kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

「東大が中国勢より下位に…上海の研究者が見た、大学ランキング・日本『一人負け』の原因」(服部素之、文春オンライン)

 下記「文春オンライン」の記事は、まっとうそのものだ。

 

bunshun.jp

 

 著者の服部素之氏は、中国・復旦大学生命科学学院プロフェッサー。中国・上海に住む日本人研究者だ。服部氏が記事を書いたきっかけは、下記NHKニュースだったという。

 

www3.nhk.or.jp

 

 以下上記NHKニュースを引用する。

 

世界大学ランキング 東大は36位 中国 清華大学がアジアトップ


2020年9月7日 0時45分

 

世界の大学の最新のランキングをイギリスの専門誌が発表し、アジアの大学の中で20位に中国の清華大学が入るなど、中国の大学が順位を上げました。一方、日本からは東京大学が去年と同じ36位、京都大学が54位でした。

 

イギリスの教育専門誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション」は、研究内容や論文の引用回数などの指標をもとに、毎年、世界の大学のランキングを発表しています。

最新のランキングでは、1位が5年連続でイギリスのオックスフォード大学、2位がアメリカのスタンフォード大学、3位がハーバード大学で、上位13校までを米英の大学が占めました。

アジアからは中国の清華大学が、現在の集計方法になった2011年以降、アジアの大学として最高の20位に入り、続いて北京大学が23位、シンガポール国立大学が25位となっています。

中国からは去年と同じ7校が上位200校に入り、ほとんどが順位を上げています。

さらに、中国の大学の研究による収入の中央値が初めてアメリカの大学を上回り、専門家は「新型コロナウイルスの影響で、アメリカの大学の収入が落ち込み、米中の大学の差が縮まるきっかけになるかもしれない」と指摘しています。

一方、日本からは東京大学が去年と同じ36位、京都大学が順位を11位上げて54位となりましたが、上位200校に入るのは6年連続してこの2校にとどまっています。

 

NHKニュースより)

 

出典:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200907/k10012604511000.html

 

 これについて、服部氏は下記のツイートを発した。

 

 

 

 今回の「文春オンライン」の記事は、基本的には上記2件のツイートを敷衍したものだと思うが、ツイートにある「国立大学の独法化」「選択と集中」という2つのネガティブなキーワードに対置された「裾野の広さ」というキーワードに注目した。以下それを含む部分を引用する。

 

選択と集中」政策は、大まかにいえば「今後重要であることが期待される研究分野および当該分野の主要研究者に対して重点的に研究費を投資する」といった政策だ。この手法でうまくいく分野もあるのかもしれないが、少なくとも大学における基礎研究に対して全面的に導入するにはかなりそぐわない手法であると思われる。

 

「何が当たるか」事前に予測することは極めて困難

 

 理由は簡単で「基礎研究分野において何が当たりかどうか事前に予測することが極めて困難」だからだ。また、個々の研究者に過度に研究費を集中させることは、投資した研究費に比例した成果へと必ずしもつながらないということは各種統計で示されている。
 よって、基礎研究分野の場合、重要なのは「選択と集中」ではなく、むしろ研究分野、研究人口、その両方における「裾野の広さ」だと私は考えている。
 しかしながら、内閣府による「科学技術基本計画」をはじめとしてかなりの長期間にわたって日本の科学技術政策において「選択と集中」が重視されてきた。察するに、経済が停滞し、科学技術予算も伸び悩む中、少しでも予算配分の効率化を図ったのかもしれないが、結果的にはそれが大きく裏目に出たと言わざるをえない。

 

出典:https://bunshun.jp/articles/-/40293?page=2,https://bunshun.jp/articles/-/40293?page=3

 

 「国立大学の独法化」と「選択と集中」とが、ともに新自由主義思想に基づく政策だったことはいうまでもない。

 引用文中で赤字ボールドにした部分は、1990年代末の1998〜99年頃に「市場原理主義批判」(今の言葉でいう「新自由主義批判」)に目覚めた私としては、そんなことは20年前からわかり切っていたことじゃないかとも思うが、未だに世の趨勢が何も変わっていないことは、政権がゴリゴリの新自由主義者である菅義偉に引き継がれたことや、緊急事態宣言下でマスメディアがしきりに吉村洋文を持ち上げていたことからも明らかだろう。

 今後の日本では、「新自由主義路線の継続か、それとも路線転換か」が争点として議論されなければならないと思う今日この頃。