kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

今年に入ってからのドイツのCOVID-19「致死率」が高かったのは、ドイツが日本より早く感染の急減期に入っていたからでは?

 本エントリでは、下記のツイートを批判する。

 

 

 上記ツイートに貼り付けられたグラフは、もしかしたら単純に3か月間の総死亡者数を同じ期間の総新規陽性者数で割り算したものではないだろうか。

 そうだとしたら、そのグラフに基づく議論は危険だと思う。

 計算法がそのようになっていることは、NHKのサイトのデータからそのように計算して得られる致死率とほぼ合っていることから推測される。それは、昨年1〜3月が2.95%、同4〜6月が5.49%、同7〜9月が0.92%、同10〜12月が1.26%、今年1月以降が1.71%となっている。昨年7〜9月までは私の計算と同じだし、同10〜12月と今年1月以降も0.1ポイントずつ違うだけだ。

 しかし、区切りをさらに細かくして昨年5月だけの日本国内の致死率を計算すると、実に17.8%になる(新規陽性者数2477人に対して死亡者441人)。これは昨年春の緊急事態宣言によって新規陽性者数が急減したものの、新規陽性者数のピークから平均で3週間から1か月程度遅れる死亡者数がピークを迎えたために多く出たためだ。高山医師が作成されたグラフの一番右にある今年1月以降というのは、1か月と数日でしかないから、このような短い期間での致死率を切り取った議論は大変危険だと考える次第だ。

 なお、昨年5月と同様の現象が現在も見られている。2月に入ってからまだ1週間だが、最初の6日間の発表から計算される「致死率」は4.46%だ(新規陽性者数13971人に対して死亡者623人)。だから、1月の致死率が1.47%だったのに対して、「1月以降」の致死率は1.71%に達してしまった。おそらく今年1〜3月の日本国内の致死率はかなり高い数字になるだろう。どのくらいになるかはわからないが*1

 また、昨年4〜6月の国内の致死率は5.49%だったけれども、区切りを5〜7月にすると致死率は一気に2.53%に落ちる。その前の昨年2〜4月の国内の致死率は3.17%だったから、「日本はずっと致死率が低かった」と主張できてしまう。

 おそらく、ドイツは日本より早く昨年11月か12月に感染の波のピークを迎え、1月はそれが過ぎて新規陽性者数が急減するものの、死亡者数が遅れて減少するために、致死率が見かけ上高く出る期間にあったのではないか。日本でも、2月だけの致死率なら相当に高い確率で5%を超えるだろうと私は予想している。

 以上の理由から、「日本は検査が少なく無症状感染者をちゃんと拾えていないと言われる割に致死率が低いのは、医療が効果的に行われていることと医療の質の高さから」だという結論を導くのは誤りだと考える。

 この例に限らず、致死率の議論は誤解を招きやすい。現在の状況とは異なるが、感染の急拡大期には致死率が見かけ上低く出るので、妙な「安心理論」が出てきやすい。昨年4月に緊急事態宣言が発出された前後がそうだったし、第2波が立ち上がった昨年7月は特にそうだった。この時期には「ウイルスが弱毒化した」という俗説*2が広まり、これが人々の気を緩ませる原因の一つになった。

 致死率の議論には慎重さが必要だ。

*1:こういう感染者の減少局面では,例の「K値」が威力を発揮してくれるかもしれない(笑)。

*2:ウイルスの弱毒化は、もっと長いタイムスケールにおいては有力な学説だが、昨年夏の感染状況に当てはまるエビデンスは全くない。