kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

濱口桂一郎氏のブログ記事「これぞリベサヨ?」はやはり「トンデモ」だった

 少し前に書いた記事の話だが、大阪市民9人の社民党支持者のうち7人が「橋下徹に投票する」って言ったに過ぎないよね - kojitakenの日記 に、id:gryphonさんから下記のコメント*1をいただいた。

gryphon 2011/11/23 21:28
興味があったので、世論調査を大きなテーマのひとつにした著作もある東京大学先端科学技術研究センター特任准教授・菅原琢氏に尋ねてみました。その意見を参考までに
http://twitter.com/#!/gryphonjapan/status/139303821804445696

@gryphonjapan

恐れ入ります、世論調査で質問したいのですが・・・d.hatena.ne.jp/kojitaken/2011…で議論されているように、「世論調査で600人回答」「うち、常に支持率2%程度の政党支持者の回答は『A』だった」時、実数は9~10人程度ぐらいだから無効でしょうか?

http://twitter.com/#!/sugawarataku/status/139312563547676674

@sugawarataku
SUGAWARA, Taku
10人の標本で母集団である社民党支持者全体の傾向を云々するのは無理です。 RT


 なぜ今頃この件を蒸し返すかというと、2009年に支持政党や年齢層別に見た橋下支持率を調べた資料に行き当たったからだ。
http://www.osaka-shisei.jp/documents/04matsutani.pdf


 これは、桐蔭横浜大学専任講師の松谷満氏が書いた「ポピュリズムとしての橋下府政」という記事をpdf化したものである。調査は松谷氏らが行なった。

 詳しくはリンク先をご参照いただきたいが、社民党支持者20人のうち25%(5人)が橋下を「支持する」、20%(4人)が「ある程度支持する」、55%(11人)が「支持しない」と答えている。これに対し、共産党支持者27人のうち15%(4人)が橋下を「支持する」、48%(13人)が「ある程度支持する」、37%(10人)が「支持しない」と回答。「支持する」と「ある程度支持する」をまとめて「支持する」にカウントした場合、「支持」は社民党支持者45%、共産党支持者63%に対し、「不支持」は社民党支持者55%、共産党支持者37%になる。もちろん、この結果をもって「共産党支持者の方が社民党支持者よりひどい『リベサヨ』である」などとは全く結論できないことはいうまでもない。

 他党の支持者及び「支持政党なし」については、それぞれ「支持」、「ある程度支持」、「不支持」の順番で民主党支持者(131人)が60%, 35%, 5%、自民党支持者(127人)が59%, 37%, 4%、公明党支持者(23人)が52%(12人)、36%(8人)、13%(3人)、「支持政党なし」(150人)が35%, 58%, 7%となっている。

 ここで興味深いのは、橋下への支持は民主党自民党という保守二大政党の支持層においてもっとも強く、無党派層の間でも橋下支持者は多いものの、橋下への支持の強さは民主・自民両党の支持者より弱いことである。つまり、「既成政党対『維新の会』」などという、橋下の意を受けたマスコミが唱えている対立構図は嘘っぱちであり、民主・自民という保守二大政党の支持者こそ橋下に期待を託していることがわかる。つまり、橋下こそ「既成権益の守り手」であると言っても過言ではない。むしろ「支持政党なし」の人たちにはそのことがわかっているから、橋下を「ある程度支持」はするものの、その支持の強度はさほどでもない。

 そのような無党派層の特徴として、2005年の「郵政総選挙」や2009年の「政権交代総選挙」のような強風が吹き荒れる時には勝ち馬に乗るが、すぐに支持から離れやすい。おそらく今日当選するであろう橋下に対する支持率の推移もそうなるだろう。すなわち、橋下の支持率は大阪市長になった直後にピークを示し、以後ずっと減少するが、民主党自民党といった「既成政党」の支持者ならびに両党の政治家ほど橋下にいつまでも執着するのだ。

 そうなると橋下は次にどういう行動をとるか。いうまでもなく国政への転身である。大阪では飽きられても、大阪ほど直接的に橋下の被害を蒙っていない他の地域では橋下はウケ続ける。そして、つい最近も亀井静香石原伸晃小沢一郎がとった態度と同じように、橋下にすり寄る「保守」の政治家たちが続出するのである。小泉進次郎など、もっとも橋下と手を握りそうな人間だ。かくして、日本は破滅への道を歩む。


 話が脱線してしまったが、この調査結果は、時期が少し古いとはいえ、20日に取り上げた下記記事への批判をさらに補強するものであることははっきり言える。
これぞリベサヨ?: hamachanブログ(EU労働法政策雑記帳)


 やはり、当該の濱口桂一郎氏のブログ記事は、「トンデモ」とか「これはひどい」としか言いようのない代物だといえそうだ。


 なお、念のため申し添えるが、私は、社民党支持者に「リベサヨ」の傾向があるという濱口氏の主張まで否定するものではなく、むしろその指摘に関しては正鵠を射ていると考えている。だが、そのための立論の方法が(いくら「たかがブログ」とは言っても)あまりにも学者らしからぬ粗雑なものではなかったか、としてこれを批判しているのである。