大きな意味があった」と振り返られることになるかもしれない。藤浪選手は、自ら実名を公表することを望んだという。プロ野球ファンなら誰が見てもわかったであろう、一昨年のプロ野球終盤における阪神のチーム崩壊(多くの選手が戦意を喪失してしまった悲惨な状態)がなぜ起きたのか、それをいまだに総括していない前阪神監督・金本知憲とは月とすっぽんの差だというほかない。

*1:だからTBSの報道を引用した私も間違い、誤りをコメント欄で指摘された次第。