kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

「繰り返される日本の失敗パターン」(丸川知雄, Newsweek)/日本国内のCOVID-19致死率が3.68%に

 ようやく「死亡者が少ない日」が訪れた。

 とはいえ昨日(5/5)日本国内で確認された新型コロナウイルス感染症による陽性者121人に対して死亡者は10人だから、致死率は上がる。3.68%となり、四捨五入では3.7%だから、第1波による致死率がピークに達した頃とほぼ同水準になった。

 

www3.nhk.or.jp

 

 今後は緩やかに死亡者数が減少していくだろう。緩やかに、といっても多い日と少ない日が現れ、波打ちながら減っていくことになる。残念ながら、急に死者がほとんどでなくなることは期待できない。こればかりはいかんともしがたい。2日のNewsweekのサイトに、日本と韓国の陽性者数と致死率のグラフが掲載された記事(著者は丸川知雄氏=東京大学社会科学研究所教授)が出ていたが、このグラフを頭に入れておくと今後の致死率の推移が予想できる。

 

www.newsweekjapan.jp

 

 上記記事は、後述のように全面的に信頼できるわけではないが同意できる指摘が多い。まず致死率に関する指摘、それに安倍晋三の「黴のマスク」の件、さらに今回の安倍政権による新型コロナウイルス感染症対策における数々の失態のうちでも特に重要なポイントの一つである「科学よりも情緒に引きずられた入国拒否」の件、最後の「厚生労働省による統計操作」の件など、興味深い指摘が多いので、以下に引用する。

 

 まず日本で急増している致死率について。なお本記事では弊ブログでの通例に従ってグラフは引用しないので*1リンク元の記事を参照されたい。

 

5月1日現在、日本の新型コロナウイルスへの感染者数は1万4119人、死者は435人。比較されることの多い韓国と比べて、感染者数、死者数、致死率ともに日本が上回ってしまった(図1)。しかも韓国が1日の新規感染者数が1桁台になり、すでに流行をほぼ抑え込んでいるの対して、日本は毎日数百人ずつ感染者数が増えつづけている。さらに気がかりなのが致死率(=死者数/感染者数)が急ピッチで上昇していることである。図1で韓国の線をみればわかるように、感染者数の増加ペースが下がるとき、致死率はむしろどんどん上昇する。もちろん一人でも多くの命が救われることを願ってやまないが、残念ながら日本の致死率が4%を超える可能性は高い。

 

出典:https://www.newsweekjapan.jp/marukawa/2020/05/post-62_1.php

 

 新たに確認される陽性者のピークよりも遅れて死亡者のピークが現れるから、両ピークの間の期間に致死率が上昇するのは当たり前だ。また、日本国内で3月に見られたように、新たな感染の波に襲われた時には致死率が下がる。余分なことを書くと、このことを解さず、五輪が決まって急に検査数を増やしたから致死率が下がったのだろう、などとする陰謀論ないし適当な口から出まかせを「週刊新潮」の記者に語ったのが上昌広だ。

 

 次は安倍の「黴のマスク」と戦争中の日本軍による「風船爆弾」との対比。記事のこの部分に前述の瑕疵が見られる。

 

太平洋戦争中の旧日本軍の秘密兵器に「風船爆弾」というものがあった。和紙で作った直径10メートルの気球に焼夷弾をつけてアメリカに向けて飛ばして攻撃するもので、約9300個放たれたうち、実際にアメリカに到達して爆発したものはわずか28個、6人にケガを負わせ、小さな山火事を2件起こすという「戦果」を挙げるにとどまった。

安倍首相の肝いりで全国5000万世帯に一家に2枚ずつ配布が始まった通称「アベノマスク」も役に立たないという点では風船爆弾とどっこいどっこいのようである。

先に配布された妊婦用の布マスクの場合、5月1日までに4万6934枚に黄ばみやカビの疑いなどの不良が見つかり、すでに発送した47万枚を国に返送させて検品しなおすという(『朝日新聞』2020年5月1日)。全戸配布される「アベノマスク」についても不良品が続出したため、未配布分を業者が回収して検品しなおすという。

不良率が1割というのは、これまで中国から研修で来日する企業家たちに「日本企業はPPM(百万分の1)のオーダーで不良率の低減を目指しています」と説明し続けてきた私にとっては、まったく目を覆いたくなるほどの惨状である。加えて、致命的と思われるのは、アベノマスクを使って粒子がどれだけ漏れるかを検証してみたら漏れ率が100%だったという事実である(『AERAdot』2020年4月28日)。アベノマスクは国民を安心させるために配るのだと首相の側近たちは言っているらしいが、決して安心してはいけない代物なのである。

アベノマスクに大量の不良品が混じっているうえ、そもそも感染予防には役に立たないことが明らかになった以上、回収して検品しなおして再配布するなどという無駄なことは直ちにやめ、未配布分は廃棄すべきである。すでに配布してしまった分については「ウイルス遮断の効果はありませんが、咳エチケットとして着用する場合には煮沸消毒したうえでお使いください」と政府から市民に伝えるべきだ。そうしないとアベノマスクが健康被害を引き起こしかねない。そしてこの無益な物に膨大な国費を費やしたことに対して、責任者に応分の処分を下すべきである。

 

出典:https://www.newsweekjapan.jp/marukawa/2020/05/post-62_2.phphttps://www.newsweekjapan.jp/marukawa/2020/05/post-62_3.php

 

 初めに記事の瑕疵について書いておくと、風船爆弾によるアメリカ国内の被害は、6人のケガではなく6人の死者だ。オレゴン州アメリカ人6人が、真面目な日本人の女子生徒たちが作った、いや日本軍に脅されながら作らされた風船爆弾によって殺されたのだ。たとえば下記東京新聞の記事を参照されたい。

 

www.tokyo-np.co.jp

 

 本論に戻る。黴のマスクの不良率には、私も「日本の製造業はここまで堕ちたかと思った。シックスシグマどころか3σ、いや2σにも満たない。しかしその後、マスクの一部は外国製だったりとか、経産省の佐々木啓介なる役人がマスクは「数さえ揃えばいい」と言い放ったとか(週刊文春による*2、果てには官邸にコネを持つ業者への利益供与の疑惑が取り沙汰されるなど、とんでもない代物であることが明らかになった。果てにはマスクの効果は全くないという。開いた口がまる一週間くらい塞がらずに開きっ放しになるほどの惨状だ。丸川氏は「この無益な物に膨大な国費を費やしたことに対して、責任者に応分の処分を下すべきである」と書くが、いうまでもなく最高責任者は安倍晋三本人であり、安倍内閣は緊急事態宣言の延長期間終了後直ちに総辞職すべきだ。

 

 Newsweekに載った丸川氏の記事の核心部は、前記「黴のマスク」に続く「科学よりも情緒に引きずられた入国拒否」のくだりだ。以下引用する。

 

日本政府も感染爆発が起きた国や地域からの入国を拒否する措置を立て続けにとってきた。ただ、そのタイミングを見ると、しばしば入国を拒否するタイミングが遅すぎ、それが3月末以来の急激な感染拡大を招いたとみられる。

日本政府はまず1月31日に中国湖北省に滞在歴のある外国人の入国を拒否すると発表した。同日の中国の新規感染確認数は2102人。武漢の都市封鎖が行われたのが1月23日だからその直後に湖北省から入国拒否をしてもよかったが、8日間も遅れてしまった。習近平国家主席の来日を控えての遠慮があったのではないかと疑われる。

ただ、日本側の遮断は遅れたものの、中国が自発的に武漢の封鎖や団体旅行の停止などの措置をただちにとったため、この遅れの実害はほとんど出ていないようである。国立感染症研究所の最近の研究によると、1月に武漢から日本に入ってきたウイルスはその後大きな広がりを見せることなく3月には終息したらしい(『朝日新聞』2020年4月28日)。

2月16日に日本政府は中国浙江省も入国拒否の対象に加えた。しかし浙江省での感染拡大は2月13日までに終わっていたのでやはりタイミングが遅すぎた。ただ、この遅れもあまり大きな影響はもたらさなかった。

2月下旬には韓国で大邱を中心に感染爆発が起きた。日本政府は2月26日に大邱および慶尚北道清道郡からの入国を拒否すると発表した。この日の韓国の新規感染確認数は214人で、図1に見るようにその後の1週間に感染爆発が起きた。つまり韓国に対しては感染の上りはなを捉える絶妙のタイミングで入国拒否が行われたのである。

3月に入るとイタリアで感染爆発が起きた。日本政府は3月10日にイタリアのヴェネト州など5州からの入国を拒否すると発表した。しかし、この日のイタリアの新規感染確認数はすでに1797人。韓国に対するのと同様のタイミングを捉えるためには、これよりも10日前にイタリアに対して入国拒否を実施すべきだった。さらに3月半ば以降はアメリカでの感染がものすごいことになってしまったが、日本政府がアメリカからの入国拒否を発表したのはようやく4月1日である。その日のアメリカの新規感染確認数は2万2559人であり、あまりに遅すぎた。

前述の感染症研究所の研究によれば、日本で3月末以降感染が拡大しているウイルスは欧州のウイルスと遺伝子型が似ているという。つまり、日本政府は韓国にだけは果断に入国拒否したが、イタリアなど欧米各国に対しては情緒に引きずられて入国を遮断するタイミングを逸し、そのためにウイルスの流入を招いてしまったのである。

 

出典:https://www.newsweekjapan.jp/marukawa/2020/05/post-62_4.phphttps://www.newsweekjapan.jp/marukawa/2020/05/post-62_5.php

 

 3月中旬以降に日本国内での感染拡大をもたらしたのは、引用文にもある通り、欧米由来のウイルスだった。ところが記事の指摘通り、安倍政権は欧米、特にアメリカからの流入の遮断が極端に遅れた。結局政権が果断に遮断できたのは、韓国からの流入だけだった。安倍がトランプを忖度したことによって、死ななくても済んだ多くの人々が命を落としてしまったのだ。政権による過失致死といえるだろう。これが、緊急事態宣言の延長期間後に直ちに安倍内閣が総辞職すべきだと私が考える最大の理由だ。

  記事の最後の章である「厚生労働省による統計操作」に至っては、お粗末の一語に尽きる。以下引用する。なおここでもグラフの引用は省略するが、呆れるほかないグラフなので、是非元記事にて参照されたい。

 

太平洋戦争で日本の敗色が濃くなっていった時、大本営が国民に対して戦況を歪曲して伝えていたことはよく知られている。今日の日本政府が戦時中の大本営並みに情報を歪めているということはもちろんない。だが、厚生労働省は日本の患者数や死者数を意図的に少なく見せかけようと小細工を弄しており、不信感を抱かずにはいられない。

例えば、ダイヤモンド・プリンセス号(DP号)の扱いが挙げられる。2月下旬の時点では、日本の感染確認数の8割がDP号の乗員・乗客だった。その時にはまだ東京オリンピックの延期は決まっておらず、厚生労働省はDP号での感染数を「日本」に含めないことによって日本の感染者数を少なく見せようとした。

厚生労働省はWHOが毎日発表している世界の感染状況のレポートにおいてもDP号を日本に含めず、別立てで発表するよう求めたようである。そのため、WHOのレポートでも2月下旬から今日に至るまでDP号の患者数・死者数はずっと日本に含まれず、別立てで発表されている。

その後も世界のあちこちでクルーズ船における感染拡大が起きたが、クルーズ船の乗員・乗客のなかの感染者数がWHOのレポートで別立てになっているのは後にも先にもDP号だけである。つまり、クルーズ船を自国の統計から除外して自国の数字を小さく見せかけるという操作を行ったのは日本だけだということがWHOのレポートを通じて日々世界に向けて発信される、という大変恥ずかしいことになっている。

私が気づいた厚生労働省によるもう一つの統計操作は新型肺炎の死者数に関するものである。図2は4月に入ってからの日本と韓国の死者数の推移を示している。注目していただきたいのは、4月10日まではNHK都道府県から情報を集めて発表する死者数と厚生労働省が発表する死者数とが一致していたのが、4月11日から21日まで両者の乖離が次第に大きくなっていったことである。この時何が起こっていたのかというと、厚生労働省のホームページによれば、「都道府県から公表された死亡者数の一部については個々の陽性者との突合作業中のため、計上するに至っていない」とのことである。

しかし、新型コロナウイルスの強い感染性を考えると、毎日発表される統計に何よりも求められるのは速報性である。統計が遅ければ、緊急事態宣言を出すタイミングが遅れるなどさまざまな問題が起きる。統計の正確性を高めるための「突合作業」はもちろん必要なことではあろうが、それは確認作業が終わったら統計を修正すればいいことで、確認できていない死者数を計上しないというのでは速報性を大きく損なってしまう。

緊急事態宣言が出たこの重要局面で厚生労働省はいったいなぜ「突合作業」に時間をかける愚を犯したのか。その理由は日本の死者数のグラフに韓国の死者数を重ねるとなんとなく想像できる(図2)。この時期には、日本の死者数が韓国の死者数に迫っていたのだ。おそらく厚生労働省は日本の死者数が韓国を超えるのを避けたかったのである。しかし、都道府県が発表する死者数を隠すわけにもいかないので、「突合作業」に時間をかけることによって国全体の死者数を見かけ上少なくした。そしてこの数字はWHOにもそのまま報告されたのでWHOのレポートでも日本の死者数はまだ韓国よりだいぶ少ないように報告されていた。

しかし、4月21日についにNHKが韓国超えの死者数を発表してしまった。厚生労働省もついに観念し、翌日には統計上の死者数を一気に91名も増やした。

これ以外にも、「クラスター潰し」という当初はうまくいっていた感染拡大防止の戦略に固執し、感染の急拡大という次の局面に対応する戦略が準備されていなかったなど、旧日本軍の失敗パターンを想起させる事例はまだまだある。ただし戦前との重要な違いは、現在ではこうして日本政府の失敗を批判する言論の自由があることである。もっとも、安倍首相と親しいある評論家が、厚生労働省の戦略に批判的なテレビ番組に対して電波使用を停止すべきだなどと言い出した。仮にそんなことになれば、日本政府の失敗を止めるものはもう何もなくなってしまう。

 

出典:https://www.newsweekjapan.jp/marukawa/2020/05/post-62_5.phphttps://www.newsweekjapan.jp/marukawa/2020/05/post-62_6.php

 

 まず「クルーズ船の死者を国内の死者に含めない」件に関していえば、自民党参院議員の小野田紀美*3あたりが国会でがなり立ててたっけかな。そして、確かクルーズ船を含めた国内での1000人目の感染者が山口県の人だったはずだが、そのあたりのタイミングで政府がNHKなどの報道機関に強くねじ込んだらしくて、その後NHKや大新聞が報じる陽性者や死者の数は「クルーズ船を除く」がベースになった。

 しかし、クルーズ船の致死率は「クルーズ船を除く」日本国内の致死率よりずっと低い1.8%なのだ。今からでも遅くないから、政府は「クルーズ船を除く」などというせこい小細工は止めてはどうか。そうすれば致死率も多少は下がる(笑)。

 あと、死亡者数の発表を遅らせていたことには私も気づいていた。だからこそ弊ブログでは検査結果のデータは一貫してNHKの報道を引用することにして、厚労省発表の数字(日経新聞Yahoo! JAPANが依拠している)はネグレクトしてきた。韓国の死亡者数を上回らせたくないという厚労省の意図も(ブログ記事には一度も書いたことがなかったけれども)うすうすと感じていた。やっぱりそれ以外の動機は考えられないよなあ。そしてある時厚労省が死亡者数を大きく上乗せした時には「ついに観念したか」と思った。今回丸川氏がNewsweekに発表した記事は、私がずっと抱いていた疑惑をグラフで示してくれた。これだけでも特筆ものだ。大いに溜飲を下げた。

 なぜ厚労省がこんな馬鹿げたことをやったかといえば、それは韓国に対してだけ極端に居丈高な態度をとるネトウヨ宰相・安倍晋三に対するゴマスリからきたものだろう。だから安倍政権は有害極まりないのだ。もちろん安倍に忖度する厚労省もどうしようもないけれど。

 

 丸川氏が記事の最初で書いた通り、日本は人口当たりの死者数で既に中国を上回り、韓国をもほぼ間違いなく上回ることになる。私がこのように断定するのは、少なくとも過去2週間に発表された陽性者の数に3.7%を掛けた数と同程度か、またはそれより多い死亡者が今後出てくることは確実とみられるからだ。「少なくとも‥‥確実とみられる」と書いた根拠は、日本国内での致死率は最終的には現在の3.7%をかなり上回る数字になり、かつ陽性確認から死亡までのタイムラグのピークは2週間程度とみられることによる。

 最近は江川紹子氏が「日本は世界の中でももっとも緩い規制で成果を出している」と言わんばかりのツイートを連発しているようだが、丸川知雄氏が指摘した事例にみられる通り、日本は少なくとも東アジアではかなりひどい結果しか出していないと私は考える。従って江川氏の日本政府(安倍政権)に対する過大評価には全く同意できない。

 やはり安倍内閣には緊急事態宣言の延長期間終了後、直ちに総辞職してもらう他ない。

*1:できるだけ元記事を参照していただきたいので、いつもそうしている。

*2:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200430-10001212-bunshuns-pol

*3:私はこいつが大嫌いだ。こいつには評価できるところが何一つない。