kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

「同調圧力に屈せず、多くの異論を」岩田教授に聞くコロナ危機対策(Forbes JAPAN)

 昨夜(3/30)、東京都知事小池百合子が記者会見すると聞いて、「すわ、都市封鎖(ロックダウン)か」と色めき立つ向きもあったが、緊急事態宣言も出てないのに小池にロックダウンをする権限などあるのだろうか。それに30日にPCRで陽性が判明した患者も13人しかいない(検査結果が出た件数自体が少なかったため)と聞くし、どうせ大したことは言わないだろうと思った。それでは小池が何を言ったのかと思ったら、夜間の飲食店利用の自粛要請とかそんなことだったようだ。

 ちなみに安倍晋三がまだ緊急事態宣言を出していないのは、出した場合損失を受けた人たちへの補償をすることが必要になるからで、だから党内の新自由主義者たち(菅義偉ら)が反対しているのだという話も聞いた。「緊縮」というなら、これ以上ひどい緊縮的な財政政策の考え方はあるまい。緊急事態宣言といえば、東日本大震災とともに東電原発事故が起きた2011年3月11日に、原子力緊急事態宣言が出て、それは今も解除されていない。新型コロナ特措法以前の新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づいて緊急事態宣言を出すことだってできた。それなのに官邸がなぜ新型コロナ特措法にこだわったかといえば、単に民主党政権時代の2012年4月に成立した法律を使うのが嫌だったというだけの理由で、しかもこれを嫌ったのは首相の安倍晋三よりも首相補佐官の今井尚哉だったという噂が流れている。なんでも、野党議員に対して、「いや、民主党政権の時の法律を使ってと私も思ってたんだけど」と言ったとか言わないとか。確かに安倍が好みそうなのはもっと単純な中韓民主党の悪口のような話だろう。ちなみに今井尚哉にもネトウヨ的嗜好は十分あるようだが、それとともに高い内閣支持率を誇るネトウヨ宰相を思うがままに操縦する自分に酔っていたのだろう。こんな法律を作るのにかまけたことが、日本の新型コロナウイルス対策を後手に回らせる原因となった。安倍と今井はこの点においてこそもっとも厳しく批判されるべきだろう。

 だから、総理大臣が安倍晋三でさえなければ、緊急事態宣言を出しても良いのではないかと私は思う。もちろん、それが表現の自由内心の自由などを侵さないことは絶対の必要条件だ。原発事故や新型インフルで緊急事態宣言を出すことはこれまでにもできたし、原子力緊急事態宣言に関しては今も出された状態が続いているのがこの問題の肝だ。

 しかし、安倍晋三の場合は人間というより権力の魔力によって人間らしさを失った「怪物」としかいいようのない「何か」だから、何をやらかすかわからない。平時においてこんな人間を権力につけ続けたために、今日のような非常事態でこの怪物が何をやらかすかわからない脅威にさらされているということだ。

 ただ、たとえその怪物の政権下であろうが、私権の制限のうち、移動の自由が制限を受けることは止むを得ないのではないか。現時点では、自分が新型コロナウイルスに感染していないと断言できる人間など誰もいないはずだからだ。誰しも、意識せずに新型コロナウイルスを拡散する可能性を持っているのだ。自らを感染を受けるリスクに晒すことは自由かもしれないが、自らが動くことによって感染を撒き散らす自由を人間が持っているといえるだろうか。

 

 ここで話を変え、昨日Yahoo! Japanに転載された「Forbes」の岩田健太郎医師インタビューから目を引いた部分をいくつか抜粋する。3月26日に行われたインタビューとのこと。

 

headlines.yahoo.co.jp

 

──感染者の増加が続く東京都では3月25日に小池知事が外出自粛を要請しました。この増加についてどう受け止めていますか。

東京都は異なるフェーズに入ったと思う。25日はPCR検査数が108件*1で41人の陽性が判明し、陽性率がかなり高い(編集部注:検査件数の計上日と陽性の判明日が合致するか不明だが、東京都の発表によると前日の24日の検査数は86件、陽性は17人)。検査が追いついておらず、感染の実態が掴めていない。

世界を見ていれば感染者が一気に増えることは予想できたので、1日40人程度の増加は想定内だったはずだ。それ以上の感染爆発が東京でも起きる可能性はある。

小池都知事の)危機的なメッセージは、本当は患者数が増える前、(緊急会見をした25日の)5日ぐらい前に出すべきだったと思う。しかし、(延期が決まった24日まで)オリンピックの開催が念頭にあったために、東京都はネガティブなメッセージは出せなかったのではないかというのが私の推測だ。無論、関係諸氏は否定するだろうが。オリンピックに対する忖度が危機対応を遅くして、失敗した。

 

出典:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200330-00033340-forbes-soci

 

──東京では今後、どのような対策が必要になってくるのでしょうか。

いままでの対応では不十分だ。一人ひとりが外出しないなど、行動を変える必要がある。

また、感染者数の実態が掴めていないため、人口をもとにした抗体検査で感染者数を出すべきだ。(編集部注:現在、新型コロナウイルス検査に用いられているPCR検査は、鼻や口の奥の粘膜細胞を採取し、ウイルスのDNAの断片を増幅させて陽性か陰性かを判定する。抗体検査は、一度かかった人が獲得した免疫の抗体が血液中にあるかどうかを探す)。

現在、感染爆発がすでに起きているという人と起きていないという人の間で論争になっているが、(数を把握するための)検査はしていないので実際のところはわからない。水掛け論をしても仕方がないし、これほど感染者が増えている段階なので、(数を把握するための)人口をもとにした抗体検査をすべきだと考える。実際、イギリスではすでに350万個の抗体検査キットを準備している。

 

出典:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200330-00033340-forbes-soci

 

──地域ごとの対策が重要になるという話ですが、政府の専門家会議では(対策ができる)専門人材の不足が指摘されていました。

自治体はこれまで厚生労働省からの通達に従うだけだったのが、自分で考えて状況を判断し、遂行しなければならない。日本ではデータを活用する習慣が少なく、慣習や同調圧力で決めてしまいがちで、自分で決めて判断できるリーダーが少ないので、困ったことになるだろう。何を持って判断するのか、判断根拠となるデータは何かをはっきりさせないといけない。

これまでに地力を培ってこなかった、という慢性的な問題だ。プロの人材は即時的に育成は出来ない。いまからどうにかできるものではない。

──新型コロナウイルスのデータに関しては、中国や欧米などから続々と研究が発表されています。日本はダイヤモンド・プリンセス号の発生で諸外国より早く最初の危機を経験しましたが、日本発の論文は少ないように見えます。

日本からの論文は少ない。中国はあれほど大変な事態になりながら、論文を出しており底力があると思った。日本はもともといっぱいいっぱいで医療制度を維持しており、アカデミックな余力を削られている中で、アウトプットができていない。私自身も二本目に取り掛かっているが、余裕がなくてなかなかデータをまとめることができない状況だ。

──実際に新型コロナウイルスの患者を診て、どのような印象を持たれましたか。

とても問題の大きい感染症だ。8割は良くなるというのがミソだ。そのほうが感染は広がりやすいから。エボラは致死率がもっと高いが、濃厚接触者にしか感染しない。よって、アフリカの限定的な感染症のままでそれ以外の地域では流行しない。新型コロナの致死率は1%あるかないかだが、一部の人に怖い病気というのが厄介だ。

 

出典:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200330-00033340-forbes-soci&p=2

 

 上記引用文では、過去四半世紀の間に日本政府が行った新自由主義政策が医療や学問における日本の国力を大きく下げてしまったことが浮き彫りにされていると思う。ネトウヨが「日本スゴイ」と言い募るのは、日本の国力が落ちて、今や中国など他国に大きく引き離されつつあるが故の「引かれ者の小唄」に過ぎないが、日本を現在の凋落に導いたのは、ネトウヨたちがすがりつく自民党政権が行ってきた新自由主義政策なのだ。

 あと、新型コロナウイルスの致死率を、私は勝手にクルーズ船の致死率をもとに1.4%と見積もっていたが、岩田医師は「1%あるかないか」と言っているので、そんなに大きく外れていないなと、少しほっとした。もっとも、クルーズ船の乗客・上院からは昨日さらに1人の死者が出たので、クルーズ船での致死率は1.5%になった。これを伝える読売新聞記事*2に載っている票を参照すると、クルーズ船を除く国内の感染者は1990人、死亡者は59人となっており、致死率は2.96%で3%を切った*3。真の致死率を1.5%と見積もった場合には国内の感染者は約4千人、真の致死率を1%と見積もった場合には約6千人となる。だから爆発的な感染増加にまでは至っていないというのは、東京以外についてはその通りだろうが、東京がどうかはわからない。1日のPCR検査のキャパは上限が340件らしいが、一昨日の29日日曜日に330件(330人)の検査を実施すると、昨日は検査がこなし切れなくなって*4感染者が13人しか確認できなかった。つまり検査が間に合わなくなっているのだ。東京都は本当に瀬戸際にあると思われる。

 

 最後に、昨夜公開した下記記事にいただいたコメントをご紹介する。

 

kojitaken.hatenablog.com

 

 urinarazuke

検査従事者の人手が不足しているのは間違いないが、担当を臨床検査技師に限っているからだろう。
臨床検査技師でもPCRなどの遺伝子検査が得意な人はそれほど多くないから。
むしろ、大学のバイオ系学部・学科(生物学、生化学、生命工学、農学、薬学、医学など)の学部生・院生・卒業生の方がPCR経験の豊富な人材は沢山いるから、国・地方自治体が予算をつけてアルバイト求人をすれば必要な人手の確保は難しくないはず。
勿論、感染症の検体を扱うので注意は必要だが、1~2週も教育・訓練すれば即戦力として充分活用できるだろう。
現に、米中韓はおろか、日本よりバイオ系の人材プールが乏しいはずの欧州諸国が日本より遙かに多くのPCR検査をこなしているのだから、最早「やる気」の問題としかいいようがない。

PCRだけでなく、英米がダイソン、ロールスロイスGM、フォードなど畑違いの企業に人工呼吸器生産を依頼し始めたので、日本も人工呼吸器増産をという当然の声が挙がると、すかさず「検査で医療崩壊ガー」のネトウヨ医師団が「機械を操作する人手ガー」と連呼して潰しにかかる。
社会に数多存在する看護師経験者やエンジニアを動員して教育・訓練し即戦力にしようという、他国では当然湧き上がるはずの発想は微塵もなく、ひたすら「できない言い訳」探しに狂奔する姿は見苦しく、醜いことこの上ない。

こういうところにも、日本の国力の衰えが如実に表れていると思う。
トップの資質の低さもさることながら、現場の士気・やる気の低下も。
韓国や台湾と比較すればその差は明らか。
“為せば成る 為さねば成らぬ何事も 成らぬは人の為さぬなりけり”
上杉鷹山の言葉が空しく響く。

 

 さまざまな意見があり、そのいずれが正しいかはわからないし、私自身も今回の新型コロナウイルスに関してしばしば意見が変わるが、これほど状況の激変が続けば、同調圧力に屈して人々の意見が一枚岩になってしまう方がよほど恐ろしいのではないかと思う今日この頃だ。

*1:東京都のサイト(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)で確認できる通り、検査数は108件だが検査実施人数は95人。ただ、この検査実施人数95人と陽性41人が対応しているかどうかははっきりしない。

*2:https://www.yomiuri.co.jp/national/20200330-OYT1T50192/

*3:日本の致死率は一時は3.7%に上がっていたが、なぜか東京五輪延期が決まったのを境に下がり始めた。

*4:検査数は、今晩かなり遅くならないと東京都の更新されないために現時点ではわからない。