これほど竹中平蔵が怨嗟の的になったのは2009年以来ではないか。
この人日本にいらん❗❗貧乏神、鬼やhttps://t.co/m0CaBazAMM
— 長岡伸子 (@NanakoNobuko) 2020年12月21日
実際、この竹中の画像は凶悪そのものだ。
そして、上記にツイートに反応したツイートが多数あり、全部は見ていないが、私が見る限りすべてが竹中を罵倒するツイートだった。
また、上記ツイートからリンクされた下記記事(著者は佐々木実氏)も、全文が竹中に対する批判で埋め尽くされている。
ただ、上記リンクの記事では、その最後の頁に注目した。以下引用する。
新自由主義者は中国の夢を見る
これまで「米国追従だ」と散々批判されてきた竹中平蔵氏だが、今度は肝いりの政策が共産党の大門実紀史議員から「中国のマネをするな」と反対に遭っている。AIやビッグデータを活用し、社会のあり方を根本から変えるような都市設計を目指す「スーパーシティ構想」だ。
竹中氏が有識者会議の座長を務め、5月に法案が可決。コロナ禍で自動運転や遠隔医療などの期待は大きいが、一方で政府や企業に膨大な個人情報が集まり「監視社会」の恐れも指摘される。『幸福な監視国家・中国』(NHK出版新書)の著者である神戸大学教授・梶谷懐氏はこう話す。
「中国・アリババの拠点がある杭州市を、内閣府はスマートシティの一つの例に挙げています。欧米ではプライバシーの問題で頓挫したアイデアも、中国では実行できる。デジタル社会において、効率を追求する新自由主義的な政策を進めるには、皮肉なことに、小さな政府ではなく、中国のような“強い政府”が求められているのです」
「ショック・ドクトリン」の懸念
コロナ対策でIT化の遅れが浮き彫りとなった日本とは対照的に、中国政府はハイテク企業のビッグデータを活用。人々の行動を制御し、感染を抑え込んだ。国家と民間資本が一体となる習近平政権の目指す経済体制(シーノミクス)を見習い、「スガノミクス」でも規制撤廃・デジタル化を推し進めるべきとの声も聞こえる。しかし、こうした危機的状況に乗じて、早急に改革を進める「ショック・ドクトリン」を梶谷氏は警戒する。
「中国革命の父・孫文が『中国人はバラバラの砂のようだ』と言ったように、中国社会は個人がまとまるのが難しく、政府が上から管理するしかないと考える人も多い。日本は業界組合や地域コミュニティなどの中間団体がしっかりしており、現場からの視点で政府と対峙してきた。それを竹中氏は既得権益と呼び、コロナ禍を機に一掃しようとしています。効率性だけを考えれば見直すべきものもある。ただ、中間団体を一掃すれば、弱い存在の個人が国家や大企業と直接向き合う社会になる。上からの改革を目指す竹中氏にとって、中国は理想的な社会かもしれないが、日本では中間団体を生かす方法もあるのではないでしょうか」
次は中国の背中を追うつもりか。
【ジャーナリスト・佐々木 実氏】
’66年生まれ。日本経済新聞社を経てフリーランス。大宅壮一ノンフィクション賞などを受賞した『市場と権力』(講談社)が’20年9月に文庫化。
出典:https://news.yahoo.co.jp/articles/7334d465f3d6d0951b7243f847f45012dd78f00f?page=4
確かにコロナ禍は欧米で感染者が多く、逆に最初の段階では習近平が「感染隠し」に走って感染を一時拡大させた中国は、一転して政府の徹底的な強権でコロナを抑え込んだ。一方、「小さな政府」路線の伝統的な新自由主義を貫いたトランプのアメリカやボルソナロのブラジルで、コロナの感染拡大が最悪になっている。中国は経済活動では相変わらずの新自由主義の国だから、「強権的な統治機構と弱肉強食の剥き出しの資本主義の結合」が中国の特徴だといえるかもしれない。「監視」も「競争」もともに激烈な社会など「弱い存在の個人」にはたまったものではない息苦しさというか生きづらさだが、中国は今回のコロナ禍においては間違いなく「勝者」だった。竹中平蔵はその中国をお手本としているのではないかとの指摘だ。共産党の大門実紀史が「中国のマネをするな」と批判していることも注目される。
いわゆる「リベラル・左派」や政権批判派の中にも、中国(やロシア)の強権的体質に対して妙に(あるいは異様に)甘い人たちがいるが*1、このように「新自由主義の新たな脅威」に警鐘を鳴らしている人たちがいる。
竹中平蔵の評判に話を戻すと、上記記事についたヤフコメも竹中を非難・罵倒していない者は一人もいないといえるほどだ。それらの竹中批判・罵倒コメントに対する反応も、肯定が否定を100倍ほども上回っているものが多かった。
もちろん世論調査で竹中平蔵に対する支持/不支持を聞けばここまで極端な数字にはならないだろうが、それでも「竹中支持率」が現在の菅義偉内閣支持率である30%台あるいは40%台よりもかなり低く、多くても20%台くらいではないかと思われる。
過去にここまで竹中平蔵が嫌われたことは、最初の文章で触れた通り政権交代の直前の2008年後半から2009年前半にかけてであって、当時は中谷巌の「転向」が話題になった。
さらに遡ると、2002年10月26日付の朝日新聞が竹中平蔵を擁護する、「不良債権――「竹中いじめ」の無責任」と題した社説を掲載したことがあった。第1次小泉純一郎内閣時代だ。当時は朝日・毎日両紙や民主党*2などが新自由主義側の陣営にいた。
自民党政治が新自由主義的な傾向を強めたのは、何も小泉政権時代に始まったことではなく、橋本龍太郎政権もそうだった(さらに遡れば中曽根康弘政権があり、もっと遡れば大平正芳「保守本流」政権もある)。また竹中平蔵を最初に取り立てた時の首相は小渕恵三だった。
当時の惰性力が今もずっと続いており、その過程で菅義偉と竹中平蔵とが結びついた。そして新自由主義の政治・経済の弊害が今回のコロナ禍でその凶悪な牙を剥き出す形で示された。昨日報道された、看護職の離職希望者があった病院が2割を超えているというニュースはその一例だ。本来なら医療に割くべき政府支出を「GoTo」キャンペーンなんかに割り振ったのがネオリベ自民党政権であり、「GoTo」を推進した菅義偉は自民党にあってももっとも新自由主義的傾向が強い人間だ。
その新自由主義が今問われているわけだ。だから菅義偉政権の支持率「暴落」も当然であって、この政権の下で解散総選挙が行われる可能性自体、かなり低くなった。菅政権は間違いなく短命で終わる。疫病神・竹中平蔵と癒着しているような総理大臣に未来などあろうはずがない。
ただ、後継総理大臣候補として名前が挙がっているのは河野太郎、加藤勝信、西村康稔らだ。野党はまだ期待されていないし、来年の総選挙で与野党が逆転する展望も持ちづらい。一番ありそうなのは、上記3人のうち誰かが総理大臣になって、例によってマスメディアが提灯報道をしているうちに解散総選挙があって自公が勝つか、少なくとも負けないパターンだ。
現在の混迷がすぐに終わるとは考えづらい。安倍政権終了まで続いた「崩壊の時代」は既に「混沌の時代」へと移り変わっている。