吉田晴美が立民代表選に無事出られることになったことは本当に良かった。
しかし吉田氏だけでは頭数がなかなか揃わず、江田憲司一派の助けを借りた(何しろ江田憲司本人が推薦人に名を連ねている)ことで、候補者としてビジョンを明確に示すことができなくなったのじゃ残念だった。何しろ、旧「みんなの党」系が入り込んでしまう一方で菅直人Gからの支援もある。水と油が混じり合うことはない。
とはいえ吉田氏の当選は最初からあり得ず、出ることに意義があると言える。推薦人の一人である酒井菜摘が昨年末のやり直し江東区長選に出馬したのと似た意味合いがある。その観点からいえば決して悪くない。
吉田氏に期待することはただ一つ。「分派禁止条項を伴う民主集中主義」が批判される日本共産党と相当程度相通じると私が批判しているところの、現在の立憲民主党のあり方を民主主義化することに寄与することだ。
この点で、下記さとうしゅういち(id:lifeunion)さんからいただいたコメントに強く共感する。
さとうさんがいうところの「スターリン主義の国会議員」は、今回の立民代表選で泉健太の推薦人に名を連ねている。森本真治参院議員(広島選挙区選出)だ。
4人の候補者の推薦人は下記Xで確認できる。
【立憲民主党代表選の推薦人一覧】
— ニコニコニュース (@nico_nico_news) 2024年9月7日
江田憲司議員は吉田晴美議員の推薦人となりました。
野田佳彦氏、枝野幸男氏、泉健太氏、吉田晴美氏の4名が出馬 共同会見を生中継
▶ https://t.co/dVtdEE2VTh#立憲民主党 #立憲民主党代表選 #立憲民主党代表選2024 #野田佳彦 #枝野幸男 #泉健太 #吉田晴美 pic.twitter.com/UvwFI3fwWY
この森本が立憲民主党広島県連を独裁し、広島の立民を自民党よりひどい新自由主義体質にしてしまったというのがさとうさんの認識だ。森本は泉Gの幹部だし、2019年の参院広島選挙区再選挙で当選した宮口治子は直諌の会のメンバーだ。この宮口は、参院選再選挙に出馬するまでは無名の人で、新自由主義系の立民県議の配偶者か何かだったらしい。だから当選後も立民右派の政治家として活動している。選管をやってるとかで今回の代表戦では推薦人にはなれない人らしいが、決選投票に野田佳彦が出てくれば(というか野田は確実に出てくるし、下手したら初回の投票だけで野田が勝つとの見方もあるようだが)、当然野田に投票するであろう人だ。そんな宮口も、もし選管をやってなければ吉田晴美の推薦人に名を連ねたかもしれない。
吉田晴美自身は、前回の代表選で西村智奈美に投票したリベラル系の人だ。その前の衆院選では、手塚仁雄の奸計によって危うく東京8区の総支部長から下ろされるところだったが、支持者たちの強い支援が手塚の奸計を粉砕した。今回も当選1回で立民代表選出馬を実現させたのだから、政治家個人としてはたいへん有望な人だと思う。そんな吉田氏だから、今回の代表選では党運営の民主化の議論をリードしてもらいたい。現状の立民は、共感するところが多いXアカウントの「ぷろもはん」氏が楽観的にいうような「ボトムアップの政党」とは決していえないと私はみていて、その点ではぷろもはん氏とは意見を異にする。
その吉田氏は、江田憲司と組んだためか消費税減税を打ち出した。また泉健太も推薦人集めで助けてもらったであろう江田との約束でもあるのか、唐突に食料品の消費税非課税を打ち出して、熱心な泉支持者のnaoko氏に「梯子を外された」と嘆かせた。私の見るところ、泉は政権より世渡りの人だ。今回の推薦人集めの失敗は、前回みごとに大成功した自らの処世術を過信した油断があったのではないかと私は考えている。そんな泉だから、一方で逢坂誠二とともに新立民の綱領を作成したとは言っても、現実の党運営においては「提案型野党」を打ち出したり「『維新八策』に大部分協調できる」などと言って維新代表の無能な馬場伸幸に媚びたりした。政治家は、建前よりも実際に何をやったか、あるいはやろうとしたかで評価しなければならない。その点で泉は失格だし、江田憲司も、たとえ今回の吉田晴美との合意書の文面ではボロを出してなかろうが、過去に維新と合流したことなどから全く信用ならない政治家といえる。
食料品の軽減税率を含む消費税に関する議論については、今日も北守(藤崎剛人)氏のXを引く。
#立憲民主党 の代表候補者たちは、せっかく #消費税還付法案 という優れた政策があるのだから、還付法案+ベーシックサービスの充実で #消費税 政策を統一してほしい。この局面でよくない左派言論に押されて消費税減税とか軽減税率とかを議論するのは見てられない。進次郎に勝てない。…
— 北守さん (@hokusyu1982) 2024年9月7日
吉田晴美には立民の民主化への議論をリードしてもらえば良いとして、いざ代表選に入るや泉健太がいきなりフラフラし始めたのは本当にどうしようもない。
これに、はてなの政治議論界隈においてリベラル派の論客として一世を風靡した「地下猫」さんが下記の反応をしている。
むしろ、消費税率をあげて、還付額(定額)も大きくするほうが望ましいんじゃないかと思う。
— 地下猫 (@tikani_nemuru_M) 2024年9月7日
税には単独で良し悪しなどない。
一定以上の還付がセットなら、消費税は良い税だ。
逆進性のある消費税に、それよりもっと逆進性が強い人頭税を裏返しにした一定以上の還付を組み合わせれば逆進性が弱められて、何より税収を拡大できる。その結果、現金給付よりはるかに効果が高い現物給付(医療や介護など)にお金を使うことができる。最悪なのは、維新のように現物給付を「バサーット切る」(by 橋下徹)ことだ。みんなの党も維新と同じ体質の政党で、現に日本維新の会の橋下・松井一派と組んで「維新の党」を結成した。東京15区の住民として書くと、柿沢未途もその一員だった。
江田憲司氏の財務省批判はそれなりに説得力はあるが、だとしても消費税減税⇒還付法案+ベーシックサービスが上位互換。
— 北守さん (@hokusyu1982) 2024年9月7日
残念ながら研究では、食料品の軽減税率はむしろ富裕層に有利という説が有力です。中低所得者の家計支援のための給付やベーシックサービスは行うべきだとしても、現状は悪性とはいえインフレはインフレなので、なお消費を過熱化させることが経済にとってよいかどうかは微妙です。中小企業や零細商店の支… https://t.co/8Co4RXzZax
— 北守さん (@hokusyu1982) 2024年9月7日
たとえばこの枝野氏のリベラル・左派勢力にとっては当然の意見も、コメント欄を見ると消費税が消費税が消費税がで埋め尽くされてしまうわけです。こんなことでは自民党の新自由主義政策に対抗するまっとうな議論空間をつくれるわけがありません。 https://t.co/MlZR076FSa
— 北守さん (@hokusyu1982) 2024年9月7日
上記Xからリンクされた枝野幸男のXは下記。
いや。「雇用の流動性」で恩恵を受けることができるのは、一部高額所得者の勤労者か、特殊高度な技術技能等をお持ちの方だけです。…
— 枝野幸男 #立憲民主党 #埼玉5区 衆議院議員 (@edanoyukio0531) 2024年9月2日
これは自民党総裁選に出馬する河野太郎(過激な新自由主義者の1人)が打ち出した解雇規制緩和を批判したXだが、確かにコメント欄が「消費税が消費税が消費税が」で埋め尽くされている。
枝野は上記Xに全文を書ききれなかったらしく、下記Xに続きが書かれている。
⇒あえて申し上げれば、圧倒的な勤労者のためには、相当な規制強化による権利保護をセットにしなければ「雇用の流動化」はマイナスです。
— 枝野幸男 #立憲民主党 #埼玉5区 衆議院議員 (@edanoyukio0531) 2024年9月2日
少なくとも雇用を流動化を主張するなら、どのような労働者保護をセットにするのか、それがどういう効果をもたらすのかを示す必要があります。
1件目は埋め込みリンクには最初の方しか表示されないので、以下に全文を引用する。
いや。「雇用の流動性」で恩恵を受けることができるのは、一部高額所得者の勤労者か、特殊高度な技術技能等をお持ちの方だけです。
非正規が拡大し安定的な雇用が崩れたことが格差、貧困の背景です。このことが消費する力=購買力を弱めて消費不況の原因となり、技術、技能、スキルを弱め、子どもの貧困による教育力の低下や止まらない少子化にもつながっています。まさに、日本の競争力を弱めた背景に、不安定雇用の拡大があります。
今必要なのは、#人間中心の経済 で、「希望すれば正規雇用で働ける。希望すればできるだけ安定して働ける。」というまっとうな雇用環境を取り戻すこと。労働規制は緩和でなくむしろ必要な部分についての強化。 自民党と私たちとの明確な違いの一つです。
あえて申し上げれば、圧倒的な勤労者のためには、相当な規制強化による権利保護をセットにしなければ「雇用の流動化」はマイナスです。 少なくとも雇用を流動化を主張するなら、どのような労働者保護をセットにするのか、それがどういう効果をもたらすのかを示す必要があります。
URL: https://x.com/edanoyukio0531/status/1830422961662357830, https://x.com/edanoyukio0531/status/1830426698594283734
確かに北守氏が書く通り「リベラル・左派勢力にとっては当然の意見」だと私も思うが、これが自民党総裁選では全く議論に登場しない「消費税が消費税が消費税が」にかき消されてしまう。吉田晴美は江田一派の助けを借りなければ代表選に出馬できなかったので、ここは(党内少数派としていろいろ不満を持っているであろう)江田一派にも抵抗がないであろう、党運営の民主化の議論を活性化させる役割に期待したい。
ところで、春の衆院東京15区補選が、泉健太信者が集合した立民右派支持層(その代表格が「駅前は朝の七時」)に目をつけるきっかけになったが、今回の立民代表選で新たに目につくようになったのが「ノダシン」のアカウントだ。中でも特に凶悪なのが下記。
野田さんの非自公・非共産一本化、つまり立維共闘には賛成の立場でだからこそ代表選では野田さん熱烈支持なわけだが、これは維新にとっても大きなメリットがあることを維新支持層にも分かってもらいたい。… pic.twitter.com/cOEg58fkFE
— ㋐㋓㋥㋖@野田佳彦熱烈支持! (@noda2024naikaku) 2024年9月5日
「野田・オザー連合で政権交代待ったなし!」と謳うこのアカは、それにもかかわらず衆院選で政権交代があるとは予想していない。また泉健太にも相当好意的である点が、野田への徹底的な攻撃を強めてきた「駅前は朝の七時」らとは大いに違う。
それにしてもまあ、ネットに活発に意見発信をする立民支持層には右派が多いんだなあと、春の補選以来ずっと呆れるばかり。
ところが実際には、旧立憲民主党は唯一「分派が本家に勝った」例なんだよな。なお、この表現は私のオリジナルではなく、「改革市民」を名乗る立民右派支持系アカウント(とはいえ「駅前は朝の七時」などよりはかなり理性的)がXで使っていた表現をここに借用する次第。
余計なことを書くと、日本共産党にも「分派が本家に勝った唯一の例」がある。それが宮本顕治だ。だからミヤケンには功罪の両面があり、その「功」の面が日本共産党を今まで生き永らえさせてきた。しかし残念ながら伊里一智の「分派狩り」で出世した志位和夫にはミヤケンのような「功」はなかった。だから2021年の衆院選敗北を総括しなかったことをきっかけに、その矛盾が一気に噴出し始めて今に至る。その問題点とは、本記事で述べたように立民にも見られる「権威主義」(スターリン主義)をさらに極限にまで強めた性格のものだ。
だから両党への支持率は若い年齢層ほど低く、両党とも重大な危機に面していると私は認識している。今回、枝野幸男があえて出馬した最大の理由は、泉現体制への不満以上にそのことがあるのではないだろうか。
立民代表選の論戦を前に、野田佳彦は「政権交代前夜」などと抜かしていたが、こんな大甘な現状認識は、熱烈に野田を支持しているとみられるこたつぬこ(木下ちがや)から本来出てきてしかるべきではないだろうか。だが発言の主が野田だと、こたつぬこ氏から野田を批判するXは出てこない。ダブルスタンダードもいいところだと思う。
まあ、吉田さんには党のスターリン主義組織体質の改善への議論リードをぜひともお願いしたい。お宅のスターリン主義の国会議員にこちとら迷惑しているんだよと。