kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

榊原英資は前から消費税増税を主張してたよ

世に倦む日日 榊原英資の「ドル漂流」 - 消費税増税プロパガンダと変節の新手口 を読んだが、ちょっとブログ主の思い込みが強すぎるように思う。

私の認識では、榊原英資はかつては新自由主義寄りの人で、小泉純一郎政権を批判するようになったのも政権2年目の2002年になってからだったと記憶する。2002年当時、榊原はテレビ番組で植草一秀と共闘して反小泉の論陣を張ったが、植草も榊原同様、もともとは新自由主義寄りの人で、小泉政権に対しても「天下り根絶」や「景気対策の優先」などいくつかの条件を満たせば小泉を支持すると明言していた。

一方、以前から金子勝との共著を出していた神野直彦は、筋金入りの社民主義系論者だと私は考えている。

それに、榊原英資の消費税増税論は、何も最近始まったものではなく、以前からだ。サンプロの最終回だったか、榊原が竹中平蔵と論争し、民主党大塚耕平も出ていた時にも、榊原は消費税増税を主張する一方で、「大きな政府」を明言しようとしない大塚耕平に対して、「民主党は『大きな政府』の福祉国家路線を強く打ち出せ」と迫っていた。

世に倦む日日』のブログ主は、消費税増税新自由主義の政策だというが、これも必ずしも正しくない。それこそ神野直彦の年来の主張だが、新自由主義国・アメリカの税制は直接税が中心であって、消費税率は高くない。このことから、もし「小さな政府」を目指すなら、消費税率を抑えるべきだ、現にアメリカはそうしている、アメリカの方が日本よりも富裕層から所得税を多くとっているというのが神野の指摘だ。

この観点からいうと、「小さな政府」を目指すと言いながら、一方で消費税率を引き上げるという自民党や、この自民党の主張をさらに尖鋭化した「たちあがれ日本」(というか与謝野馨)の政策は、世界でも他に類例のない苛酷な税制を目指す最悪の政策であるといえる。

消費税率を高く設定するのは、確かに福祉国家に多い政策なのだが、それにも条件があって、直接税だけではまかなえない不足分を消費税で補うことと、生活必需品の税率は低く抑えることの2点が、消費税を増税する際に絶対に満たさなければならない必要条件だ。現在の日本の税収においては個人所得課税の寄与が小さすぎる、まず課税ベースを拡大せよと神野直彦が主張していることを、私はブログで何度も紹介したし、財政再建のための消費税増税は、神野が特に強く戒めているところである。

ただ、消費税増税新自由主義の政策だという意見は、一概に間違いとばかりは言い切れない。特に注意すべきは、消費税増税法人税減税とセットになっている場合、それはまぎれもなく新自由主義の政策だということであり、現在日本で盛んな消費税増税論議には、まさにそれが当てはまる。つまりそれは新自由主義の立場に立った議論にほかならない。この点に限定すれば、『世に倦む日日』の主張は正しい。