kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

早くも「お家騒動」沈静か? だが「江川ヘッドコーチ」の可能性が消えたのは大きな収穫

バカバカしいプロ野球読売球団のお家騒動だが、昨日書いた記事 「江川事件」リターンズ。33年前は読売の横暴に怒り、今回はナベツネの耄碌を嗤うw - kojitakenの日記 でバカにした通り、第一報を知った時から私はこんな件は「茶番劇」にしかならないと思っていた。

案の定、ナベツネに首を切られることが決まっているという球団社長・桃井恒和がナベツネに反旗を翻した清武英利を批判し、この件は早々と一件落着となりそうだ。


親会社・読売新聞の記事より。


http://www.yomiuri.co.jp/sports/npb/news/20111111-OYT1T01094.htm

巨人のコーチ人事、会長が指示と批判…清武代表


 読売巨人軍清武英利球団代表兼ゼネラルマネジャー(GM)は11日、文部科学省内で記者会見し、来季のコーチ人事について不満を表明した。

 清武代表によると、岡崎郁ヘッドコーチの留任について渡辺恒雄球団会長(読売新聞グループ本社会長・主筆)に報告し、了承を得ていたのに、9日になって渡辺会長から「ヘッドコーチは(元巨人投手の)江川卓氏とし、岡崎ヘッドは降格させる」と、これを覆す指示があったという。

 清武代表は「桃井恒和オーナーを飛び越えて、不当な鶴の一声で内定した人事を覆すような行為を、許すことはできない」と述べた。
(2011年11月11日22時16分 読売新聞)


http://www.yomiuri.co.jp/sports/npb/news/20111111-OYT1T01092.htm

不承知の会見「残念でならない」…桃井オーナー


 清武代表の記者会見を受け、巨人の桃井恒和オーナー兼社長は11日夕、球団事務所で記者会見し、「驚いているし、残念でならない」と述べた。

 桃井オーナーは「代表取締役である私が知らないところで、(今日の記者会見を)やったというのは、とんでもないことだ」と述べた上で、コーチ人事に関して「渡辺会長は親会社のトップであり、常に意見交換しているが、誰かの鶴の一声で変わるものではない」と説明。来季のヘッドコーチについては「江川氏に決まったわけではないし、球団として接触したこともない。岡崎ヘッドの留任も十分にあり得る」と話した。また清武代表の処遇については「当面は球団代表、GMの仕事をやってもらう。今後は球団と読売新聞社の取締役会で協議する」と述べた。
(2011年11月11日22時16分 読売新聞)


http://www.yomiuri.co.jp/sports/npb/news/20111111-OYT1T01103.htm

「正式な話ない」江川氏 


 巨人の原監督は11日夜、秋季キャンプ中の宮崎市内で記者団の取材に答え、「江川さんの件はまったく知らなかった。大事な先輩であり、功労者ですので、ご迷惑がかからなければいいが」と話した。

 江川氏は「正式に話は聞いていませんが、巨人軍ヘッドコーチに名前が挙がるのは大変名誉なことです。ただしこのような状況では、多くの関係者に迷惑を掛けてしまうことになるので、お受けするのは難しいと思います」とのコメントを出した。
(2011年11月11日22時16分 読売新聞)


常識的に考えればナベツネにたてついた清武の代表続投はあり得ず、首を切られるなり勝手に辞めるなりするだろうが、昨日「盗人にも三分の理あり」と書いた通り、残り七分の理は清武にはない。もちろんナベツネには一部の理もない。要するにこんなのは「腐敗勢力同士の内紛」に過ぎないのである。

だが、清武もむざむざ首を切られただけではない。戦果も残した。それは、朝日新聞に聞かれた魚住昭が言っている通り、「現役幹部がナベツネを公然と批判するのは『読売史上』初めて」ということもあるが、球団の人事に関していえば、江川卓のヘッドコーチ就任を事実上「消した」ことだ。


上記3本の読売の記事は、同日の同時刻に配信されている。それは3本の記事の整合性について事前に十分なすり合せを行なったうえで配信されたものであることを示すが、注目されるのは3件目の記事で江川が「正式に話は聞いていません」と言っていることだ。つまり、江川への打診は既にあった。私は、テレビ出演で楽して大儲けさせてもらっている江川がそんな話を受けるはずがないだろうと思っていたが、そうでもないケースもあり得ることに気づいた。想像するに、おそらく話は相当進んでいて、江川は前向きの返答をしていたのではないか。

一方、読売監督の原辰徳は言葉通り「全く知らなかった」に違いない。誰しも想像がつくと思うが、江川のヘッドコーチ就任は、「原の次の読売監督は江川」というナベツネのサインである。計算高い江川のことだから、監督を辞めたあとの読売グループのポストも要求し、ナベツネ(の使者の)側もそれを承諾していた可能性もある。もちろん、これは原にとって不利な話だから、原には伏せていたのだ。

ナベツネが原を嫌いまくっていることを思い出していただきたい。原は、2002年の監督就任1年目にいきなり読売を日本一に導いたが、翌年阪神の独走を許して3位に終わるとナベツネに解任された。後任はあの無能な堀内恒夫だった。堀内は、おそらく読売の監督として唯一通算成績が負け越しという超弩級の無能な監督だったが、堀内を監督にするときナベツネは「読売グループ内の人事異動」だと言い放った。

さらに、2009年のWBC監督の選考においても、ナベツネは当初無能な星野仙一に決めてかかっていた。その無能な星野仙一北京五輪で采配ミスを毎試合のように演じて惨敗し、世論の批判を浴びたが、それでもなおナベツネは星野にこだわり、星野もWBC監督就任に前向きの発言をしたために、世論の星野批判はさらにエスカレートした*1。そうなって初めて不承不承ナベツネは原を監督にしたが、その原が優勝監督になったことは記憶に新しい。

今回も、2年連続で優勝を逃し、クライマックスシリーズにも敗退したことで、ナベツネは原を切りたくて切りたくて仕方がないのだが、原には通算8期監督を務めて4度のリーグ優勝と2度の日本シリーズ優勝という実績がある。プロ野球ファンの方ならピンとくると思うが、この成績はリーグ優勝の回数で中日の落合博満と並び、日本シリーズ優勝の回数に関しては現時点では落合を上回っている。仮に今日から行なわれる日本シリーズで、不利と言われている中日がソフトバンクを破って優勝した場合でも、落合は原に並ぶに過ぎない*2。読売と中日の戦力の比較はともかく、こと優勝回数に限っては原辰徳は「落合級」の名監督なのだ。もちろん原は無能な星野仙一などとっくに超えている*3

だから、いかな「原辰徳大嫌い」のナベツネといえど、おいそれと原の首は切れないのである。それならと、ナベツネはヘッドコーチに刺客・江川卓を送り込み、原が不成績に陥れば、直ちに原を解任して江川を監督に昇格させるという悪だくみを思いついた。

しかし、それは清武英利の意に反することだった。今回の「お家騒動」はそこから始まったのだ。


「小沢(一郎)信者」は「TPP隠しだ」、ソフトバンクや中日のファンは「日本シリーズ隠しだ」と、それぞれ陰謀論に基づく批判をしている。しかし、このタイミングを逃したら、日本シリーズ終了後直ちに「江川卓氏、読売のヘッドコーチに就任」というサプライズ報道がなされるところだった。もしそうなれば、それはアンチ読売ファンにとってばかりではなく、読売監督の原辰徳にとっても、清武英利ら読売球団のフロントの大半の人たちにとっても不幸な出来事になったに違いない。一方喜ぶのはナベツネといまや少数派になった世の読売ファンだけだっただろう。

私は、そんな事態にならなくて本当に良かったと思う。読売球団の清武英利自体はあまり評価できないが、今回の行動の意味は小さくもなかった。


それにしても江川卓。33年前の「江川事件」の時もそうだったが、この男には権力者の「黒い意図」をいとも簡単に受け入れてしまう鈍感さがある。それは江川自身の「業」に違いない。

もし万一江川が読売のヘッドコーチに就任したら、「ナベツネの傀儡」として33年前と同じヒールになる。33年前には「ダーティー・江川」と呼ばれたものだ。さしもの江川もその再現は避けたいに違いないから、江川の読売ヘッドコーチ就任は、清武の暴露によって完全に消え去ったと考える次第である。

*1:当時私も連日のようにブログで星野批判の論陣を張ったものだ。

*2:原が落合に負けるのは日本シリーズ出場回数だけである。2007年のクライマックスシリーズで優勝チームの読売が2位の中日に負けたため、落合5回、原3回となっている。但し落合は日本シリーズで1勝3敗(試合ベースでは10勝13敗)であるのに対し、原は2勝1敗(試合ベースでは11勝6敗)である。なおクライマックスシリーズにおける両者の対戦は2勝2敗(試合ベースでは落合の8勝6敗1引き分け)。

*3:星野は通算14期でリーグ優勝3回、日本シリーズ優勝0回、北京五輪4位などの成績。