kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

コロナウイルス感染症による人口あたりの死亡者数、日本は欧米諸国より目立って少ないが、アジア諸国中では非常に高い/致死率が5.20%に微増(2020/5/27)

 ひところ、国ごとの新型コロナウイルス感染症対策の成否は、感染者数(確認された陽性者数)ではなく死亡者数で、それも死亡者数を人口で割った人口あたりの死亡者数で評価されるべきだとの主張がネットで盛んになされていた。これは正しいと私は思うが、どういうわけかこの主張は最近はあまり聞かれなくなった。

 前記の主張を行っていたのは主にネトウヨだった。彼らがなぜ人口あたりの死亡者数にこだわっていたかといえば、それはかなり長い間、日本が韓国に「勝っていた」、つまり人口あたりの死亡者数が少なかったからだ。宗教団体による集団感染に見舞われた韓国では、初期の段階で感染拡大が早く、死亡者も多かったのだ。累計の死亡者数を陽性者数で割った「致死率」の方は、最初は日本が韓国よりも高かった(悪かった)が、これも3月下旬頃に逆転して日本の方が低くなった。すると、ネトウヨは致死率にも言及し始めた。しかしその後、日本で韓国に遅れて感染が拡大すると、人口あたりの死亡者数も致死率も、日本は韓国より悪くなってしまった。自分たちにとって都合が悪くなったから、ネトウヨはせっかく正しいことを言っていたのに、口をつぐむようになってしまったのだ。

 私は、この致死率というパラメータが長い時間をかけて上がっていくこと、さらに今回見られたように最初は比較的毒性の弱い武漢由来のウイルスによって上がった致死率が、それよりはかなり毒性の強い欧州由来のウイルスによる感染拡大*1によって低下していく現象を見て興味を持った。これについて上昌広が「東京五輪延期が決まって検査数を増やしたからだ」などというナンセンスな陰謀論による解釈を行ったために、この医師に対する私の信頼は一気にゼロに落ち、以後上医師のTwitter等は見なくなった。

 今回、陽性が確認されたあとあっという間に亡くなってしまった岡江久美子氏の印象が強いが、岡江氏はむしろ例外で、長く患った末に亡くなる人が多いのだ。だから致死率はじわじわ上がっていく。最終的な致死率は、感染拡大が非常に緩やかになって死亡者がほとんど出なくなった韓国では、次の波が来ない限りは2.4%程度でほぼ確定したといえそうだが、日本はまだ死者が、ようやく一桁の日が多くなったとはいえまだ毎日出ているので、最終的にどのくらいで確定するかは現時点ではわからない。回復者が8割くらいになっているので上限は明らかだし、今後はそんなに致死率が上がらないとは思うが。

 もっとも、私の意見では致死率は単なる「検査数の足りなさの指標」だ。韓国であっても全人口の1.6%がPCR検査を受けただけで、昨日公開した下記記事に書いた通り、実際には公表された数字の5倍程度の感染者がいると私は考えているが、日本の捕捉率は韓国の半分未満だ。

 

kojitaken.hatenablog.com

 

 ところで上記記事にコメントをいただいた。

 

にっしー

 

 ブログ「世に倦む日日」が、このブログと同じように日本のコロナウイルスの致死率に注目したエントリを投稿しました。
https://critic20.exblog.jp/31248155/

 私としては、コロナウイルス問題を語る時に「致死率」を持ち出すのは、安倍政権を批判したくて仕方ない人たちだと思います。このブログの管理者も"世に倦む日日"も。ウイルス問題において、メディアで致死率が語られることは現在は非常に少ない。
 ウイルスの被害が少ないことで海外メディアやWHOが日本の対応を褒めています。日本の関係者は安倍政権に忖度しているとしても、WHOまで騙すことはできないはずです。

 

 これは痛い。安倍政権支持者による感情的な繰り言でしかない。唯一の頼みの綱はWHOという権威というわけだ。もう少し記事の内容に対する、権威を持ち出す以外の具体的な根拠をもっての反論をお願いしたい。なお「世に倦む日日」は私とは立場が違う。同ブログは西浦博を「御用学者」と決めつける教条主義的な態度なので、少なくとも新型コロナウイルス感染症に関してはこのブログから得られるものは何もないと考え、見に行く機会はほとんどなくなった。そういえば、同ブログで一次関数と二次関数の区別がついていなかった記事を見た記憶があるが、見に行かなくなったのはそれ以来かもしれない。今回コメントをいただいたので見に行ったが、一時期、日本の致死率の低さが(主にネトウヨによって)しきりに言われていたことに関しては同ブログが指摘する通りだ。この記事の前半にも書いた。

 専門家の意見というなら、横倉義武・日本医師会会長が「検査体制に問題があった」と言っている。

 

www3.nhk.or.jp

 

 また、菅谷憲夫慶応大教授の意見も紹介しておく。「広島瀬戸内新聞ニュース」の下記記事経由で知った。

 

hiroseto.exblog.jp

 

 

www.jmedj.co.jp

 

 昨日の記事にも書いた通り、中東を除くアジア・オセアニア諸国では、人口あたりの死亡者数が日本はフィリピンとモルディブに次いで3番目に高い、とは朝日新聞も報じていた。私は「広島瀬戸内新聞ニュース」が指摘する通り「日本人が外国=欧米という意識しかない。それだけのこと」だと考えている。

 WHOは今回の新型コロナウイルス感染症を「パンデミック」だと認定するのが遅れた。未知の感染症に対しては、権威の機関のトップが正しい答えを出してくれるとは限らない。それどころか「WHO重症インフルエンザガイドライン委員」からも疑義が呈されている。

 感染症対策を勝ち負けに喩えるのは不謹慎だとは思うがあえて言わせてもらえば、日本は欧米に対しては「勝った」が、それは故野村克也の言う「勝ちに不思議の勝ちあり」だった。一方、日本は他のアジア諸国の大半に対しては「負けた」が、「負けに不思議の負けなし」だった。

 今後は、その敗因の分析と批判、さらに同じ失敗を繰り返さないための対策を講じることをやらなければ、次の感染の波で日本は今度こそ致命的な敗北を喫する可能性がある。安倍政権は自らへの批判を力ずくで封じ込めようとする傾向が今までも強かったから、こんな悪しき政権には一日も早く退場してもらうしかないと考える次第。

 

 昨日の日本国内で新たに確認されたCOVID-19の陽性者は35人、死亡者は7人で、累計では陽性者16696人に対して死亡者869人、致死率は5.20%になった。下記はNHKニュースへのリンク。

 

www3.nhk.or.jp

*1:私はこれを第2波と呼び、今後来ると予想されている感染の波を第3波と呼ぶべきだとずっと考えている。