昨日ぶっ叩いた下記Xはまだ撤回もされていないようだ。もっとも閲覧回数わずか598回だからほとんど注目されていないポストではあるが。
区長選からほとんど票伸ばせてないからね この固定票頼みなら、5万強集められたら負けてしまう
— 駅前は朝の七時 (@ystak13am7) 2024年4月29日
これはいうまでもなく虚偽に基づいて酒井菜摘氏を貶める悪質なポストだが、なぜこういう言説が出てきたかというと、おそらくNHKがネットでやっていた開票速報を見ていた人が、途中までいっこうに各候補者の差が開かなかったところから生じた誤解だろうと気づいた。
開票作業は、玉入れの数を数える方式で行われたようだ。ひとおつ、ふたあつ、みっつーという掛け声とともに、籠に入った玉を一つずつ投げ上げるあれだ。それが同じ候補者の名前が書かれた投票用紙100枚を一つの玉として行われた。
だから、酒井菜摘、須藤元気、金沢結衣、飯山陽、乙武洋匡各候補の票は、ある時点まで並んでいた。そして5人のうち真っ先に票が増えなくなったのが5位の乙武だった。それに気づいた私は下記記事を書き始めたのだった。
この記事は書くのに結構時間がかかったので、書き終えて公開した頃には開票率99%にまできていた。その時点ではもう酒井菜摘候補の得票が4万9千票を超えていて、あとは端数を確定させるだけだった。
だから、開票速報をずっと追っていたわけではないが、最後の方は酒井候補の票が伸びるばかりだったに違いない。そして、その途中を見た人は、「なんだ、酒井の票はたいして多くないじゃないか」としか思わなかったのだろう。確かに得票率29%だからそんなに多くはないのだが、昨年12月の区長選での得票率21%と比較すると8ポイント、率にして38%増えている。これを「区長選からほとんど票伸ばせてない」などとは誰にも言えないはずだ。
だがネットでは、途中経過を見て誤解した人が発したXを、酒井氏やリベラル派をあまり好まない人たちがリポストし、それを仲間内の人たちの誰も指摘しない。指摘するのは酒井氏は支持するものの立民右派を嫌う私のような人間だけということになってしまう。
ああ、だからXは嫌なんだよ、と思ってしまった。私はやむなくアカウントを開設したが、Xのポストは1件もしていない。
ところでもう一つ、選挙戦終盤での須藤元気の票をヤマシン(山本太郎信者)たちが狂喜するという現象についても触れておく。
選挙が終わってみれば、選挙戦中に勢いが変わった候補は2人だけだった。それは前記須藤元気と維新の金沢結衣であって、須藤は伸び、金沢は沈んだ。下記Xで三春充希氏が指摘する通りである。
2番手から5番手が食い違う様子からは、かなり票が近接している事がうかがえました。情勢報道は4月23日が最後であり、そこから投票日までに須藤氏が伸び、金澤氏が失速した可能性があります。公明支持層は一応は乙武氏に入れたものの、積極的な投票行動はみられませんでした。https://t.co/3QYXYTYWRO
— 三春充希(はる)⭐第50回衆院選情報部 (@miraisyakai) 2024年4月28日
金沢の失速については、巷間言われる通り、維新代表の馬場伸幸が応援演説で「立憲共産党」を連呼して酒井候補を罵り続けたことが金沢候補の足を思いっきり引っ張ったものだろう。そんなのを聞かされた聴衆は、ああ、金沢さんは相当酒井さんに引き離されてるんだろうなとしか思わないだろうし、実際その通りの選挙結果だった。
一方、須藤氏の伸びに関して、三春氏は24日に山本太郎が須藤氏の応援に入ったことを指摘している。それが須藤氏の表の伸びに影響した可能性を示唆しているとも読めるが、それは大いに疑問だ。
須藤氏の2位は大健闘で、乙武氏は五位不満足でしょうね。しかし情勢報道は4月23日のものが最後で、山本太郎氏が須藤氏の応援に入ったのは24日ですから、須藤氏の終盤の伸びは情勢報道を逸脱するものとして読むことができます。そこまで読み込むんですよ。https://t.co/uTBNNdAgFD
— 三春充希(はる)⭐第50回衆院選情報部 (@miraisyakai) 2024年4月28日
なぜ大いに疑問かというと、それは江東区は元号新選組の政党支持率が低い地域だからだ。同じ東京でも、たとえば中央線沿線とは全然違うのである。新選組は立民ともども城東が苦手なのだ。強いのは公明と共産であって、だから今回の補選でも立民は共産との共闘を選んだのである*1。
同じ三春氏がポストした下記Xが、須藤氏が伸びた最大の要因を示唆している。
第25回参院選(2019年)の比例代表で須藤元気氏が元気だったところ(個人票の相対得票率)。細かいですが、地元の江東区で突出していることがうかがえます。 pic.twitter.com/u44JaQJ3no
— 三春充希(はる)⭐第50回衆院選情報部 (@miraisyakai) 2024年4月29日
拡大図じゃないと見づらかったですね。https://t.co/NcNd39XTAQ pic.twitter.com/qsHugiwJpd
— 三春充希(はる)⭐第50回衆院選情報部 (@miraisyakai) 2024年4月29日
須藤元気に投票した人たちが同氏を選んだ理由の筆頭は、9候補者中唯一の江東区出身者だったことだろう。
やたらとうるさいばかりの選挙戦だったけど、結局誰が良いのかさっぱりわからなかった。それなら地元の須藤さんを、といった具合に、決めかねたあげく最後の最後に須藤氏を選んだとか、あるいは毎日毎日チャリを漕いで選挙運動をしていた須藤氏に出くわして須藤氏への投票を決めたとか、そんな人たちの方が、山本太郎が須藤さんの応援演説に入ったから須藤さんに決めた、という人よりもずっと多いだろう。第一、区民であっても山本が須藤氏の応援に入ったことなど知らない人の方が圧倒的に多いはずだ。私もXで見なければ知らずに終わるところだった。Xのアカウントを開設したのは今月に入ってからのことである。これほど毎日のように東京15区補選のブログ記事ばかり書いてきた私でさえそうなのだ。江東区民のうちどれくらいの人が山本の須藤氏応援入りを知っていたというのだろうか。
選挙全体についていえば、これほど外野席からばかり注目されて、区内では盛り上がらなかった選挙は経験がない。肌感覚では昨年12月の区長選と同じくらいの熱気のなさだったが、実際の投票率も区長選と同じくらいだった。これが衆院選や参院選の本選だと、候補者の顔写真が貼られた掲示板の前で何やら話をする夫婦とか友達同士とかが結構いるものだが、今回はそうした場面に遭遇することがほとんどなかった。だが補欠選挙の注目度はそういうものであって、投票率が本選よりもずっと低くなるのが普通なのである。今回の東京15区補選もその例に漏れなかった。
それにしても、外野席から聞こえてくる選挙評論が選挙区内にいる人間にとって的外れなものばかりであることがよくわかった。的外れの選挙評論についてはこれまで大濱崎卓真や安積明子の具体例を挙げて批判してきた。
今日は4月の最終日。ようやく一区切りつけられる。あとは読書・音楽ブログに短い記事を公開し、その告知記事を出したら今月の更新は終わりになる。