kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

日本保守党、ネット支持急拡大も「話題は非常に局所的」 世論調査で見えた実像(J-CASTニュース)

 以前、日本保守党が結党される前に、この政党は「永遠の0」だとして、国政選挙で議席を獲得することはないだろうと書いたことがあった。

 その日本保守党について、先日J-CASTニュースが記事を出した。

 

www.j-cast.com

 

日本保守党、ネット支持急拡大も「話題は非常に局所的」 世論調査で見えた実像

2023年11月18日12時00分

 

   作家の百田尚樹氏が代表を務める政治団体「日本保守党」がネットで注目を集めている。2023年9月1日に公式X(旧ツイッター)アカウントを開設し、約2週間で自民党のフォロワー数を抜いて国内政党で最多になった。

 

  また、党員が10月31日時点で5万4000人を超えたと発表している。内閣府男女共同参画局の資料によれば、日本維新の会と参政党の党員はそれぞれ約4万人(22年12月時点)。過去のデータではあるが、保守党が上回っている。

 

   Xフォロワーや党員数を飛躍的に伸ばす同党を、学者はどう見ているのか。京都府立大学公共政策学部准教授・秦正樹氏(政治学者)は、ウェブの世論調査をもとに「話題になっている場所は非常に局所的です」と指摘し、国政に進出するのは現状難しいとの見立てを取材に示した。

 

「既存政党に対する不満」

 

   日本保守党は、百田氏とジャーナリストの有本香氏が設立した政治団体だ。百田氏が代表を務めるほか、有本氏が事務総長、河村たかし名古屋市長が共同代表に就任した。「日本の国体、伝統文化を守る」「安全保障」「減税と国民負担率の軽減」「議員の家業化をやめる」など8つの重点政策を掲げる。

 

   10月17日に開かれた結党会見では、百田氏は「日本の文化や国柄、ナショナルアイデンティティーが内側から壊されかかっています。断固として日本を守る。そのための新たな政治勢力が必要です」と宣言し、国政政党に育て上げるとの方針を示した。

 

   質疑応答では、同党が注目を集める要因を尋ねられる場面もあった。百田氏は「主観があると思いますが、既存政党に対する不満を私は感じます」と説明し、「ようやく選挙に行ける」といった意見が寄せられていると答えている。

 

   保守党はXフォロワーや党員を急激に広げるだけでなく、百田氏と有本氏がゲストで出演したインターネット番組もネットで注目を集めた。ニュース番組「ABEMA Prime」が9月26日に配信した回は、百田氏らが設立経緯や政策方針などを説明し、YouTubeの再生回数が11月8日時点で340万回を超えた。コメント欄では、同党を好意的に受け止める声が相次いでいる。

 

   こうした注目を集める保守党を、学者はどのように見ているのか。政治学者の秦正樹氏は「ネットでは確かに話題になっている」としつつも、同氏が実施した世論調査結果をもとに、必ずしも日本全体で話題になっているわけではないと指摘する。

 

「保守党が小選挙区で勝つのは難しい」

 

   秦氏が10月下旬に行った世論調査はインターネットで集計し、保守党に関する項目を含めた質問事項に2096人が回答。なお、オンライン調査の都合によって生じる分布の偏りは、統計上のウェイト処理で年齢や性別を補正し、可能な限り、有権者全体の縮図となるように調整した。

 

   秦氏によれば、一部の層しか保守党を詳しく認知していないことが明らかになった。政党名と政策方針を知っているのは約10%であり、政党名だけは見聞きしたことがあるのは約30%、保守党の存在自体を知らないと答えたのは約60%にのぼるという。「ウェブ調査でなければ、政党の存在を知らない層の実際の割合はより増えるのではないか」とも付言した。

 

   同党が国政政党、さらに自公に代わる与党を目指す場合、秦氏は「現状では右派層のごく一部に知られている程度なので、右派だけでなく、左派や中道にも幅広く認知される必要があります」と指摘する。

 

   また、右派・中道右派・中道・中道左派・左派が各政党に抱く好感度(感情温度)の平均値は「右派、中道右派でも、保守党より自民党の方が好感度が高い」との結果が出た。好意も反感もない場合は50点とし、政党名を知らなかったり答えたくなかったりする場合は点数をつけていない。

 

【右派】

保守党:56点、自民:74.9点、立憲:23.3点、維新:57.6点

中道右派

保守党:40.4点、自民:58.7点、立憲:33.6点、維新:55.1点

【中道】

保守党:33.8点、自民:39.6点、立憲:41.8点、維新:45.6点

中道左派

保守党:28.6点、自民:34.8点、立憲:50.5点、維新:43.3点

【左派】

保守党:20.0点、自民:18.7点、立憲:45.4点、維新:28.3点

 

   さらに、各政党の支持者が他の政党に抱く好感度の平均値を踏まえ、秦氏は「保守党は無党派層からの支持も少ない」と説明する。無党派層は、自民に36.2点、立憲に36.9点、維新に41.6点、保守党には31.1点との好感度を示している。

 

   なお、自民党支持者は自民に69.7点、立憲に29.3点、維新に55.8点、保守党には47.6点、参政党支持者は自民に70.3点、立憲に6.4点、維新に70.8点、保守党には85.0点との数値だ。自民よりも保守党に高い好感度を示すのは、「政治家女子48党」「れいわ新選組」「参政党」「その他の政党」を支持する層だった。

 

「本来は有権者の思いを受け取るのが政党です」

 

「保守党は少なくとも左派政党でないことは明白です。そして、自民党が広く保守全体のポジションを握っているわけですよね。基本的には、保守で入ってきても自民党にのまれる可能性が高く、ターゲットとなるのは自民党よりもさらに右寄りのごく一部の層に限られるため、保守党がとくに小選挙区制で勝つのは、制度的・実質的にほぼ不可能だと思います」

 

   小選挙区ではなく比例代表制議席を取る場合、秦氏は「保守党の場合は、やはり認知度勝負になります」とし、さきほどの世論調査の結果を踏まえて「(保守党や百田氏の)認知度はそこまで高くない」と現状を分析。また、支持層は百田氏らを元々知っていた層ではないかと推測し、新たな層を掘り起こしている感じはしないとする。

 

「自民でも維新でもなく、より強い右派色を強調する政党がほしいと思っている支持層を基盤に、保守党が比例で勝負する場合、参議院選挙の比例でいえば全国で政党名と個人票あわせて100万票近くを獲得する必要があるわけです。ですから、党員が5万人ほど集まったとしても、衆議院であれば地域ブロック別になるので基盤となる5万人が分散してしまう形になりますし、参議院の全国比例であっても、5万人から100万票近くまで、およそ20倍に支持を広げるのはそう容易なことではありません。テレビや新聞などへの露出を増やして、他の主要政党(主に、自民・維新)よりも政策的に望ましいことをアピール・説得して、さらに投票行動にまでつなげるのはかなり難しいというのが実際のように思います」

 

   保守党が議席を獲得するためには、どのような方針を取る必要があるのか。

 

「政党にとって一番大事なのは、結局どのような支持基盤を取りたいかということです。保守党は『一部の支持層だけでいける』というやり方をしているように見えますが、大きくて強い政党を目指すのであれば、特に有権者の半分近くを占める中道層を取りにいく必要があります。有権者の約85%が中道・中道右派中道左派にいるわけですので」

 

   また、中道あるいは中道右派層の支持を狙うためには、政党が有権者に寄り添う態度も必要だと述べる。秦氏は「政党は国民に啓発したり啓蒙したりする機能も一部あるとは思うんですけど、やはり、有権者の思いを受け止める役割も極めて重要です。有権者が政党に合わせにきてほしいという方法では、勢力はなかなか大きくならないのではないかと思います」と説明した。

 

有権者が一番興味があるのは、経済政策なんです。外交・安全保障や価値観に関する政策を主張することはもちろん重要なんですけれども、やはり多くの有権者を獲得しようとすると、一番打ち出すべきなのは経済政策です。他の政党にはない、魅力的な経済政策を打ち出していかないと、多くの有権者はなかなか投票候補先の一つに入れてくれないんですよね」

 

   ただし、秦氏は、移民や外国人労働者、インバウンド(訪日外国人客)が治安を悪くするなど社会状況の変化が起こった場合、保守党が人気を博す可能性はゼロではないとしつつも、「世論調査の結果を踏まえると、現状として勢力の拡大は難しいのではないか」と話した。

 

J-CASTニュースより)

 

URL: https://www.j-cast.com/2023/11/18473168.html?p=all

 

 J-CASTニュースの記事は政治学者・秦正樹氏の見解を、氏の調査結果を示しながら紹介したものだが、秦氏の見解は非常にリーズナブルで、結論も「永遠の0」説を主張する私にとっては非常に心強いものだ。秦氏百田尚樹や有本香らの保守党が参院比例区議席を獲得することさえ簡単ではないと言っている。早い話が「永遠の0」だ。

 なお、秦氏の見解は自民や立民などにも参考になる部分がある。

 まず、最近の自民党議員の中には、経済政策で支持されないのなら改憲に力を入れよう、などと言い出す向きが少なくなく、野党でも軽佻浮薄な民民の玉木雄一郎などはそれに乗っかっているが、自民党が本当に「経済より改憲」に力を入れるなら、自民党政党支持率はますます急激に下がるだけであることは火を見るよりも明らかだ。その支持率低下はほとんど壊滅的なものになるのではないかとさえ私は思う。

 それから、記事中に示された秦氏らによる世論調査を見ると、立民支持の度合いが最も強いのは中道左派であることがわかる。ところが泉健太が代表になって以来、立民は「提案型野党」路線や維新へのすり寄りなど、中道左派層の神経を逆撫ですることばかりやってきた。その両方に失敗したために右側へのすり寄りは一頃ほど派手にはやらなくなったが、失敗を犯した泉健太が責任を取らずに代表の座に居座っていることは大問題だろう。何より、泉が代表になって立民から離れた3分の1ほどの票は、いまだに全く戻っていない。少し前に自民と維新の敵失から少し戻ったかと見られた時期があったが、その後再び失速して元の木阿弥になった。

 このように、保守党のポテンシャルのなさをはっきり指摘するとともに、自民や立民にも教訓を与える、なかなか良い記事だと思った。