kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

小沢一郎が何もしなかった2011年(1)TPP編

上脇博之 ある憲法研究者の情報発信の場 : 野田政権が財界政治を強行できるワケ(菅内閣不信任劇を振り返って):その3(TPP交渉参加) に、今年10月19日に「ニコニコニュース」が主催した小沢一郎田原総一朗の対談が紹介されている。以下引用する。

(略)

田原: この間13日に野田総理がハワイで、いわゆるTPPで参加すると言ったのか、あるいは各国の協議に参加か・・・極めて曖昧なんですね。だけど新聞は一面トップでドーンと「交渉参加」とうたった。日本が参加することがきっかけになったように、カナダもメキシコもフィリピンも、もちろんベトナムやマレーシアも参加するという方向へ行き、中国まで慌てに慌てたと。私は野田さんはもっと自信を持ってりゃいいと思うんだけど、帰ってきて国会で何を言ってんだかさっぱりわかんない。参加するんだかしないんだか曖昧だし、アメリカ側、つまりオバマさん側が言ったことを「違う」と言いながらアメリカに訂正も要求してない、訂正もしてない。何でこんなに曖昧で自信がないんだろうと。ここをちょっと小沢さんにお聞きしたい。
小沢: 今度のことで、野田さんがどうこうって個人的なことを言うわけじゃないんですが、今までと同じようないわゆる「使い分け」をしてるんですね。
田原: 使い分け?
小沢: 使い分け。官僚、特に外務官僚のね。要するにアメリカへしゃべることと国内で言うことを、ちょっと違ってしゃべってるわけですね。
田原: そうなんだ。あの人(=野田総理)元財務大臣だし・・・そうすると財務官僚に言われたままに言ってるんだ。
小沢: 外務(省)のほうでしょうね、担当するのはね。だけどもこういうやり方はずっと以前からなんですよ。


■TPP交渉参加議論「アメリカにはアメリカの思惑がある」


田原: 日本は、あるいは野田さんは・・・。
小沢: 僕がアメリカとの交渉に行った時も、この使い分けにアメリカはものすごく怒ってるわけです。目の前では皆いいようなことを言って、国内向けではいろいろ問題があるからといって、また違う言い方をするという。このやり方はアメリカからも信用をなくすし、国内的にもいま田原さん仰ったように「一体どっちなんだ」ということで国民から信用を失うし、私は本当に今までと同じようでよろしくないなと思ってます。野田さんがやるというなら、もう「やる」とはっきり言っちゃえばいいんですよね。信念として。
田原: 今までアメリカと日本を使い分けてきたのは、自民党ですよね。ずっと自民党政権。野田さんは民主党(政権)になっても自民党と同じことをやってるんですか。
小沢: だから役所なんですね。
田原: 役所がね。
小沢: 役所なんです。基本的に事なかれ(主義)ですから。そしてアメリカの言うことは聞く以外しょうがないという観念でおりますから、アメリカとの話の時にはアメリカにいいようにしゃべる、しかし日本でそのまま言うとどうも具合悪いなと思う時は変えてしゃべると。僕はこれが一番良くないと思いますね。
田原: 実は、僕はそこを野田さんのわりと近い人に聞いたの。何で曖昧なんだと。さっき小沢さんが言ったように、使い分けてるんじゃないかと。何で使い分けるんだと聞いたら、やっぱり日本では使い分けないと具合悪い、怖い人がいるって。誰と言ったら小沢さんだって。
小沢: いえいえ、そんなことないです(笑)。
田原: 要するに、もっと小沢さんの前に、日本では例えば前の農水大臣の山田(正彦)さんとか、それから今の鹿野(道彦農林水産大臣)さんたちが、特に山田さんが中心になってTPP反対運動、民主党でも100何人も運動してますね。だから山田さんや鹿野さんたち、反対の人たちを刺激するのが怖い。だから向こうではアメリカにはちゃんと言っても・・・ちゃんとかどうかわかんないけど。日本では使い分けてんだと言うんですよ。そうですか?
小沢: そうだと思います。常に。
田原: 山田さんたちが怖いんですか?
小沢: いや、怖いというか。山田さんとか何とかという個人個人の政治家というよりも、その背景のいろんな利害関係の団体やらいろんなものがありますから。
田原: 農協とかね。
小沢: 農協であれ何であれですね。
田原: 医師会とかね。
小沢: そういうものに対して、反発されるのはちょっと怖いから、どっちつかずの話ということになっちゃうんですね。これは非常に良くないと思います。
田原: ところが、その良くないのはね、やっぱり本当に怖いのは山田さんや鹿野さんじゃなくて、小沢さんだっていうんですよ。
小沢: いや、はは。
田原: 小沢さんはTPPに賛成ですか、反対ですか。
小沢: TPPは表の顔と裏の顔と二面持ってるんですよ。
田原: そこ来た。うん。
小沢: 自由取引、自由貿易、これは誰も反対する人はいないし、日本はそれで利益を得てるんですからいいことなんです。ただ、このTPPというのを強く主張してきたのはアメリカでしょう? アメリカにはアメリカの思惑があるんですよ。
田原: ほう。
小沢: ですから、アメリカときちんと話さえすれば、これは解決する問題なんですよ。
田原: うん。
小沢: そこをきちんと言えないと、おたおたあたふたという話になっちゃうんで。そういう意味ではアメリカでも、農業問題でも、アメリカはアメリカで国内でもいろんなことを持ってるんですよ。
田原: 持ってますよ。
小沢: それからアメリカの自動車業界が反対したとかって伝えられてるでしょう? だからアメリカでもいろいろ議論があるんですよ。
田原: だって、もしTPPが決まって関税障壁がなくなったら、日本の自動車は関税なしでドーンと行きますからね。向こうの業者は怖いですよね。
小沢: あらゆるものがね。ですから、本当に完全にフリーにしちゃってどっちが得かということはわかんないわけです。アメリカも自分に都合の悪いところはフリーにしたくないし。そういうところはそれぞれの国が国益と国民を抱えてるんですから、事情はいろいろなんです。だから話し合いができるんですよ。

(略)

田原: だけど今も、さっきの言葉では野田さんもまた官僚任せと。困っちゃいますね。
小沢: ですからTPPの話にしても、野田さんが多少反対があろうがこれはやるんだと、その決断はそれはいいと思うんですよ。それだったら、そう言ったとか言わないとかごちゃごちゃしないで、その筋道を通してもらうのがいいと思うんですがね。
田原: だから僕は、野田さんがやっぱり小沢さんのところにやってきて「やります、よろしくお願いします」と言えばいいのに言ってないんですか?
小沢: 僕に言わなくたっていいですけど。
田原: 言えばいいじゃないですか。
小沢: アメリカにきちんと言ったら、それと同じことを日本でも言わなきゃダメですね。
田原: アメリカではすべての物品およびサービスを自由貿易のテーブルに載せると野田さんが言ったと言っている。(野田総理は)「そうは言ってない」と言いながら、アメリカは訂正をしていないし、日本も訂正を要求していない。
小沢: そうです。ですからそこが日本流の使い分けなんですね。それは絶対いけない。アメリカも、日本のことを馬鹿にして信用しなくなっちゃうんです。それで国内でも、何やってるんだとなるでしょう。
田原: うん、そうです。
小沢: どっちにとってもいいことがないんですよ。

(略)

田原: ところが、例えば僕はこのあいだ北海道で講演したんですが、北海道はTPP皆反対なんですよね。北海道選出の自民党議員も民主党議員も北海道へ行くとTPP反対と言ってる。世論迎合なんですよ。
小沢: そうそう。
田原: 困ったもんですね。
小沢: だからそれは政治家が有権者と本当の意思疎通ができてないんですよ。
田原: そう、そこなの。
小沢: 口幅ったい言い方ですけど、僕はもう20数年選挙区にも帰ってないですよ。
田原: 帰ってないんですか?
小沢: 帰ってないです。選挙の時も1日も帰らないです。そして僕は自分の主張を曲げないです。それでもみんな付いて来てくれている。僕は感謝してますが、やっぱりそういう信頼関係が無いと、その時その時で右往左往しちゃうんですよ。だから僕が選挙活動、日常活動が大事だというのはそこなんですよ。政治家が選挙に強ければ何も怖くないですよ。

(略)


上記の引用においては、上脇教授のブログとは強調箇所を一部変えている。


ひどいもんだなあと思うと同時に、小沢一郎の主張は2005年に『論座』にロングインタビューを受けた頃と変わってないなあとも思った。


90年代の証言 小沢一郎 政権奪取論

90年代の証言 小沢一郎 政権奪取論


アメリカと交渉する時に内外向けに主張を使い分けるなと言うものの、小沢一郎は日本の政界の中でももっとも強硬な「自由貿易論者」なのである。「自由貿易推進論」は、所得税と住民税を半分にして消費税を増税せよという主張などとともに、自民党時代以来小沢一郎が終始一貫して変えない主張の一つである。

特に注目されるのは、北海道選出の自民党民主党の議員が地元の世論に迎合してTPP反対を唱えているという田原総一朗の言葉には「そうそう」と肯定的な返事を返す小沢が、TPPに賛成か反対かという問いには答えていないことである。

このことから読み取れるのは、小沢一郎が「隠れTPP推進派」だということだ。上脇教授が小沢一郎民主党代表もTPP賛成!」と書く通りである。

今年11月11日付朝日新聞に、民主党の匿名の国会議員が「小沢氏は自由貿易論者、俺は農業だ」と言ってTPP反対論をぶったと報じられていたが*1、結局TPPをめぐって「TPP反対派」の民主党議員が小沢一郎と衝突したという話は聞かれずじまいだった。小沢一郎の威光に竦んでしまったのだろう。

結局「TPP政局」は不発に終わった。小沢一郎のもくろみ通りだったといえよう。